第3話 自殺しようとしていた子が泊まることになったんだが
「......とりあえず、家に帰って落ち着いたほうがいい」
彼女の嗚咽が収まったころ、まだ俺の腕の中にいる彼女に向って言った。
「......帰りたくない」
「なんでだ?」
「言いたくない」
なんじゃそりゃ。
「俺にはこれ以上追求する権利はないから、これ以上は聞かない。とりあえず、俺の家に来い」
彼女はこくっと首を動かした。
「傘、持ってるか?」
「......持ってない」
「これ使え、って荷物校門に置いてきたんだった」
まあ濡れすぎてて傘をさしても無意味な気がするが。
「ほら、いくぞ」
なんで俺は初対面の女子を家に連れ込もうとしているんだ?
まあ、いいか。
俺は彼女を連れて校門へと向かう。荷物盗まれてないといいが。
「お前、名前は?」
校門で荷物を取り家まで歩いている途中、ふと尋ねてみた。さっきは泣きじゃくっていて顔がよく見えなかったが、よく見てみるとめっちゃ可愛い。高1だろうか。背は俺よりも10センチほど小さい。ちなみに俺もそんなに背は高い方ではない。
「......
「
「......17、今高3」
俺より年上だったとは。今は10月なんだ。高3ならもう共テまで三ヶ月じゃないか。なぜ自殺しようとしていたのか。余計気になるな。
「家まではもうすぐだから。家に着いたらとりあえず風呂に入れ」
俺たちは大雨の中、びしょぬれの状態で家まで歩いた。
家までは歩いてすぐなので、すぐについた。
「今から風呂沸かすからとりあえずこれで体をふけ」
そう言って俺は
「あったかい......」
「そうか、それはよかった」
タオルに顔をうずめる
そんなことを思っているとちょうど聞き覚えのある音が聞こえてきた。どうやら風呂が沸いたらしい。
「風呂沸いたから入ってこい、今お前がきている服は洗濯しちゃうから更衣室にある服に着替えてくれ」
「そこまでしてくれる必要ないのに...」
そう言うと
とりあえず俺は
この家には俺と中3の妹の二人で暮らしている。父と母は俺が5歳のとき離婚し、父の方について行ったが、父も5年前に亡くなった。母は今では音信不通でどこにいるかもわからない。今は父方の祖父母の仕送りで暮らしている。今妹は修学旅行なのでこの家に妹が帰ってくることはないだろう。
「食材余ってたっけなぁ」
そう思いながら俺は冷蔵庫を開ける。
よかった、食材は一昨日買ったばかりだから余ってる。
俺は手早く簡単に作れる料理を二人分作る。
この家は父が亡くなった時に祖父母が買ってくれた家である。近所の友達と離れ離れにならないようにと祖父母が気を遣ってくれたのである。
「祖父母には感謝してもしきれないよなぁ」
そんなことを思いながら俺はソファに座る。服がびちょぬれだったので上半身だけでも拭いておこうと思い俺は体を拭き始めた。
「ありがとうございました、お風呂。ってお取り込み中でしたか」
「いや、大丈夫だ。体拭いてるだけだから。それよりもご飯作っておいたから食べなよ」
「流石にそこまでお世話になるのは...」
「家帰りたくないんじゃなかったのか?」
「それはそうですけど...」
「ちょうど食材が余ってたんだよ。だから逆に食べてくれたほうがありがたいまである」
「じゃあお言葉に甘えて、いただきます」
「俺は風呂入ってくるから先食べといてくれ」
そう
「やっぱお風呂は最高だな」
風呂に10分ほど入った俺は体を拭きながら思った。
「
体を拭き終えてタオルを洗濯機に入れ、パジャマに着替えた。俺は家ではパジャマで生活するのがベストだと考えている。
俺がリビングに戻った時、怜はご飯を食べながら泣いていた。
「なんで泣いてるんだ?もしかして、口に合わなかった?」
「違うの、こんなにおいしいごはん、久しぶりに食べたから......」
「.......なんで」
「え?」
「なんであの時、私を助けたの」
「なんでってそりゃ、見殺しにするわけにはいかないだろ」
「嘘、何か理由がなきゃあんな必死に助けない」
「.......はぁ、あんまり言いたくないんだけどな」
「昔、親友がいたんだ。けど、ちょっとな、学校に来なくなって、そのまま.....」
今でもあのことを思い出すと胸がはち切れそうになる。
「......そう、辛いこと話させちゃって、ごめんね」
「いや、いいんだ。こうしてお前を助けられたし」
「...そう」
「それでお前はこの後どうするんだ?」
「このままお世話になるのも申し訳ないから、帰る」
「帰るってお前、帰りたくないんじゃないのか?」
「......」
「...はぁ。今日は俺の家に泊まれ。」
「そんな、迷惑かけるわけにいかない」
「だからって見捨てるわけにはいかないだろ」
「...ありがとう」
「妹の部屋が空いているから今日はそこで寝ろ」
「どうした?」
「そういえばまだ、あなたの名前を聞いてない」
「
「そう、今日はありがとう。
——お願い——
この作品はカクヨムコンに応募しています。
もしよかったら★評価とフォローお願い致します。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます