第19話 追求されているんだが

「いや待て待て、え?一昨日出会った女とあんな仲良さげに学校に来てたのか?」


「まあそういうことになるな」


「お前よく2日であそこまで距離近づけることができたな」


「まあ色々あったからな」


「色々ってなんだよ、もしかしてヤッたのか?おい!なんか言えって」


 うん、あきらはどうやら早とちりするところがあるらしい。


「落ち着けって。まずな、俺は一昨日放課後に補習を受けていたんだ」


「お前ついに補習を受けることになったのかよ。落ちるとこまで落ちたな」


「うるせぇ」


「そろそろ勉強し始めないとやばくないか?あと1年ちょいで受験だぞ」


「俺もそろそろやんなきゃなって思ってるとこ」


 あきらはたまにお母さんみたいになることがある。こないだの修学旅行の時も前日に忘れ物はない?だとかちゃんとアラームつけたか?とか色々と言ってきた。まあ結構ありがたいから俺もそれに頼ってしまっているんだがな。そんな話はどうでもいいんだ。いやまあどうでもよくはないけど。


「それで補習の時になんかあったのか?補習で一緒になった女の子と運命の出会いを果たしたとか?」


「そんなんじゃないよ、補習は大きなイベントもなく終わったんだ。問題はその後なんだよ。俺が家に帰ろうと思って校門を出ようとした時にさ、ふと後ろを向いたのよ。したらさ、学校の屋上に人が立ってたんだ。そしてそいつはどう見ても自殺しようとしているわけよ。それで俺はいてもたってもいられなくなってさ。全速力でそいつを助けるために屋上に向かったんだ。って今泣くとこあったか?」


 あきらはなぜか涙目になっていた。


「いや、悠真ゆうまは乗り越えたんだなって思って」


「いやどういうことだよ」


悠真ゆうま去年まではあのことを思い出さないようにしてたからさ、きっと去年とかだったら今みたいにすぐにその子を助けるって判断ができなかったと思うんだよ。だけど今は真っ先に救おうって判断ができるようになったんだなって思って」


 あきらが言うあのことはおそらく一昨年の自殺事件のことだろう。


「うん、多分俺の中で何かが変わったんだと思う。それもこれもあきらの助けがあったからだよ。あの時はありがとうな」


「ちょっと照れるな」


 あきらは頬を赤らめながら言う。こいつちょっと女みたいな仕草をすることがあるんだよな。


「それで屋上まで向かったらそこに自殺しようしてる女の子がいたわけ。それでなんやかんやあって俺の家で泊まることになったのよ」


「いやそのなんやかんやの部分が知りたいんだわ」


「恥ずかしいから嫌だ」


「そこ渋るなよー」


「だって今思えば俺めっちゃ恥ずかしいこと言ってたなって思ってさぁ」


「一つでいいからさ、なんて言ったのか教えてよ」


「俺がお前のことを救ってやる、そして教えてやる、この世界で生きる意味をって言った」


 あきらを見ると大爆笑していた。


「そこまで笑うことないだろ」


「いやだって、それは痛いわ悠真ゆうま


「うるせぇ」


「でもその一言がその女の子を救ったんだろうな。自殺しようとしている時にそんなこと言われたら俺でも惚れちゃうかもしれない」


「お世辞ならいらないぞ」


「お世辞でもなんでもないさ。本当に悠真ゆうまのやったことは誇るべきことだと思うぞ」


「やめろよ照れ臭い」


 俺は照れ臭くなり下を向く。


「それで一昨日、昨日とその女の子を家に泊めて今日学校に一緒に来たわけか」


「まあそんなところ」


 するとグリプラ内にチャイムが鳴り響いた。


「やっべぇ時間見てなかった、これ以上遅刻がつくと進学危ないんだよ」


「マジかよ、全速力で行くぞ」


 俺とあきらは走って教室へと向かっていった。




——お願い——

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