第9話 帰り道

「先生?ノート提出って今日の放課後までって言ってませんでした?僕はそう言ってたと思うんですけど」

無謀すぎるだろ。

それは流石に通じないよ?

人生そんな甘いもんじゃないよ、遼くん。


「なぁ?颯?」

え?よりによって僕に聞く?やだよ。怒られたくないよ。

さっきまで朱織さんに向けられていた目線が僕の方へ一斉に向く。

どうする?自分。


先生の怒りの矛先は、朱織さん。

なんとしてでも助けたい。その気持ちは変わらない。いつもなら絶対言わないけれど今回ばかりは遼もいる。

そして僕は、必死にうなずいた。声すら出なかったが、精一杯の反応をしたつもりだ。

そして、遼は続けた。

「だから今じゃなくても、この後探したらいいですよね?」

「…」

あれ、反論してこない。あの佐々木が。

珍しい。

「あぁそうだったか。ならいい。放課後探しなさい。」


嘘だろ?佐々木が折れた?

まぁ、でも。なんやかんや言って遼は成績が良いし、信用されているから本当に騙されることもあるのだろうか。はたまた朱織さんが可愛いからという贔屓か?


授業が終わって、朱織さんがこちらへやってきた。さっきのお礼だろうか。

「遼くん、颯くん、さっきはありがとう!」


驚いた。僕はうなずいただけだのに、朱織さんにお礼を言ってもらえた。

想定外のお礼に照れた僕の顔を遼は見てからニヤニヤしてから。

「どういたしまして」

と言った。

そして僕らは熱いグータッチを交わしたのだった。


それから僕らは放課後朱織さんと残って、理科のノートを探した。

結果を言うと、ノートは教室にはなくて、佐々木先生が持っていた。

まじでいい加減にしろよ、佐々木。

みんなの前で起こったことを、自分の口から佐々木先生は謝った。これまた珍しいな。




最終時刻を過ぎようとしていたから、3人で学校一緒に出た。

遼は自分は道が違うからと言って、理由をつけて僕らを2人きりにした。多分、彼なりの最大の応援なんだろう。

そうして僕と朱織さんは、一緒に帰ることになった。

僕には、女の友達なんかいない。

遼が期待に応えたいのだが。

でもいざ告白するとなれば緊張して言葉が何も浮かばない。そしてやっぱり黙り込んでしまう。漫画や小説でこんなシーンは何回も読んだことがあるけど、現実も同じなんだなと実感する。


僕が緊張しているのを感じてしまったのか、朱織さんが話しかけてくれた。

「颯くん、おすすめの本とかある?この前私の好きな本聞いてもらったから、逆に知りたいなーって!」

「えぇっと…僕はミステリー系が好きだから、寒い夏っていう凪 咲良さんのやつを読んでて…」

「そうなんだ!寒い夏ね〜、なんか不思議な名前!めっちゃ興味出てきた〜忘れないようにしないと…」


そう呟いてから彼女はずっと寒い夏、寒い夏、寒い夏と彼女は繰り返していた。

その声はまるで二人の間に流れる気まずい空気から逃れているかのようだった。

どうしよう、朱織さんが気を使っている。僕のことが嫌いなのかな。

今、じゃないよな…告白は。はやすぎる。

でも、もうすぐ家だ。この道を次の角まで行くと、僕らの帰路は別々に。

今言わないと遼の努力が水の泡になる…!

こんなチャンス二度と無いかもしれないし。

勇気を出せ、自分。いつやるの?今でしょ。

いけ!颯!!

「朱織さん、僕は君のことが…」

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閑話 藍田の日常③

盗み聞きは良くない。

そんなの分かってる。

でもさ、あんな状況みてしまったらやってしまうじゃん。


俺はサッカー部に属している。

今日はあいにくの雨。

あんま部活が好きじゃない俺は今日の練習が無くなると聞いて喜んだ。

帰ったらゲームしよ。なんて考えながら一人で帰る。


いや勿論?友人や恋人といった一緒に帰るやつはいるんだが今日はみんな用事があるみたいで先に帰っちまった。


「暇だ。」


うん。

一人で帰るのって不思議な気持ちになる。


勿論暇だし寂しいけど、嫌いじゃない。

だってこの世界が自分だけのものみたいに感じられるから。

ただ雨ってのがなぁ。雨はやだなぁ。

家でゆっくりできるのはいいけどじめじめしてて嫌い。


「雨、止まないかねぇ。」


下足で靴を履き替える。



「あ。」


そこに颯、遼、朱織の3人が仲良く談笑していた。

良かった。

いや今日も色々騒動があったし、前はドッジボールで色々あってその度心配してたけど何とかやってるな...。


良かった良かったって俺は母親目線であいつらを見ている。

いや、本当は羨ましいのかもしれない。

俺もあそこに混ぜて欲しいななんて...な?


まぁ俺はちょっと場違いか。



あれ...?

さっきまで3人で居たのに2人きりになってる。颯と朱織の2人きり。


「こ、これは恋愛展開があるんじゃね!?」


帰り道も途中まで一緒だしついて行くことにする。

って完全に不審者じゃね?俺。


2人は楽しそうに話していた。

まだ緊張感がお互いにあるからか沈黙も多いみたいだけど、俺的にはお似合いだと思う。

これ以上は盗み見しちゃいけないな。

俺の良心が痛むから。


てことでまだ2人と帰り道は一緒だけど俺は方向転換して遠回りをして家に帰ることに決めた。

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

おはようございます!

PVが日に日に減っててへこんでるので皆さん読んで欲しいです...。

フォローより‪☆、‪☆より♡、♡よりPVこれが私のモットーです。目標は小遣い稼ぎや書籍化ではなく、多くの人に読んでもらうこと。きれいごとに聞こえるのですが本当です。

だからこれからも読んでくださると嬉しいです!

ところでドッジとドッヂってどっちが正しいんでしょうか笑

知ってる人教えてください

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