第12話 やっほー

「すみません、2年3組の松野と、向埜です!

颯くんのお見舞いに来ました〜!」


2人の顔を見るとすごく安心する。


「お見舞いだってさ、颯くん。2人は、クラスメイト?」


ただのクラスメイトではない。


「はい。大親友です。」


今までだったら風邪をひいても誰も来てくれなかった。

だからとても嬉しい。

今なら飛び跳ねれる、多分。

それくらい嬉しい。

今にも2人に抱きつきたいくらいだ。


「おい、大親友だなんて...照れるなぁ」


遼が頭をぐしゃぐしゃとかいている。


「あ、当たり前のこと言っただけだろ?」


「ま、まぁな。」


駿叔父さんは僕らのやり取りを、羨ましそうに眺めて言った。


「じゃあ、僕、一旦帰るね。大親友と沢山話したいだろ?」


彼は微笑んでいる。


「ありがとうございます。」


「それじゃ、僕はこれで。」



「ち、ちょっと待って下さい!叔父さんに用事があって。」


急に遼がおじさんを引き止めた。

遼にとって叔父さんは初対面の人はずなんだけど...。

用事ってなんだろう。


「なんだい?外で話す?」


急な提案に叔父さん自身も驚いている。


「はい。じゃごめん、ちょっと話してくるわ。お2人でごゆっくり〜!」


なんだ、そういうことか。

僕と朱織さんを2人きりにしたいわけだ。

びっくりしたぁ。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


「...」

「...」


朱織さんはいっこうに口を開かない。

怒ってる?

僕、何かしたかな。


「...ねぇ。なんか怒ってる?」


明らかになにか言いたげな表情だ。


「怒ってるっていうか!心配だったの!でもお見舞いに来たら間抜けな顔して平気みたいな感じで...もう分かんない!」


ま、間抜けみたいな顔!?

フツーの顔なんだけど笑

まさか間抜けみたいな顔と言われるとは。


「...心配ありがとう。でも大丈夫だよ?」


まぁ心配したんだよ!ってことだよな。

まあ大丈夫なんだけど。


「わたしの、サプライズの準備中だったんでしょ?」


知ってたんだ。あぁ、だから申し訳なさと怒りが入り交じったみたいな顔してるのか。



「...まぁそうだけど。でもそれとこれとは関係ないよ。」


君は悪くない。そう伝えたかったんだ。


「関係あるよ!?私は、サプライズなんかよりも颯くんが健康で居てくれる方が嬉しいの!」


優しいなぁ、ほんと。

僕の周りは恵まれてるんだなと実感した。


「分かった。早く治すよ。遅くなったけど、誕生日おめでとう。」


言えた。これが言いたかったんだ。


「あ、ありがと。」


彼女は顔を赤らめて俯いた。



「あ、ごめんごめん。良いとこだったのに。割って入っちゃった。」


叔父さんと話してた遼が帰ってきた。


「あれ?朱織ちゃん泣いてる?」


「泣いてないです!」


安心して少し涙が滲んでいた彼女は袖で顔を擦った。


「それより遼、何話してたんだ?」


遼はあ、あぁ〜と言いにくそうか顔をした。

彼は一旦考えたあと、口を開いた。


「あ、あぁ、えっと、その。颯が何週間休むかとかだよ。」


確かに。長くなれば学校生活に支障が出るし、カラオケ行きたいし。

気になる。


「何週間なの?」


「3週間だってさ。カラオケはまた今度だな。」


「うわ、まじで?...最悪。」


あんなに楽しみにしてたのに。


「まあまあそう落ち込むなよ。また日程決めよーぜ。」


何故か不安がよぎる。

この関係が「また」の日までちゃんと続くのか。心配だった。今が幸せすぎて。


「うん。絶対一緒に遊べるよね?」


「当然だろ?あ、そーだ。颯の好きな物買ってきたんだ〜!欲しい人!」


「はい!」


「じゃあ目をつぶって...?これはなーんでしょ!」


顔にピタっとなにかがあたる。


「パピコ?」


「せいかーい!」


遼はこれ、2人にあげるよ、と言って僕と朱織さんにパピコをあげた。


「ところで朱織さん、間抜けな顔ってどーゆう事?!」

「なんでもない!間抜けな顔は間抜けな顔よ!」

「え、颯、朱織さんに間抜けな顔って言われたの?ウケる笑笑」

「なんも面白くないから!」


ふっはははは!


3人で最大級に笑った。

頭打って痛いはずなのに、カラオケ行けなくなって悔しいはずなのに、すごく嬉しかった。


この時間がずっと続いて欲しい、と心から願った。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

(朱織視点)


颯くんのお見舞いに行ったあと、私は遼君に聞いた。


「ねぇ、どういうこと??颯くんの叔父さんと遼くんが知り合いだなんて。」


私は疑問だった。

遼くんが颯が倒れたって私に連絡してくれた時から、なにか違和感があった。


どうにも、彼はなにか隠しているように見える。


前からずっと気になっていたけど、その根源は二人の関係性にありそう。


「うーん…」


「もし私に出来ることあれば教えて欲しいんだけど…」


彼は考え込む。


つくづく思うのだが、彼は去年、果たしてあんな性格だっただろうか。


最近急に性格が変わったように思える。

それも含めて彼はおかしい。


「そうだなぁ。話すと長くなるから、あそこのカフェで話してもいいかな?」


「分かった。」


私たちはファミレスに入り、それぞれアイス烏龍茶とメロンソーダを飲んだ。


「ぷはぁー!やっぱソーダ美味しっ!朱織さんも、飲む?」


朱織さん?いつもは朱織ちゃんって呼ぶのに。

というかフレンドリーすぎでしょ!

男子と女子が同じ容器の飲み物を飲むとかもうそれは恋人がすることなんじゃ...


「え、えぇっと…」


こういう時はどうしたらいいんだろう。

ソーダは大好きなんだけど。


無邪気にソーダを差し出す遼くんだったが、適当な理由をつけて断っておいた。


まだ、そういうことをするのには、早すぎる。嫌ではないけどね。


「確認だけど、君は松野遼くんで、颯くんの友達だよね、?」


まず気になるのは遼くんが何故キャラチェンしたのか。

もしかしたら遼くん本人になりすましてるとかのような可能性もあるし。

そして、颯くんとの関係性。

彼は友達にしては彼のことを知りすぎている、ような気がする。


しばらく彼は考え込んだ。


「うーんと、それは違うかな。」


やっぱり。いやでも、それなら目の前にいるのは...


「じゃああなたは誰なの?」


「えっと、僕はいや、私は」


私?一人称か変わった。


その瞬間、彼は声色を変え、目元までかかった前髪をかきあげて、私をまっすぐと見た。

姿は変わっていない。

でも声が女性みたい。


「私は矢倉桜。颯の姉です。今まで黙っててごめんなさい。」


┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


作者のひとりごと。

わわわ!遂に分かりましたね!遼の正体!

読者の方、気づいていたでしょうか!


一体何故遼くんに桜がなりすましてるたんでしょう。真実編は明日からスタートです!

それではまた明日!

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