第10話 約束

「…あ、えぇと、と?友達になりたいです。」


あぁー、言えなかった。

何してんだよ、本当に。テンパリすぎだろ。

友達じゃなくて恋人だろ!?


一瞬彼女はポカーンとして、それから我に返ったようにして言った。

そりゃそうだ。こんな変なこと言うやつなかなかいない。


「友達、だよ?ずっと前から!なんだ、びっくりしたじゃん!!今まで友達になるためのこ、告白なんて、してもらったことないから。」


彼女がそう思うのも無理はない。勘違いするよな?君のことが...なんて言われたら。

その勘違いする方を言いたかったんだけどな。


「そ、そうだよね。はは。いや、なんか急にごめん。」


「いや、でもすっごく嬉しい。せっかくだし、今度友達らしいことしてみようよ。」


「どう言うこと?」


「一緒にカラオケいってみたり、ボーリングしに行ったり!そういうのは大人数の方が楽しいから、遼くんも呼んだりしてさ!」


2人きりじゃないのはやっぱり友達、だからか。

でも遼がいれば心強い。

そして何より、朱織さんと遊べる関係まで行けたなんて、すごいじゃないか、自分……!

ありがとう、過去の自分、ありがとう、遼っ!


「いいね!そんなこと今までしたこと無かったや。うれしい。また明日3人で日程とか決める?」


「うん!なんだか凄く楽しみになってきた!」


「そうだね!」


「今日は一緒に帰れて楽しかった!じゃあ私、こっちだから、ばいばーい!」


「またね!」


ふぅ、ま、告白までは行けなかったけど結果オーライって感じだな。



「ってことで貴方様のお陰で遊びに行けることになったんだよ!!

まじありがと、遼!」


昨日のことを真っ先に伝えた。

もう嬉しくてたまらないからだ。

そして何より昨日の感謝を遼に早く伝えたかったのだ。


「お、おぅ。」


いつもとテンションが違いすぎる僕に驚いたのか、遼は戸惑いながら返事をした。

だけど彼もとても嬉しそうだった。


「それで日程はいつになったんだ?」


「いや、それがまだ決まってなくて、遼はいつがいい?」


「ゴールデンウィークは混んでるだろうから、避けたいな。じゃあその次の週の5月13日なんてどうだ?」


「いいじゃん!朱織さんにも聞いてみよう!」


じゃきいてくる!ということで早速朱織さんのところへ行くと、


「13日?多分大丈夫だよ!」

と許可を貰った。


やはり少し緊張するけど、もう友達なんだから、と思うと割とすぐに話せた。

これも大きな成長だな。素晴らしい。


「遼ー!朱織さんの了承得た!13日に桜岡駅前のカラオケ決定!」


「おー!ちょうど2週間後くらいだな、楽しみー。」


遼は何故か少し悲しみが混じったような笑顔で僕を見た。それから口を開いた。


「ちょっと他にも颯とやりたいことがあるんだがいいか?」


「なんだ?」


遼がニヤリと僕を見つめる。


「今日は何の日でしょう。」

「いきなり!?分かんないよ。正解は?」


「正解は...朱織さんの誕生日」


「え!?まじなの!?」


遼は大きく頷く。


「まじ。ってことでサプライズの準備するから1時に颯の家行くな?大丈夫?」


「大丈夫だけどサプライズって...?」


「詳しいことはまた午後に話す!とりあえず1時に行くからな!」

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


ピンポーン


来たー!

玄関で待ち伏せていた僕はすぐさま外へ出た。


「よっ!」


遼は大量の荷物と共に入ってきた。セールから帰ってきた母親みたいだ。


「いやー重かったよ。」


だろうな。


「これ、何が入ってるんだ?」


「えーっとね、まずは飾り付け用の色々でしょ?でメッセージカードに…ケーキの材料」


スポンジに生クリーム、チョコソースに果物の缶。キッチン1面に材料が並んでいる。


「け、ケーキ?!僕作れないよ。」


こういう器用なことは昔から苦手である。


「大丈夫。俺作ったことあるから。」


すげ。普通に尊敬する。


「そうなんだ。意外。ほんと遼ってなんでも出来るんだな。」


「ふへへへ。褒めてもなんもでねーよ?」


めっちゃ照れてる。なんか子犬みたい。


「ま、時間ないから早く作るよ。朱織さん3時半にここに来るから。」


「朱織さん来るの!?ま、まじ!?色々間に合うかな?」


色々とは見た目のセットも含め、だ。


「大丈夫。俺に任せろ!じゃ作るぞー」


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


「...僕センスないかもしれない。」


ケーキを作り始めて約15分。

生クリームを生地に塗っているのだけど。

均一に塗るのムズすぎて...

挫けそう。


「生クリーム足りないよ?遼!」


そう。明らかに足りないのだ。


「え?そんなはずないけど...」


飾り付けをしていた遼がキッチンへ助けに来た。


「ちょ、颯!生クリームは初めに全部使っちゃダメだよ。3分の1くらい乗っけて広げるの!」


「え、あそうなんだ。やば。どうしよう。」


時間ないよ!朱織さん来ちゃう。


「俺が追加の生クリーム買ってくるから飾り付けしといて。あとエプロンに生クリームめっちゃついてるから洗いな?」


ほんとだ。エプロンだけじゃなくて手にも沢山生クリームがついてる。


「分かった...。ほんとごめん。」


迷惑かけすぎてる。


「まぁはじめてなんてそんなもんよ。大丈夫。

完成度じゃなくてその人をどれだけ想ったかが大事だよ。颯はそこんとこ大丈夫だろ!」


わぁ。神様みたいに優しい。


「じゃ行ってくるから飾り付けよろしくな!」


ガチャ。遼がまた行ってしまった。


遼はすごく優しいやつだけど、なんか優しすぎるというかなんでこんな僕にここまでかまってくれるんだろって思う時がある。

いつかふと消えちゃいそうで怖い。


そんなことを思いながら飾り付けをする。


壁に貼り付けるから...椅子の上に乗るか。


リビングの椅子に乗って飾りを貼り付ける。


「あぁっ!」


気づいた時には遅かった。椅子のネジが外れて僕は地面へと落下していた。


「いっってぇ。」

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


作者のひとりごと。

投稿全然していなくてすみません。

ネタ集めという名の友人と遊びをしていて投稿出来ませんでした笑


今回のお話は少し、いやかなり最終話の伏線になっております。今までも伏線をちょいちょい入れているのでまた読んでみてくださいね。


ではまたの投稿をお待ちください!

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