第14話 憑依


「こんなこと考えたことない?


人は死んだらどうなるんだろう。


って。」



「その答えは死んでからわかった事なんだけど、人間の思う死後とさほど変わりは無かったのよ。


未練や憎しみがない者の魂はすぐに成仏して、そう出ないものは49日まで彷徨う。

ただ、49日を超えると一生成仏出来ないらしい。


私が亡くなったのは42日前の4月13日。



ということはあと7日で成仏しなくちゃいけない。


未練、と言われれば、やっぱり思い当たるのは颯の姉として過ごせなかったこと。



どうしたら未練を果たせるのか。



原因が弟なら、まず会いにいかなくちゃいけない。だから、この街に戻ってきた。


すると目の前にある男の人が今にも橋から飛び降りようとしていた。これが遼くんとの出会い。」



「「なにしてんの!?」


叫んだ。

でも叫んだ後に気づいた。


あぁ、無意味なんだ。私はもう死んでるから。

いくら大声を出したつもりでも、この人を助けることができないんだ。


急な無力感とこの人が死ぬところを見たくないという思いから、私の足はその場を去ろうとしていた。


その時だった。



「何で止めたの?死ねなかったじゃん。」


呼び止められて私は振り返った。

いまさっき飛び降りようとしていたあの人が、そこにはいた。


まさか、いや、見えているわけないか。


「どうして止めようとしたの。ねぇ、こっち向いてよ。」


やっぱり、私のことが……

いやでも…


「君だよ。君」


「もしかして、私のこと、見えてますか!?」


「え、当たり前じゃん。」


「本当に!?」


どうしたの、泣いてるよ?私。


なんで泣いてるのか分からない。

この人に私が見えているからと言ってメリットは何も無い。

なのに無性に縋りたくて仕方が無かった。


死にたいくらい悩んでいるのはこの人の方なのに。


泣いていた私を慰めるように彼は私に問いかけた。


「大丈夫ですか。話ききますよ。」


我慢してた思いを、この人なら全部受け止めてくれるような気がした。


だからその言葉に甘えて、私は今までの事を全てその人に話した。

彼は私の話を遮らず、最後までしっかりと聞いた後こう言った。


「そうですか。貴方は結局、成仏したいんですよね。でも実際、憑依出来ないと何も出来ない、と。」


「はい。 そうなんです。」


「…これで利害が一致した!よし、君は俺の人生を生きるんだ!」


彼は屈託のない笑みで私に提案した。


「え、は、はぁ?!」


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