第13話 ずっと
颯くんの、姉……?
「ごめん、頭が追いつかないんだけど…」
「そうだよね、こんなのいきなり言われても、ね。今から全部話すからきいてくれる?」
「分かりました。」
それから、遼く、いやさくらさんは深いため息をつき、私の方をじっと見ながら話し始めた。
「さっき話したように、私は颯と7歳離れた姉、だった。
私たちの父親はしょっちゅうパチンコに行くような人で、私の家計はあまりよろしくなくて。
でも私が7歳の時に弟の颯が産まれたの。
嬉しかった。
でも、それから母親は颯ばっかりで、私に酷い当たり方をしていたの。
暴力、というより暴言、無関心って感じかな。だから私も家にいるのが嫌になって、夏祭りの日に母親に秘密で、屋台に行ったの。
これが悲劇の始まりだった。」
そんな過去が。
7歳離れなら、桜さんは今もう成人なんだ。
なんでこんな大事な話、私に話してくれるんだろう。
「屋台に行くと、私はすぐに道に迷ってしまい、知らない人たちに声をかけられた。
「親御さんと離れちゃったの?」
「家出?それだったら早く家に帰らないと。お母さん達が心配するよ。」
でも、お母さんは心配なんかしてない。
本当に心配してるなら迎えに来てくれるはずだと信じていた。
というか、それを試していたのだ。
だけど来なかった。
気づいたらもう夜はふけていて、私は仕方なく家に帰ったの。
私を見て、母親は良かったぁ、良かったぁ、と泣きながら言った。
その時は単純に心配してくれてたんだ、やっぱりお母さんは私のことも見てくれてるんだってどこかで信じていたけれど、今ならわかる。
彼女のあの行動はニュースにならなくて良かったぁ、というものだと。
母親はそれから私を問題児扱いするようになり、ついには叔父さん(駿叔父さん)の家に預けるようになった。」
これがさっきのおじさんなのか。
だから知り合いなのか。
「私が颯に会おうとすれば、母親は彼を庇うように私を避け、嫌な目で見てきた。
ただ、何回か変装して河川敷であうことはあったけど、颯にとっては知らない人に過ぎなかった。
叔父さんの家は私の家の隣の県にあって転校もしなくちゃ行けなくて、私は親友だって失った。
すべてをあの女に奪われた。
当然当時携帯電話なんて持っているわけもなく、今も会えていないわ。」
颯くんが桜さんのことを知らないのは歳が離れていたために覚えてないのか。
でもそれがなんで遼くんに関係するんだろう。
乗り移ったってことだよね……
「それは、辛かったですね……。いや、辛かったなんて言葉、失礼ですよね。でも、遼くんとの関係は?」
「そうね。遼くんは…。
叔父さんの家に住ませてもらっているあいだは
何の不自由もなかったの。
だけど、やっぱり、弟には会いたい。
それだけが悩みだった。
そうして颯と暮らせない日々をもう13年暮らし、私はとうとう21歳になっていた。
叔父さんの家にはまだ居させてもらっていたので、アルバイトをしながら、大学へ。
もう母親にも颯にもまともにあっていなかったし、会う気も薄れていていた。
そんな時、アルバイト帰りにぼーっと歩いていると、信号無視してきた軽トラに衝突して私は呆気なく人生の終わりを迎えたの。」
人生の終わりを迎えた……?
亡くなったってこと……?
信じられない。自分が今話しているのはこの世には居ない人ってこと?
背筋が凍る。汗がひく感じがする。
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