第13話 お祝いパーティー
目が覚めるとすっかり日が暮れていた。
そろそろ姐さまたちも帰ってくるだろう。
私はハンモックをしまい、顔を洗った。
「ただいま」
姐さまたちが帰ってきた。
お肉の美味しそうな匂いがする。
「夕飯はハンバーグじゃ」
「お祝いのケーキもあるよ」
「モカの昇格祝いにゃあ!」
姐さまたちは各々ご馳走を持っている。
お腹が減ってきちゃった。
「やったぁ! ありがとう。お帰りなさい!」
私は姐さまに抱きついた。
「いただきます!」
今日の夕飯はハンバーグと付け合わせの温野菜。そして味噌汁だ。
姐さまの作る味噌汁は、具の量が少なめで味噌の味が濃く、絵に描いたような見た目だ。
ザ・味噌汁というイメージ。
お母さんには悪いけど私は姐さまの作った方が好きだ。
ごめんね?
「あっつ!」
熱々のハンバーグは噛むと中から肉汁があふれ出してきた。
めちゃ美味しい。
付け合わせのにんじんも甘くて口の中でとけていく。
めちゃ美味しい。旅館にある地元のとれたて野菜みたいな感じといえば伝わるだろうか。
とにかく美味しい。
味噌汁はもう湯気から美味しい。
具はお豆腐とわかめだけとシンプルだ。
だがしっかりと味噌の味が染みている。最高やん。
「さて、お待ちかねのケーキだよ」
真羽さんがチョコレートケーキを切り分けてくれた。
外側はチョコのコーティングでツヤツヤと輝いている。
対して内側はチョコのクリームと生地が交互に積み重なっている。
どこまでも純粋なチョコケーキだ。
いちごやみかんなどの不純物が混じっていない。
姐さん。わかってる。
「甘苦くて美味しいね」
口に入れると甘い砂糖の味がパッと広がる。
同時にチョコのビターな香りもして。美味しい。
「モカは本当に幸せそうに食べるのぅ」
「ここまで美味しそうに食べられると見てるだけでお腹いっぱいになりそうにゃあ!」
「そう言いつつも食べ切るのが炭花だがな」
「視覚からの満足感はケーキとは別腹だにゃ」
普通に食べているつもりなんだけどなぁ。
ただ、食べ物がびっくりするくらい美味しい。
めちゃ美味しい。
「そういえば、今日の【女神の剣】の仕事はどんなのだったの?」
ふと気になって聞いてみた。
「今日は泥棒を捕まえにいったにゃあ!」
やっぱり意外と地味な仕事なんだなぁ。
前も逃げた猫を探しにいったり、近所の人の引っ越しを手伝ったりと地味なことをしてた気がする。
いや。今日は前よりも大変か。
にしても疲れすぎな顔をしている。
特に姐さま。
姐さまは今日も整った顔をしているが、どこか疲れがにじんでいる。
元マフィアらしくない。
いつも通り美しい所作でケーキを食べている。
でも口元にチョコが付いている。
姐さまらしくない。
「姐さま。ちょっとこっち向いてください」
手でそっとチョコを拭う。
指についたのを舐めるとケーキよりも甘い気がした。
「月夜さん。疲れてるんじゃないですか?」
真羽さんも心配そうだ。
ゆうて真羽さんも疲れているように見えるけどね。
「今日はお開きにしましょう」
片付けを手伝おうとする炭花ちゃんと真羽さんを帰し、ささっと食器を洗う。
「姐さまは寝ててくださいね」
お疲れモードの姐さまにも先にベッドで寝ててもらう。
……ベッドで推しが寝てるってなんか良いな。
「今日は姐さまにマッサージをします」
いつもしてもらっている側だが、今日はする側になるのだ。
「其方にできるのかえ」
「できます! というかやります」
私は姐さまの肩に手を乗せた。
今は浴衣なのでいつもの着物よりも生地が薄く、姐さまの体温がより伝わってくる。
ちょっと緊張する。
一つ深呼吸をしてから肩を揉んでいく。
めちゃこり固まっている。やば。
「姐さま。酷いこりようですよ」
「言われてみればそうじゃのぅ」
普段からこりすぎてもう気にしなくなっていたのだろう。
これほどこりかたまっているのは大きなお胸のせいだろうな、と思う。
私にはない、大きな膨らみ。羨ましい。
あと、抱きしめられたときの抱擁感がすごい。めちゃ落ち着く。
「気になるかえ」
見てたのがバレた。
見すぎちゃった。
「モカはまだ10代じゃろう? まだまだこれからじゃ」
「どうやったら大きくなりますか?」
「あっても邪魔なだけじゃがのぅ。じゃが、あえて言うならばマッサージじゃのぅ」
気づいたら姐さまに押し倒されていた。
「今日は私が……」
「また後でのぅ。今はこっちじゃ」
姐さまに服を脱がされて、下着のみにされた。
「こうやって鎖骨のあたりをほぐしたり」
姐さまの手が私の肌に優しく触れ、そっとほぐされる。
「脇の肉をよせてきたり」
むぎゅっと脂肪をよせられる。ちょっと大きく見える気がする。
「こうして撫でて、形を整えたりするんじゃ」
姐さまが片手で胸を持ちながら(残念ながら私の胸は姐さまの片手に収まってしまう)、反対の手でなでて整えられる。
結構恥ずかしい。
「あの、姐さま?」
「おぉ。悪いのぅ。綺麗な肌をしているものじゃからのぅ」
頭をポンポンと撫でられる。
頭がほわほわして姐さまをにマッサージをするどころではない。
「もう寝ようか」
姐さまに抱きしめられながら眠りについた。
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