第11話 これって…
床に転んだ僕は、辺りにちらかった本を片付けていた。
床にぶつけたせいで頭がぐわんとする。
ちょうどアルバムが入っている棚を倒したせいで何枚かの写真が散らばっている。
母親と僕のツーショットか僕単体の写真がほとんどだった。
しかしそこに見た事のない少女と僕のツーショットが写った写真が1枚あった。
だれだ、この子。
見たことない顔だ。
いや、少し既視感がある。
あ、あぁ。桜に似てる。
僕よりかなり年上に見える。
こんな子いたっけ。
ていうかこんなに仲良く映ってるのに僕が覚えてないってどういう事だ?
ますます気になる。
とりあえず時間もないから僕はその写真を上着のポケットに突っ込んで床にちらばる写真を拾った。
「ただいまー!」
「お、おかえり!」
なんとか遼が帰ってくるまでに片付けれた。
「あれ、飾り付けは?出来なかったの?」
「あ、いや。実は椅子が壊れてさ、コケたんだ。それで床に散らばった写真を集めてたら...時間なくて。」
許してくれるだろうか。
生クリーム買ってきて貰ったのに飾り付けできてないとか普通に足引っ張りすぎだよな。
怒られても仕方ない。
「え。」
やはり怒っているのだろうか。
いや、青ざめてる?
「ほんとにごめん。今すぐするから。」
許してくれっ...。
「いや、そうじゃなくて。颯、血が出てる。」
え?どこだ?
手や足をみる。
確かにアザみたいなのはあるけど血は出ていない。
「颯、あたま、頭から出てる。」
頭!?
びっくりして、恐る恐る額に手をやると、どっぺりと血が付いた。
「うわ。やばい。」
頭から血が出る時ってどう対処したらいいんだ?
考えてるうちに頭がぐわんぐわんして真っ直ぐ立てなくなった。
ばたん。
自分が地面に倒れ込んだのが分かった。
「颯!颯しっかりして!」
遼が必死に叫んでいたが、僕は反応すら出来なかった。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
...ん?
目を覚ますと病院にいた。
頭がズキンとする。
ぶっ倒れたあとの記憶がない。
「颯?颯!分かる?私。お母さんよ。」
「いや、分かるよ。」
なんで母親がいるんだよ。遼じゃないのかよ。と落胆する。
「頭は大丈夫?しんどくない?」
「まぁちょっとズキズキするけど、大丈夫。」
「そう。良かったわ。」
「あの後どうなったんだ?」
「遼くんが救急車を呼んでくれて、それで私にも連絡してくれたの。どうしてこんなことになったのよ。」
母親もあまり事情を知らないようだ。
「...いや。普通に椅子が壊れて僕が椅子から落ちて頭打っただけだよ。」
「普通に?普通にしててなんでこんなことになるのよ。遼くんと揉めたりしてないわよね?殴り合いとか。」
「心配かけてごめん。だけどあいつはそんなことするやつじゃない。ほんとに椅子から落ちただけだよ。」
「...そうよね。ごめんなさい。」
「...」
「あのね、お母さん今日から出張なのよ。」
やったぁぁぁ!
まぁカレンダーにあれだけ大きく書いていたんだから、既に知ってるけど。
「……知ってるけど?僕は大丈夫だから行ってきていいよ?」
「いや、こんな状態で置いていくのはさすがに心配だし叔父さんに代わりに来てもらうから。」
叔父さん…?
え、1人が良かったのに。
あと確か叔父さんと母は仲が悪かったんじゃ…
そこんとこよく分からないけど。
「分かった。じゃあ行ってらっしゃい。」
とりあえず早く病室から出ていって欲しかった。
遼が僕を殴る?そんなことするわけない。
僕の親友にそんな濡れ衣着させるなんて。
信用してくれよ。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
別に叔父さんが嫌いなわけではない。
おじさんは、母の弟(そりゃそうか)で、水本駿(みずもとしゅん)という。
言い忘れていたが、いま色々あって僕の母親と父親は別居中であり、でも離婚はしていないので、水本、というのは母の旧姓である。
駿叔父さんは母親とは10歳くらい離れてるから、歳は29か。
意外と歳が近いからか、親近感も湧くだろうが、かれこれ9年くらい会ってなかったから、顔はよく覚えていない。
前はそういや誰かの葬式だった気がする。
ひいばあちゃんとかかな。全然覚えてないや。
聞いた話によると彼は大人しめの性格らしい。
馬が合いそうだが、やっぱり1度しかあったことの無い他人となると、緊張するなぁ。
次の日。
当然のごとく入院してるから学校は休み、1人寂しくベッドで横たわっていた。
「おはよう。颯くん。久しぶりだね。」
来た。水本駿。
なぜかスーツが似合ってなくて、いけてない感じ?そんな雰囲気。
「あ、おはようございます。すみません、忙しいのに。」
「あ、全然大丈夫だよ。」
めっちゃおどおどしてる。人見知りなのかもしれない。
「仕事とか、大丈夫ですか?」
「あ、あぁ。テレワークだから大丈夫だよ。これ服の予備だからここ置いとくね。」
「ありがとうございます。」
「俺、今日はテレワークないから暇だけど、いた方がいい?話し相手になれるかは分からないけど。」
どうしよう。どちらかと言えば久しぶりに会う親戚に気をつかうよりは1人の方が気が楽だけど。
でも、あのことなら知ってるかもしれない。
「...じゃあ1つ聞いてもいいですか。」
「ん?」
「そこに掛かってる上着のポケットの中、見てください。」
ごそごそとおじさんが探す。
「こ、これ?」
「は、はい。家で見つけた写真なんですけど。」
「...っ!」
おじさんは目を見開けていた。
絶対何か知ってる。それを確信した瞬間だった。
「どうかしましたか?なんか知ってるんですか...」
「あ、え、っと。いや?何も知らないよ。」
絶対嘘だ。
「そうですか。」
「それで聞きたいことって?」
「この、僕の隣にいる女の子、誰か分かりますか?」
しばらくの沈黙が気まずく流れた。
「しらないよ。僕は昔から君のお母さんと仲が悪かったから。君たちのことは何も知らないんだ。」
逃げた。何かから逃げたな。
「そうですか...。何か知ってると思ったんですけど。」
「協力出来なくて申し訳ない。いま僕から言えるのはそれだけなんだ。」
「あ、いや。全然大丈夫です。」
その時。
「「失礼しまーす。」」
待望の2人がやってきた。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
作者のひとりごと。
投稿遅くなってしまい、申し訳ありません!
だいぶ内容を変更したので時間がかかりました。
そろそろこの物語の真実が分かった人もいるのではないでしょうか笑
分かった人、コメントしてくださいね!
では、今日は2話投稿する予定なので午後の投稿をお待ちください!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます