第20話 午前中を乗り越えたんだが

 そこからは一瞬で、時間は4時間目の終わりに差し掛かっていた。


 だが何事もなかったと言うわけではない。例えば2時間目が始まる時、俺とあきらは案の定遅刻した。そして何故か俺だけ遅刻扱いにされそうになった。生徒の成績によって態度を変える先生にはろくな奴がいないなと改めて思った。そのことをあきらに話すといやお前の日頃の行いが悪いからだろと言われた。ぶん殴りたくなった。


 他にはやはり2時間目と3時間目の間や3時間目と4時間目の間には色々な人からあの女は誰なんだと言われた。いつもは俺に対して全く興味を示さない奴らだったり普段ほとんど話さないやつからも色々と聞かれた。それだけならまだ良かったのだが他のクラスのやつも来たり、挙げ句の果てには高3のやつらも来たりした。そのことを誰に聞いたんですか?と尋ねてみるとみんな口を揃えてサワから聞いたと言う。噂によると大学受験間近でピリピリしている高3生を和ませるために俺のことを話してるらしい。俺が高3の女と仲良くしてるなんてどうでもいいだろと思ったがどうやら高3でれいはクラスのマドンナ的存在らしく、俺に嫉妬している奴らが大勢いるそうだ。どれほど人気かと言うと怜のファンクラブがあるほどらしい。そのファンクラブの総長を名乗るものが俺のところに来た時には


「君が噂の檜垣ひかき君かね?突然だが君は村花むらはなさんのどんなところが好きだと思ったんだい?顔かい?それとも性格かい?うんうんわかるぞ。あの僕のことをまるで人だと思っていないかのような冷たい態度、いいよね」


 などど出会って早々言ってきた。普通に気持ち悪いと言ってやりたかったがオタクの逆ギレはなにをしでかすかわからないのでグッと抑えた。どうやってこいつを対処しようか考えていると安藤あんどうが普通に直接先輩キモいですよと言った。初めは自称ファンクラブ総長も反論しようとしたが安藤あんどうの威圧感に負けて自分のクラスへと帰っていった。意外に安藤あんどうはいいやつなのかもしれないと思い今度何か奢ってやろうと思ったが、冷静に考えてこんな状況になったのも全て安藤あんどうが原因だということを思い出し、やめた。


 こんな感じで色々なことはあったがなんとか4時間目まで乗り越えてきたのだ。そして次の時間は昼休憩である。うちの学校ではほとんどの生徒が昼休憩に昼飯を食べる。学校内に食堂がないから食べるのは大体は家で作ってきたお弁当だ。ちなみに俺はいつも朝ごはんを作るついでにお弁当も作っていて、いつもそれを食べている。だが今日は違う。今日は朝起きたられいが朝ごはんを作ってくれていたので、お弁当を作るのを忘れたのだ。いつもは萎えるところだが今日は違う。俺はみんなが弁当を食べている間にどこかへ逃げることができるのだ。約30分の昼休憩をどう乗り越えるか考えていた際お弁当を持ってきていないことに気がつき、その時はようやく俺にも運が回ってきたのかと思った。


 そんなことを考えていると教室にチャイムが鳴り響いた。


「これで授業は終わりだ。お前ら、ちゃんと復習しとけよ〜」


 そう言いながら教室の出口へと向かう先生を目で追っていると、出口付近に見覚えのある顔が立っていることに気がついた。


檜垣ひかき君、檜垣ひかき君、今少し時間いいですか?」


 そこには手提げ袋をぶら下げているれいの姿があった。




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自殺しようとしている子を救ってあげたら懐かれたんだが 遠藤俊介 @Inbanuma

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