第15話 手遅れになっているんだが

 俺は帰りたいと思いながらも教室へ向かう。学校をサボる選択肢もあったが俺は成績がヤバい。サボったことがバレて平常点を減点でもされたら進学がいよいよ危なくなるのだ。


「マジで真面目に勉強しとけばよかった...」


 まあ今更後悔しても遅いのだが。俺の教室は4階にある。うちの学校は階ごとに学級が分かれている。


 1階にはエントランスと体育館。ただでさえ狭い校舎なのに校舎内に体育館を作ったせいでうちの学校の体育館はとても狭い。全生徒が入らないので朝礼などは校庭でやるのだ。冬などは寒すぎて死にそうになる。今からでも体育館を別の建物にしてほしい。


 2階には職員室や放送室、多目的室や生徒指導室などがある。俺が一昨日補習を受けていたのもこの階だ。今日も補習があるので放課後に2階に行くことになる。


 3階には高1の教室がある。各学年7クラスなので教室だけで3階は埋まっている。


 4階、5階はそれぞれ高2、高3の教室。この階たちも全部教室で埋まっている。


 6階は図書室。うちの学校は他の教室は狭いのに図書室だけ異様にでかい。6階丸ごと図書室になっているからだ。


 7階は物理、地学実験室や英語科、国語科教室がある。憎き小澤おざわ先生がよくいるのはこの階だ。今日は近寄らないようにしておこう。


 8階には生物、化学実験室や数学科、社会科教室がある。化学の実験などがあるとこの階に行くことになるのだが、何故かうちの学校にはエレベーターがないので向かうだけで一苦労である。


 他の音楽室や美術室、家庭科室などは美術棟と呼ばれる別の建物にあったり、柔道場、剣道場は武道棟と呼ばれる建物にあったりする。


「マジでなんでエレベーターつけてくれないのかな」


 俺はそんなことを思いながら4階まで階段を登って行った。






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 俺が4階に着いた時、俺の教室からざわめき声が聞こえてきた。どうせまた安藤あんどうあたりがバカなことをしているんだろう。この間も朝、教室で野球拳をしていたのが女性教師にバレて生活指導を食らいかけていたのである。


 俺が教室に近づいた時、聞き覚えのある声が聞こえてきた。


「正直な話、悠真ゆうまのことはどう思ってるんだよ〜」


檜垣ひかき君は私の命の恩人ですし...いい人だとは思いますよ」


「相思相愛ってことかよ〜悠真ゆうまも幸せもんだな〜」


 俺は理解が追いつかなかった。ここは高2の階のはずだ。なぜれいとしか思えない声が聞こえるんだ?


村花むらはなさん、村花むらはなさん!檜垣ひかきのどこに惚れたんだ?」


 別の男がれいと思われる人に質問する。


「だから惚れてませんって」


「照れんなって〜」


 間違いない。俺の教室にれいがいる。もうすぐで始業だというのにれいは何をやっているんだよ。まあそんなことはどうでもいい。なんか手遅れなことになっている気がしたが、これ以上傷を広げないためにも、俺は急いで教室に向かって行った。






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「お、主役がきたぜぇ」


 俺が教室に入った時、誰かがそう言った。教室を見回してみると教壇のところにれい安藤あんどうが立っていた。


村花むらはなさん、どうしてこんなところにいるんだ?」


「それが...安藤あんどう君のことを追いかけていたら服装チェックをしている小澤おざわ先生に捕まってしまいまして...2-Dにこいって言われたので行ってみたらこうなってました」


「サワのやつ村花むらはなさんとは何も話せなかったって言っていたのに嘘だったのかよ」


 そうだった、小澤おざわ先生は虚言癖だった。


「もう始業だし村花むらはなさんも自分の教室に帰りなよ」


「そうですね、小澤おざわ先生もなかなか来ないですし帰らしてもらいます」


 そう言い、れいは教室を出て行った。


「これで一安心だな」


 俺がそんなことを思っていると後ろから肩を叩かれた。後ろを向いてみると、教室にいる全員が俺の方を見ていた。


「何も見なかったってことにできないですかね」


「無理だろ」


 学校に来なければよかったと心の底から思った。




——お願い——

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