第10話 転校生の少年

 ──さくらと白火が公園に着く前に、1人の少年が神社にいた。彼は白火を封じていた壊れた祠の前立っていた。


 少年は背が高く、黒い着物を緩めに着て、中に黒いシャツが見えており、帯に刀を差し黒いズボンに両腕や両足には包帯が巻かれ草履を履いた

一風変わった姿の少年であった。

黒髪で短く、前髪が目にかかって目つきの悪い顔である。


「…あいつ、ずっと守っていたんだな…今更、顔なんて合わせたくもないが」


 少し嫌な顔をした後、かすかだが妖気を感じとった。


「行くか」


 少年は神社を去り、公園の方角へ向かっていた。





 ──ジリリリ!!!


 今朝も騒がしくスマホのアラームが鳴る。


「おい!!起きろよ!」

「うわあああ!!もうちょっと優しく起こしてよ!」


 勢いよく布団を剥がされ文句を言う。


「だったら、すまほが鳴る前に早く起きろよ!それ、いつもうるせぇしイライラしてくるんだよ!」

「住ませてあげてるくせに!!…ってやっば!!今日、日直だ!急がなきゃ!!」


 スマホで時間を確認し慌ただしく着替え、白火は部屋の外で待つ。


「着替え終わったよ、白火行こ!」


 1階で身支度を済ませた後、2人は学校へ向かった。

 


「白火、昨日の黒い影…みたいなのって本当に何か知らないの?すっごく気になるんだけど!」


 走りながら、さくらの頭に乗ってる子狐の姿の白火に聞いてみる。昨日、家に帰った後、聞いてみたがはぐらかされしまい結局は教えて貰えなかった。


「なんだよ、そんなに気になるのか?」

「当たり前でしょ!白火だけ知ってるのずるいもん!」

に近いうち会えるぜ。それなら分かるだろ」

「あいつって誰よ!?」


 聞く前に学校に着いてしまった。


「後でちゃんと教えてよね!」

「忘れてなければな」




 学校に着いた後、急いで2階の職員室へと向かった。鞄を置き、声を潜めて話す。


「白火、ここで待っててね」

「つまんねぇーから、オレ、校内見てくるぜ!」

「あっ!ちょっと!!」


 白火は少年の姿に化けてどこかに行ってしまい、思わず声を出してしまったら通りがかった男性の先生に怪訝な目で見られた。


「もお…勝手なんだから!」


 職員室に入り担任の先生から日誌を渡される。


「新山、今日は珍しく遅刻しなかったな。毎日、日直なら遅刻はしないか?」

「えー!!それは困りますよ、先生!やめてくださいよ!」

「冗談だ。それとこれも頼む。教卓のところに置いといてくれればいいから」


 日誌の上にプリントを載せられ、少し不満な顔になる。


「はーい」


 (先生、もうちょっと褒めてくれたらいいのに!)


 そう思いながら職員室の扉を開けた時、気づかず誰かにぶつかってしまった。


「あっ、ごめんなさい!!前ちゃんと見てなくて…」


 顔をあげた時、学ランを着た少年が少し驚いた顔をしていた。背が高く、目つきの悪い顔であった。


「…いや、俺の方こそ悪かった」

「いえ!私がちゃんと前見てなくて!ごめんなさい!!」


 慌てて頭を下げて謝る。


「気にするな。そこ通りたいんだけどいいか?」

「あっ、はい!」


 左に寄り、少年が通りすぎた時、制服のポケットの入れてある数珠の鈴がなる。


 (──え?なんで、鈴が?)


影里かげざと!こっちだ!」  


 先生が少年を呼びかける声がして振り向く。

 さっきの少年は影里と呼ばれ、先生と何か話していた。


 (あの子、影里くんって言うんだ!なんで、鈴が鳴ったのかな?変なの!)


