第2話 商売の準備

「じゃあ行くぞ」

「どこにですか?」

「商業ギルドじゃ。そこで登録すれば自由に商売できる。ギルドに商品を卸すも良し。店を構えて自ら売るもよし。自由じゃ」


 なるほど。自分の店を構えて商売なんて夢があるな。


「と言っても店を構えるには金がかかる。ざっと1000万molはかかるぞ」


 とりあえずはギルドに卸します。

 でもいつかは月夜姐さまとのお店を……なんて考えてしまう。


 商業ギルドとやらで姐さまに手伝ってもらいながら登録する。


「モカさんはEランクからのスタートです。商業ギルドに卸した商品が増えるとD、C、B、Aと上がっていきます。Cランクになると自分の店が出せるようになるので頑張ってくださいね!」


 登録証であるブローチを渡された。

 藤色の宝石、アメジストが輝いている。

 受付の別嬪さんの眩しい笑顔もセットだ。


「ほれ、行くぞ」


 ブローチの宝石と別嬪さんの笑顔を眺めていると姐さまに腕を掴まれ連行された。


 ついでに冒険者ギルドで同じような登録を済ませた。

 ブローチが二つあっても困るんだけどなぁ。


「武器屋で別の形に加工できるぞ」


 そりゃ便利だ。

 未来の同業者さんにご挨拶も兼ねて、行ってみる。


「あら月夜さん。いらっしゃい。ってあなた子供いたの?」


 店内にいたのは人の良さそうなおばさん。

 大阪で割引の卵をかっさらっていきそうなタイプだ。


「空から降ってきました」

「あぁ、そうなの。もう、びっくりさせないでよ」


 どうやらこの町は人が降ってくるタイプの町らしい。


 ……というかもしかして月夜姐さまも降ってきたタイプ?

 空から降ってきた月夜姐さまを受け止めたい人生だった。


「この子のブローチを加工して欲しいんじゃ。頼めるかのう」

「任せんさい! うちの夫があっちゅう間に加工してくれようよ」


 おばさんは奥へ引っ込むとムキムキのおじさんを連れてきた。


「君が新人さんかい。お嬢ちゃんはどんなふうに加工して欲しいんだい?」

「今の服に合うものが良いぞ」


 現在の服装に合うものか。

 今は「なんちゃって制服」を着ている。

 制服で遊園地に行くという謎イベントに巻き込まれた時の残骸だ。

 (ミニスカは回避した。ロングしか勝たん)

 何気に持ってる服の中で一番可愛い。

 というか他は全てジャージだった。

 ジャージで死ぬのはさすがにと思ったのでこの格好だ。


「ブレザーならカフスボタンがいいんじゃない?」

「確かに似合いそうじゃのう」


 私のブローチはおじさんの手によってカフスボタンになった。

 シャツもカフスボタンが付けれるように直してもらった。


「これどうやってつけるの?」


 カフスボタンをつけたことある中学生などいるのだろうか?


「ほれ、貸してみよ」


 姐さまは私の手からひょいとボタンを取る。

 そして私の手を取りつけてくれた。


 姐さまの手が私の手首を掴んでいる。

 やばい。ドキドキしちゃう。

 え、手首って脈わかるんじゃ……。


 私の状態も知らずに姐さまはパッパとカフスをつけてくれた。

 クールだなあ。


「似合っておるぞ」


 姐さまに促されるがままに姿見の前へ行く。

 袖口でアメジストが光っている。おしゃれだ。


「いつかはその宝石がダイヤモンドになれるといいのう」


 ダイヤモンド、つまりはAランクだ。

 Aランクになれば色々と便利らしい。知らんけど。


「それと、簡単な武具も見繕ってもらえるかのう」


 武具か。

 姐さまは何を使っているのだろう。


「わっちはメインに鞭を、サブに鉄扇を持っておるぞ」


 鞭。鉄扇。どちらも姐さまらしい武具だ。

 なら私らしい武具とはなんだろう。


 制服に合うものか。


「初心者でも扱いやすいものってありますか?」


 一応、コス撮影でアクロバティックな写真を撮るために多少の体術はできる。

 だがそれだけでは心許ない。

 使いやすい武具が欲しい。


「魔法銃とかはどう? 普通の銃より使いやすいよ」


 魔法銃か。

 なんかかっこいい。

 やろう。


「それ、使ってみたいです!」

「よし。じゃあ試しにこれを使ってみてよ」


 おばさんに魔法銃を投げ渡された。

 かっこええ。


「店の外で試し撃ちしてきな」


 おばさんに促されるままに店の外へ出て試し撃ち。

 ちなみにおじさんはカフスをつけれたことを確認するとすぐに作業へ戻っていった。

 気持ちはわかる。作業楽しい。


 店の裏にある広場で少し離れたところにある的を狙う。

 なんかそれっぽい感じで打ってみる。


「あらまぁ」

「これはこれは……」


 弾が勢いよく飛び出していったと思ったら華麗に地面へとめり込んでいった。


「……練習します」

「それがいいのぅ。銃は似合っとるぞ」


 姐さまに「似合っとる」と言われたら頑張るしかない。

 絶対にめちゃくちゃ離れたとこから標的を撃ち抜けるようになる。


 そう決意している間に姐さまは会計を済ませてしまった。

 サラッとそういうことができる。イケメンだぁ。


「何。其方はそのうちこの町、いやこの国一の武具職人になる。今のうちに恩を売らねば損ということじゃ」


 ……うむ。さすがはマフィアで一番美人な幹部、月夜姐さまだ。

 最期は主人公である弟子を庇って散ったが、それまでの経験や実力は本物だ。


 実際、金と力がものを言うこの世界でもそれなりの地位を築くことができているようだ。


 その日は姐さまと夕飯を作って食べて寝た。

 もちろん同じベッドで。


 ──────────────────────

 あとがき

 

 月夜姐さまみたいな人間になりたいです。

 みなさんはどうですか?


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