第12話 学校に行くんだが

「チリリリリリ」


 けたたましくアラームの音が部屋中に鳴り響く。


「もう朝か」


 寝不足だからか頭が痛い。昨日はとても中身が濃い1日だったからなかなか寝付けなかったのである。


「学校めんどくせぇ。しかも安藤あんどうとも会わなくちゃだしなー」


 俺は今からでも二度寝して学校をバックれたい気分だった。


「あと10分ぐらい寝ても大丈夫だろ」


 ちなみに10分も寝たら遅刻することに俺は気づいていない。


 世の中には二種類の学生がいる。一つは時間に余裕を持って学校に行く人。この人たちは大体頭が良い(俺調べ)。もう一つは時間ギリギリに学校に行く人だ。こちらの方が人口は多いだろう。ちなみに俺ももちろん後者の方だ。


 すると、キッチンの方から朝ごはんのいい匂いがした。


「おかしいな、朝ごはんを作ってくれる人なんていたっけな」


 俺はパジャマのまま部屋を出て、キッチンの方を見に行く。するとそこには悪戦苦闘しながら料理をするれいがいた。


「あ、おはようございます。檜垣ひかき君」


 れいは笑顔で言う。


「ああ、おはようって村花むらはなさんって料理得意じゃないんだよね?なんでわざわざ早起きしてまで料理なんてしてるのさ」


「悔しかったんです」


「え?」


檜垣ひかき君に迷惑をかけるのが悔しかったんです。だから朝ごはんぐらい自分で作って檜垣ひかき君に楽させてあげようと思って...」


「別にそこまでしてくれる必要ないのに...」


「これは自分との戦いなんです。それに檜垣ひかき君に迷惑かけっぱなしじゃ私が許せません。なのでこれ、作ったので食べてください」


 そう言い、れいは料理が載った皿を渡してきた。


「ありがとう。喜んで食べさせてもらうよ」


 俺は素直に受け取った。


 とは言ったものの...なんだこれは。なぜ皿の上にダークマターが載っているんだ?果たしてこれは料理なのだろうか。でも怜がせっかく作ってくれたものだし...


「ちなみにこれはなんの料理なんだ?」


「エッグベネフィクトです。檜垣ひかき君が昨日作ってくれたのがとても美味しかったので、自分でも作ってみたいって思ってたんです。ネットでレシピを調べてみるととても難しくて驚きましたが、結構うまく作れた気がします!檜垣ひかき君には遠く及びませんけどね。なので一口食べてみてください!」


 エッグベネフィクトか...作り方自体は簡単だから味は美味しいのだろうか...でもこの見た目だぞ?美味しいとは見えないんだが。でもせっかくれいが俺のために頑張って作ってくれたものだしな...とりあえず食べてみるか...


「え、めっちゃうまい...」


「本当ですか!早起きして作った甲斐がありました!」


 なんでこの見た目で美味しいのだろうか。焦げているが逆に焦げが美味しく感じるぞ。何回も言うが見た目は最悪だが。


「本当に美味しかったよ。ありがとう、村花むらはなさん」


檜垣ひかき君が喜んでくれて何よりです」


 れいは嬉しそうに微笑む。その笑顔に俺までも微笑みそうになる。


「そろそろ時間ですし、檜垣ひかき君は着替えちゃってください。私は食器洗っておくので」


「何から何までありがとう、村花むらはなさん」


「いえいえ、これも恩返しですので」


 そう言ってれいはキッチンへと向かう。それを見て俺も自分の部屋へと向かった。






「それじゃあ学校へと向かいましょうか」


 着替え終わった俺がリビングに戻ると、制服をきたれいがそこにはいた。その姿は世の中の男子なら全員目を奪われてしまうほど美しかった。


「ああ、時間も結構ギリギリだしな、行こう」


 俺は忘れ物がないか確認し、家の外に出る。


「鍵、閉めちゃうぞー」


「ちょっと待ってくださいー」


 その後、れいも家の外に出た。






 俺の家から学校までは10分ほどで着く。今の時間は7時50分なので結構ギリギリだ。俺たちは少し早歩きで学校へと向かう。


「そういえば昨日スーパーマーケットで会った男の人、誰なんですか?」


「ああ、あいつか。あいつは安藤あんどう。簡単にいうとスクールカースト上位に位置する根っからの陽キャだ」


「友達なんですか?」


「まあそこそこの仲かな」


檜垣ひかき君の友達ならきっといい人なんですね。少し安心しました」


「まあいい人ではあるんだけどな、少し面倒くさいっていうか...」


 すると俺は突然肩を叩かれた。


「突然肩を叩いてどうしたんだ?村花むらはなさん」


 俺は後ろを向く。そこには見覚えのある高身長の男がいた。


「よぉ悠真ゆうま。誰が面倒だって?」


 なんでこいつはいつもタイミングが悪いんだ。




——お願い——

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