 さほど気にせずに職員室を出た後、教室へ向かった。



 教室に着き、教卓にプリントを置いた後、自分の席に着いたら友人の千智がテンション高く話しかけてくる。


「おはよう、さくら!聞いて驚け今日は転校生が来るぞ!!」

「ええっ!?転校生!どんな子?どんな子なの!?ちさちゃんなんで知ってるの?」

 

 目を輝かせ期待を膨らませながら聞く。


「へへっ!あたしの情報網なめんなよ!さっき、同じクラスのバレー部の子達が職員室に用があって行ったら転校生が来るって聞いたらしいんだ!」

「えー!!それでそれで!?」

「なんと…男子なんだってよ!」

「男の子なんだ!どんな子なんだろ楽しみ!!」

「おはよう、さくらちゃん、千智ちゃん。何の話

をしてたの?」


 ちょうど教室へ入ってきた真菜実が声をかける。


「おはよう、真菜実!今日、転校生が来るんだよ!」

「おはよう、まーちゃん!それでちさちゃんと話してたの!」

「そうなんだ!楽しみだね!」


 予鈴が鳴り、先生が教室に入ってくる。生徒はそれぞれの席に着きそわそわしていた。


「おはよう、皆。4月の終わり頃だが、今日は転校生が来る。入ってきてくれ」


 教室の扉が開き1人の少年が入ってくる。背が高くスラッとしており、黒髪で前髪が目にかかり黒目の三白眼で目つきは悪いが、端正な顔立ちをしていた。


 (えっ!!あの子転校生だったの!?)


 転校生を見て、皆それぞれ興味深く見つめる。       

 女子達は頬を赤らめさせている子も何人かいた。


 ──朝、職員室の扉でぶつかった少年が転校生とは知らず驚く。少年を見た時、再び鈴が鳴り出す。

一瞬ではあったが、転校生の少年─おそらく幼い頃の姿だと思うが、さくらの前世である春子と一緒にいる記憶が頭に流れ出した。


 (…え?ど、どういうこと!?何、今の記憶!?春子さんと関係あるの?私、前世で影里くんと会ったことがあるの…?なんでこんな時に白火がいないの!!)


 考え混んでると、先生が少年に自己紹介するように言っていた。


影里信也かげざとしんやです。隣町から来ました。よろしくお願いします」

 

 低い声でそっけない感じの言い方ではあるが、生徒達からは拍手があがった。


「皆、仲良くするように!影里の席は1番後ろの空いてる席だ。新山、隣の席だから後で影里に校内を案内してほしい」

「…はい!」


 (影里くん、私の隣なんだ!これはチャンス!!

さっきの事、聞いてみようかな?う~ん、でもいきなり変な子だって思われちゃうし…まずは仲良くなろう!)


 信也が席に着き、笑顔で声をかける。


「私、新山にいやまさくら!よろしくね、影里くん!」

「…仲良くする気はない」


 横目でちらりと見ただけで、こちらを見ようともしなかった。


「えっ!?もしかして、朝の事怒ってる?ごめんね」

「俺が言いたいのはのことじゃない」


 呆気に取られていると、先生の授業を始める声がしていた。


(…私、嫌われちゃった!?どうしよう!!でも、諦めないからね!)



 信也と仲良くなる決意をして、授業へ集中することにした。


 

 休み時間になり、数人の男子が信也に声をかけてきたがめんどくさそうに返し、教室から出ていってしまった。


「影里くんすごいよね。勉強も運動もできて」


 さくらの席で真菜実と千智が話していた。


「だよなー!完璧だし!あの運動神経欲しいぐらいだわ」

「うん!すごいよね!どうやったら仲良くできるかな!」


 さくらは2人の会話に返事をする。


「さくらちゃん、影里くんと仲良くなりたいの?私、ちょっと苦手かな…怖いし」

「まあ、確かに背高いし威圧感あるけど気になるよな!」

「うん!だって頭良いんだし勉強教えてもらえるじゃん!」

「…そっちかよ!仲良くなったらあたしも教えてもらおっかな」


 (本当は前世の事聞きたいだけだけど!まーちゃんとちさちゃんには言えないし…白火に前世の事は言うなって言われてるしな…言わないけど!まだ戻って来ないしどこいっちゃんだろ)



 

 一方その頃、白火は校内を周った後、屋上にいた。


「信也の奴、来たんだな!懐かしい匂いだからすぐに分かったぜ!」


 嬉しそうに言い口元がにやける。


「久しぶりに会えるし早く話がしてえな!…さて、教室戻るか」


 さくらのいる教室へ行き、屋上の扉を閉めた。

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