第16話 作戦決行と二人の距離感
放課後になり教室に人気が無いことを確認し白火とさくらは例の作戦を始めることにした。
「よし、始めんぞ!」
「う、うん!」
(本当に上手くいくのかな…なんか、心配なんだけど)
「さくらはいつも通り帰ってくれ。オレが後を着けてくから」
「…そんなので上手くいくの?本当に守ってくれるんだよね?」
「さくらが1人になんなきゃ夜行の奴ら来ないかもしれねぇだろ、心配すんなよ」
不安にはなるが、我慢をするしかないと思った。鞄を持って教室を出る。
「じゃあ、帰るからお願いね白火!」
「おうよ、まかせてとけ!」
──学校から暫く歩いてはいたが、夜行の手下やさくらを狙う妖怪達は一向に襲ってこない。
「…ねぇ、白火。夜行とか来ないよ…」
小さく呟き、後ろから着いてきてる白火はさくらの元へ来る。
「いつもだったら、すぐ来るよな。なんで来ねぇんだよ」
「襲って来てもいやだけど!話が違うじゃない!」
「仕方ねえだろ!だいたい、さくらが早く前世の力が目覚めないからだろ!」
夕方近くで、住宅街の人通りがないせいか2人はいつもみたいに喧嘩を始める。
「そんなのよく分かんないよ!浄化の力なんて分かんない!!まだ前世の記憶だって思い出せないし!」
「なんとかして思い出せよな!!こっちの世話が焼けるぜ!」
「何よ!だいたい春子さんと白火がした約束でしょ!?元々私には関係ないじゃない!!」
「あ"?なに言ってるんだよ!お前が春子の生まれ変わりだから関係あるんだろ!!」
互いに息を切らし、両者とも譲らない。
途中、帰宅中の学生に変な目で見られ我に返る。
「クソッ、こんなことしても無駄かよ…」
「白火が始めたことじゃん!あともう少ししたら家に着くし…ねぇ、少し時間があるし神社に行かない?もしかしたら、何か前世の事思い出せそうだかなって」
「…本当に思い出せんのか?このままなのも納得いかねぇーよな」
「じゃあ決まりね!」
2人は住宅街を通りすぎ、神社へと向かっていった。
「神社にとうちゃーく!」
──
白火と出逢って約束した場所。前世の記憶だって分かってるけど、私が小さい頃ここに来た記憶があるような…そんな気がする。
「おい、なんか思い出せるか?」
「え?…うーん、まだかな…」
「…これじゃあ来た意味ねぇだろ」
「ちょっと待ててよ!…あれ?白火の祠がない!」
夜行の手下によって壊されてしまった白火の祠が綺麗に片付けられていた。
「神主さんとかが片付けてくれたのかな?」
「この神社に人なんか来ねぇよ。祠で長くいたけど、ほとんどは人は来なかったぜ」
「えっじゃあ誰が…?気になる!」
「誰だっていいだろ、そんなの」
2人は白火を封じていた祠の場所に行き、さくらは色々と考えてみたが結局分からず諦め、白火は対して気にしていない様子だ。
「なあ、少しは思い出せたか?」
「うーん、まだ…あっ!ねぇ、白火にゆびきりしよ!春子さんと約束した時みたいに!」
「…何言ってんだお前?」
呆れた目で見られたが、構わずゆびきりをしようとする。
「ほら、早く!」
「めんどくせぇな…」
──もしかしたら、何か思い出せるかもしれない!
