第11話 Dランク昇格
翌朝、私はEランク最後の依頼を受けに行った。
依頼内容はこうだった。
自動販売機の耳飾×10:10,000mol
備考:木製・形だけで良い
ギミック不要なのは嬉しい。
組み立てなくても良いもん。
……いや、自動販売機の耳飾てどういうこと。
最初の方に地味とか行ったせいで変なのばっか出るようになってるのか?
ならごめんよ。地味とか言ってごめんよ。
困惑しつつも制作開始だ。
「とりあえず、形はこんな感じなんだけど……何を売ろうか」
自動販売機。日常に溶け込みすぎて意外と忘れているものだ。
何が売っていたかなかなか思い出せない。
「とりあえず、水?」
ボトルに「おいしい水」と彫る。
「後はコーヒー類と、紅茶と……あ、後ジュース系」
普段飲まないものは忘れがちだな。
私は紅茶とか甘いラテとかココアが好きだった。
対していわゆるみかんジュースとかはあまり飲まなかった。
好みの問題だ。
前世では月々の値段が高すぎて使えなかったツールも今は無料で使える。
サクサクっとラベルを作ってしまう。
「これを立体にして、金具をつけて、完成!」
魔石をセットして印刷する。
「カンセーイ!」
見た目は自販機そっくりだ。
けっこう良いんじゃなかろうか。
「早速納品やぁあ」
商売人モード(大阪人モード)になって商業ギルドへ行く。
「納品お願いしまーす」
「はいはーい。あ、100件目ですね! Dランクに昇格です!」
トパーズのブローチが渡される。
オレンジ色に輝いている。
「これからも頑張ってくださいね!」
「はい!」
ブローチを受け取ると体がぼんやりと光った気がする。
「ステータスが更新されたようですね。また確認してみてください」
「ありがとうございました!」
私は商業ギルドを出て、ステータスを確認してみる。
──────────
モカのステータス
肩書:【Dランク職人・商人】【Eランク冒険者】
スキル【翻訳】【解毒】【自然治癒】【締切前の部屋】【3DCG Lv.2】
【Dランク職人・商人】
[解放条件]依頼を100件受ける。または依頼を500件出す。
仕事を覚えた職人・商人。
Dランクの依頼を受けることができる。
Dランクの依頼を出すことができる。
[次のランクの解放条件]
依頼を500件受ける。残り0/500件
または
依頼を2500件出す。残り0/2500件
【締切前の部屋 Lv.2】
[解放条件]Dランクになる。
部屋が増える。
物置きにどうぞ!
【3DCG Lv.2】
[解放条件]Dランクになる。
印刷時に消費する魔石の量が半分になる。
印刷が楽しいお年頃〜!
──────────
「進化してる」
これはなかなか嬉しい進化だ。
まず部屋の追加。
その部屋に魔石を収納すれば、私が魔石につまづいてこけることは減るだろう。
ついでに足を怪我して姐さまを心配させることもなくなるだろう。
そしてなによりも【3DCG】の進化がおいしい。
Dランクになったことで依頼品に金属が使われるようになる。
つまり、消費する魔石の量が増えるということだ。
実体験として、木製のものより金属製のものが、金属製のものより宝石類は消費する魔石の量が多い。
現在、訓練としてたまにダンジョンに行き魔石を集めてはいるが消費量が増えてくると今のままでは間に合わなくなるかもしれない。
魔石の消費量は少ないに越したことはない。
この進化は嬉しいのだ。
「姐さまたちは【女神の剣】に呼び出されて忙しいらしいし、ダンジョンにでも行くか」
冒険者ランクもDにあげて、左右のカフスの色を揃えたいのだ。
ファッションセンスなど皆無な私にはわからないが左右のカフスの色が違うと多分ダサい。わかんないけど。
だからダンジョンに潜って魔物を倒し、カフスの色を揃えたいのだ。
残り88体。
なかなか厳しい数だが、ちょっと作った武器を試すのにもよさそうだ。
ダンジョンへは何度も来ているが、未だに入り口に立つと緊張する。
ここから先は何が起きてもおかしくないやばい場所、という重い空気が張り詰めているのだ。
魔法銃はホルスターにセットした。
新武器1、トゲつき手袋は嵌めた。
新武器2、釘バットは持った。
忘れ物はない。大丈夫だ。
「よっしゃ。やるか」
自分に言い聞かせて中へ踏み込む。
中に入ると早速スライムがやってくる。
釘バットで掃除する。
もしかしたらスライム用にモップ風の武器を用意しても良いかもしれない。
帰ったら作ろうと思う。
スライムは討伐数を稼ぐのに便利だ。
だが新武器の性能を試すことはできないのでもっと奥へ行く。
するとゴブリンが出てきた。
ちょうどいい。
まずは釘バッドで殴ってみる。
釘バッドと言っても刺さっているのは釘ではなく針で先もしっかり尖らせているのでかなり痛いだろう。
バッサバッサと倒しちゃう。
またゴブリン。
今度はトゲつき手袋で殴る。拳を固めて殴る面にトゲをつけてあるのでかなりダメージが倍増されているようだ。
いつもより疲れない。
訓練には向かないが、魔石の補充には役立ちそうだ。
釘バッドでぶっ飛ばして、トゲつき手袋で殴って。
めちゃ楽しい。
「あは。やば。これ楽しいー! ふふふふふふ!」
姐さまたちには到底見せられない笑い方をしながらスライムとゴブリンを片付けていった。
幸い、周りに知り合いはいない。気にせずお掃除していく。
「おそうじ、おそうじ、たのしいなぁー」
スキップしちゃう。
そうして馬鹿みたいに倒していれば、そのうち討伐数が100になった。
魔石もたんまり集まった。
「こんなもんでいっか」
今回の目的、カフスの色を揃えるが達成されたのでさっさと冒険者ギルドに寄って、ブローチをもらって宿に帰る。
「ただいまーって誰もいないか」
姐さまたちに入った案件はかなり大掛かりらしく、夜まで帰れないと言っていた。
前世での自分の部屋よりもかなり広いリビングに一人。
なんだか寂しい。
「味噌汁が飲みたい」
お母さんの作る、具の多すぎる味噌汁が恋しくなってきた。
具が多すぎて、飲みにくかったけれど大好きな母の味が恋しくなってきた。
「これがホームシックってやつか」
今まではこの部屋には姐さまだったり、真羽さんだったり、炭花ちゃんだったりがいて寂しくなかったが、一人になると途端に寂しくなってきた。
「はやく帰ってこないかな」
しぶしぶ姐さまを待つことにした。
だが暇で暇で仕方がない。
暇すぎて死にそうである。
「そうだ。ハンモック作ろう」
そうと決まったら早速行動だ。
【部屋】に入って、さっそくモデルを作る。
「頑丈な方がいいし、試してみたいし、枠は金属を使うか。布はどうしよう……」
どうせ作るなら綺麗なものが良い。
綺麗なもの……美しいもの……姐さま……。
「気づいたら配色が姐さまカラーに」
闇夜のような黒に塗った鉄の枠と、月明かりのような白の布。
見られたらバレる。
だがもう印刷し終わった後。
「まぁ、良いか」
この部屋でうだうだ考えていても仕方がない。
とりあえず部屋にハンモックを設置して寝てみる。
あ、意外の寝心地良い。
私は昼のぽかぽか陽気に包まれながら眠りについた。
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