第15話 あなたは本当に優しいのね
「「だから、俺は今君が見たようにああいう状況だ。
君は生きたい。俺は死にたい。
なら俺に憑依すればいいじゃないか。
ウィンウィンだろ?
松野遼として生きたらいい。
ちょうど、その颯ってやつとは同じ中学だし、同じ学年。何回か見かけたことあるし。」
確かにそうかもしれない。けど……
「やっぱりダメだよ。そんなこと。」
「いやでも他にもあるんだぜ?
君が憑依してくれたら、君は大学生だろうから、テストも100点だろ?!俺にとってはいいことしかない。」
「で、でも、その分の君の時間が失われる。君にもやりたいことがあるでしょ。」
「ないからこうしてるんじゃん。」
「…でも、憑依したらどうなるか分からないよ、寿命が縮むかもしれない。」
「いいよ。俺の代わりにどうか生きてくれ。」
こうして、私は松野遼という人物と契約を交わしたのだ。
それからは日中私は松野遼として生き、夜は憑依せずに矢倉桜としてさまよった。
ただ矢倉桜として颯に近づくのと、遼として接するのでは違った感覚だった。
颯には霊体の私も見えていたの。」
じゃあ私が会っていた遼くんは本物と契約を結んだ桜さんって事なのか。
「それで、成仏はできそうなんですか?」
さくらさんはまたため息を1つついた。
「それがねぇ。全然ダメなのよ。
49日まで時間は刻刻と近づいているのに、何一つそれに近づいている気がしない。
だから今必死に試行錯誤してるんだけど…」
「なにか、手伝えること、ありませんか?」
これだけの話、聞き流すだけだなんて、そんなこと出来ない。これで成仏出来なかったら私は一生後悔する。そんな気がした。
「じゃあ1つ頼み事していいかな?」
「はい!」
「成仏ってなったことないから分からないんだけどね、多分その瞬間に消えると思うんだ。
これは私の勘なんだけど、今の話を成仏する前に颯に話しても、未練は果たせない気が、する。
それで、多分成仏した私からはこの説明ができないと思うの。
いつその時が来るかも分からない。
だからね、もし成仏出来たら、今の話を颯にしてやって欲しい。あ、あと、もし何かあったらここを訪ねて。」
渡されたのはさっきのおじさんの家の住所が書いてある紙だった。
「ありがとうございます。
私なんかが上手く伝えられるか分かりません。でも気持ちは受け取りました。
未だに理解が追いついていない自分もいますが、できることは頑張ります」
できるだけのことはしたい。ただその一心だった。
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作者のひとりごと。
今日のひとりごとお話は、暗かったですね……。頑張って3話投稿しました笑笑
桜には幸せになって欲しい、ですね。
ではまた明日。
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