淡い期待をして、白火とゆびきりをする。
白火の手って私より大きいな。男の子だからだけど。春子さんと約束した時は小さかったけど、今は「私」より背が高い。
──リンと数珠の鈴が鳴り、約束した記憶と春子が辛い顔で白火を祠に封じていた記憶が流れ出す。春子は祈りながら白火を祠の前で封じ、涙を流していた。
『──ごめんなさい、貴方を戦いに巻き込ませてしまって…白火には自由にいて欲しかった。
夜行を封じることしかできなくてごめんなさい…生まれ変わって必ず逢いにいきますから』
記憶はそこで途切れ気がついたら私は涙を流していた。春子さんの気持ちが痛いほど伝わってきて涙が止まらなかった。
「お、おい!どうしたんだよ、急に泣いて!」
突然泣いたさくらに慌てふためき両肩を掴む。
「……だって、春子さんが辛そうに白火を祠に封印してたから…!!」
「そんなこと今更気にすんなよ!!オレがで決めたことなんだぜ!」
「…ぐすん…春子さん、泣いてたもん…白火を戦いに巻き込ませたくないって…私、春子さんの生まれ変わりだから気持ちが痛いほど伝わるから…」
辛く泣き出すさくらを見て、白火はそっと抱きしめて耳元に近づけて話す。
「…さくら、オレは自分の意思で祠に入るって決めたんだぜ。春子のいた神社が好きで守りたかったんだ。それに春子が生まれ変わってまた逢いに言ってただろ。そう言ってくれて嬉しかったんだ、また逢えるんだって」
「…うん」
白火の胸元に顔を埋め話を聞く。少しずつ落ち着きを取り戻す。
「…白火にはね、自由にいて欲しかったって。
夜行を封じることしかできなかって…」
「そうか…春子の気持ちは嬉しいけど、オレが決めたことなんだから後悔なんてしてないぜ。夜行なら、オレと一緒に戦えばいいだろ。だから、気にすんなって」
優しくさくらの背中を撫でる。白火の気持ちが伝わったのか徐々に泣きやみ顔を少しあげる。
「……ありがとう、白火。私、夜行を倒せるか分かんないし、前世の力も目覚めてない…でも、白火の気持ちは嬉しい。ずっと私を待っててくれてたんだね」
「まあな。力が目覚めるまでは守ってやるよ。
春子の生まれ変わりならもうちょい似て欲しかったけどな」
「もう!似てなくて悪かったわね!…もう、暗くなるし帰ろう!」
「おうよ、暗くなると妖怪が動き出してくるからな」
「えっ!そうなの?」
いつも通りに明るくなったさくらをみて、一安心する。神社から帰り道、スマホで時間を確認して、気になったので白火に聞いてみる。
夕方で人通りが少ないから、二人っきりで話す。
「なんで、暗くなると妖怪とか動くの?白火は妖怪だけど普通に動いてるし」
「オレは別に明るいとこが苦手じゃねぇから普通に動けるぜ。今、夕方で薄暗くなってるだろ?
この時間逢魔が時には妖怪が動き始める。昼と夜が移り変わるから、魔物に会うとか大きな災いが起こるとか言われてる」
「へぇーなるほど!えっと…暗くなると悪いものとかに会うってこと?」
白火の言ったことが難しかったのかあまり理解ができず首をかしげて言う。
「そんな感じだな。昔は…春子のいた時代は今みてえな灯りなんてもんはなかったし夜は真っ暗だったんだぜ。人は闇って暗くて怖いとか思うだろ。妖怪にとってはうってつけだから人間を脅かしやすいんだ」
「えっ…春子さんの時代って今みたいに街灯とかなかったんだ!不便だね…今の時代で良かった!妖怪に脅かされたくないもん!」
ふと、電柱の方2、3匹くらいの小さな妖怪がいるのが見えて指を差す。
「ねぇ、白火。あの子達は脅かしたりしないの?」
「あいつらは雑魚だから、脅かしやしねぇよ。ただ見てるだけだ。ちょっかい出すなよ」
「ちょっとぐらいなら駄目?小さくて可愛いし、触るくらいなら…」
「駄目だ、早く帰るぞ。ああいう雑魚が力をつけた時に痛い目合うぜ!」
白火に腕を引っ張られ帰る。さくらは少し残念そう顔になる。
「…分かったよお。腕引っ張んないで」
「あんまり妖怪とかに手ェ出したりするなよ!
オレだって守れるかわかんねぇし」
「白火強いじゃん!違うの?」
「あのなあ、夜行の奴だってもっと強い奴よこしてくるかもしれねぇし呑気なだな…オレがこの先ちゃんとさくらを守れるか分かんねぇよ」
信也に言われた言葉を思いだし嫌な顔をする。
(私、いつも白火に守れてるのに…ちょっと無神経だったかな?)
「…白火、いつも守ってくれてありがとう。春子さんの力が目覚めて使えるようになったら一緒に頑張ろうよ!」
「いつになるか分かんねぇけどな」
「あっ!家に着いたよ!」
玄関の扉を開け元気よく「ただいま!」と言って白火の方を見る。
「ほら!白火も早く!」
「あっ…おう、ただいま」
玄関の扉を閉め、2人は家へと入った。
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