第9話 真羽と特訓
姐さまとお話しすると決めてから3ヶ月ほどが経った。
姐さまは簪のことについて意味は関係ないと伝えると他のプレゼントの意味も教えてくれた。
例えばネックレスは独占欲、なんだとか。
重いね。
他にも簪の件以降、花道や茶道に書道を教わった。
全て教養だと言われて姐さまによって体に教え込まれた。
まだまだ練習中ではあるが、一通りの知識は身についた。
体が追いつかないけど。
「そりゃ! ていや! おりゃ!」
簪の件以降にもう一つ変わったことがある。
真羽さんに体術を教わることになったのだ。
きっかけは私がスライムのだるま落としの製作依頼を受けたことだった。
スライムがどんなのかみたいというと姐さまたちの魔物狩りについていくことになったの
だ。
「なんだか雰囲気が怖いですね」
「大丈夫じゃ。わっちがついておる」
やっぱり姐さまはかっこいい。
でもいつかは姐さまを守れるくらいに肉体的にも精神的にも経済的にも強くなりたい。
「あ、来たよ」
目の前からやってきたのはスライム。
青くてつやつやしてる。
ゼリーみたいだ。
かわよ。
「スライムは踏みつぶしたら倒せる」
そういって真羽さんはスライムをふみつぶした。
かっこええ。
「ほら。どんどん来るよ」
スライムの大群がやってきた。
私も真羽さんを真似して踏みつぶした。
「うわ。ねちょねちょで変な感じがする」
「慣れたら気にならないよ」
真羽さんはそう笑っている。
「そういうものですか……」
「なれなくてもいいにゃあ。真羽が変わってるだけにゃあ!」
そういえば墨花ちゃんや月夜さんは見てるだけでほとんど戦っていない。
汚れるから嫌などだとか。
一通りスライムを観察し終わったら、月夜さんの影が私たちの周りに敷かれた。
これでスライムがこっちにこれなくなるらしい。
でもスライムより強い魔物は通れるんだとか。
「ゴブリンがきたにゃあ」
この気持ち悪い緑色の鬼みたいな豚みたいなのがゴブリンか。
殴って蹴って倒す。
……だけでは埒が明かない。
姐さまが鞭を振り回して倒している。
墨花ちゃんが落ちてた小石にスキルを付与して爆弾を作って投げている。
威力は抜群。ゴブリンが吹き飛んだ。
「今日はやけに多いのぅ」
「ゴブリンの王がいるんじゃないっすか?」
「なら今日の夕飯は豪華になるにゃあ!」
ゴブリンの王などという怖そうなものがいるにも関わらず、皆さん余裕だ。
さすがは元マフィアの偉い人たち。
「夕飯は何がいいかにゃあ~」
墨花ちゃんがくるくる回りながら歩いている。
かわいい。
「うにゃ!」
あ、まずい。なんかやばそうなのにぶつかっている。
月夜さんも真羽さんものんびり雑談しているけど大丈夫なのかなぁ。
「にゃににぶつかったんだにゃ? ……にゃ? ゴブリンの王にゃあ!」
全然やばいじゃん。
「にゃああああぁぁぁぁぁぁぁ!」
墨花ちゃんはえぐい量の爆弾を投げる。
ゴブリンの右腕がもげた。
うわぁ。痛そう。
「おりゃあ!」
今度は真羽さんの華麗な飛び蹴りによって左足がぶっ飛ばされた。
あれまぁ。
「さらばじゃ!」
最後に月夜さんの鞭がうずくまっているゴブリンの体に巻き付き、切り裂いた。
「モカ。大丈夫か?」
「大丈夫です」
皆様強すぎませんか? 漫画で見てた時より強いんですけど?
守りたいなんて思ってた自分が恥ずかしくなる。
「強いですね……」
「これでも俺と墨花はCランクだからね」
「姐さまはBランクにゃあ」
そりゃそうか。
EランクがB・Cランクにかなうはずない。
でも悔しい。
強くなりたい。
憧れの月夜さんのようになりたい。
「私に戦い方を教えてください!」
気づけばそう言っていた。
そうして一番戦い方の似ている真羽さんに体術を教えてもらうことになったのだ。
「つ、疲れた……」
「やっぱりモカは体力がないな。そんなんじゃ月夜さんを守れないぞ」
「ま、まだ頑張ります!」
「よし。いつものコースを十周走るぞ」
「はい!」
真羽さんと共に町中を走り抜ける。
「あらモカちゃんじゃない。今日も頑張るわね」
武器屋のおばさんに会った。
今日も詰め放題で袋が破けそうになるまでニンジンを詰めてそうな雰囲気は健在だ。
「あ、こんにちは。継続が大事なので」
「この子は筋が良いんでね。体力さえあればあっという間に上手くなるっすよ」
真羽さんに「筋が良い」って言われた。
嬉しい。
「今日ね。夫が珍しく外に出たと思ったらうなぎ捕まえてきたのよ。スタミナアップにも良いらしいから後で持っていくわね」
「ありがとうございます!」
「ありがとうね。おばちゃん」
うなぎ! 聞いただけでお腹が空いてくる。
「よし。うなぎのためにも頑張るぞ!」
「おー!」
私たちは最後はヘロヘロになりながらも10周し、帰宅した。
途中で前に作った大阪もんの立体顔出し看板を見た時には元気が出た。
自分が作ったものが実際に使われているとわかると嬉しいものだ。
依頼主はタコ焼きやお好み焼きの店を出しているらしい。
広島焼きといった人間を絞めながら営業しているお店だ。
何か目の保養となるものを、と思って依頼してくださったんだとか。
何度か食べにいっているが、半分くらいの確率で人が絞められいる。
「またタコ焼き食べに行こうな」
「そうですね!」
私たちは夕焼け空になるまで走っていた。
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