第2話 再会
携帯の着信音でふと目が覚めた。
いつの間にか寝ていたのだ。
画面は6時27分を示している。
周りはもう真っ暗だ。
ヤバい。
さすがにヤバイ。
単純計算すると、僕は5時間ここで寝ていたことになる。
さすがに笑えないレベルだ。
はやく帰ろう。
なんだか寒いし。
僕が立った瞬間、なつかしい顔が目に入った。
そう、僕の唯一の話し相手だった女の子
ーに似た人がいるのだ。
夢が正夢になった...っ!
なんとも言えない感動に包まれた。
相手も成長しているからか顔が若干違う。
話しかけるべきだろうか
……いや話しかけるしかないだろ。
何気に1番会いたかった人なんだし。
「久、久しぶり、」
一か八かで話しかけてみた。
相手は明らかに動揺していた。
「えっあぁ颯、颯くん??
覚えてくれてたんだ!久しぶり~」
あれ、名前なんて教えたっけ。
彼女はなぜか僕が想像してた以上に動揺していた。その動揺は僕が話しかけたからという訳でもなさそうで。
「どうしたの?なんかあった?」
「いや?特に何も無いよ。」
僕の勘違いか?でも……
「ほんとに?なんか困ったことあれば言って。」
「いや、それよりなんで君はこんな時間にここで寝ていたの?」
お、質問返しか。
特に理由はないんだが。
「いや、ちょっと寄り道しよーって思ってゆっくりしてたらいつの間にかこんな時間に……」
「風邪ひくよ?大丈夫なの?」
それはこっちの台詞だよ。こんな時間に女の人が河川敷に1人でなんて危なすぎる。
「いやそれより君こそなんでこんな時間にここにいるんだ?」
質問返しし返してやった。
「い、言いにくいんだけど、言っていい?」
「もちろん。」
「実はね?帰る所無くて。どうしよっかなーって。」
は……?
予想外の返答だ。
家はないのか……?どゆこと?
頭の中を整理してとりあえず最適解を出した。
「詳しいことは聞かないけど、訳ありってことだよね?」
「まぁ、そー言うことになるかなぁ。」
「と、とりあえず寒いし、家来る?」
っ!!言えた!
「いいの!?」
彼女のその笑顔はぼくの心臓に突き刺さった……。
やっぱり女の子の笑顔は世界を救うと言っても過言では無いな。
「えっええっと。なんなら今日うちに泊まってもらってもいいよ?」
くそ、何調子乗ってんだ。
思わず口を滑らせてしまった。
「いや、それはさすがに申し訳ないし……」
こりゃ引いてるな。こいつまじかみたいな顔してる。
「遠慮は大丈夫だよ。もしほんとに行くあてがないならっていう意味で……別に変な意味じゃないからね」
まぁーたテンパって口を滑らせてしまった。
もしや、これ逆に変な意味だったって暗示になるんじゃないか?
いや、正気になれ、颯。
ただ家に来てもらうだけ……だ。
家に来てもらうだ……け?
誘拐にはならないよな?
でも相手は見るからに年上っぽいし……大丈夫か?
そうしてぼくは、彼女と共に家まで帰ってきてしまった。
なんやかんやで家まで着いてしまったけど、やっぱり女子を家に入れるって緊張する。
彼女には、「じゃあ、ちょっと座っといて。」と言い、僕の部屋にいてもらっている。
そして、人生で初めて自分の部屋に他人(しかも女の子)を入れた僕は、緊張のあまり、彼女を放置してリビングでうろちょろしてしまっている最中だ。
特に何をする訳でもないけど。
勢いあまって冷蔵庫をあける。
そうだった!
母さんがいないと思って好物のアイスをめっちゃ買ってたんだった!
冷凍室はパピコでいっぱいだった。
いろいろ悩んだ末、僕はパピコを持って、部屋へと戻った。
僕の好物、パピコ。嫌がる女子は居ないはず。
「ごめん、待ったよね。寒くなかった?」
「ううん、寒かったけど、大丈夫だよ。」
『寒かったけど』か。
まあいい。
僕はパピコを半分に割り、無言で彼女に片方を渡した。
『ありがとう。』そう言われると思った。だが、彼女が次に発した言葉は予想外だった。
「颯ってアイス好きなの?」
ん?
唐突すぎるが、間違ってない。
なんなら大正解だ。
「そうだけど。」
何が言いたいんだ、君は。
「なるほどー。いやはじめにアイス持ってきた時に君ってかなり変わってるなーって思って。」
は、はぁ?
いや、何がだよ。
そういう顔をしていると、彼女は続けてこう言った。
「だってさ、寒いって言った人にアイスあげてんだよ?お腹空いてたし、めっちゃありがたいんだけど、変わってるなぁーって。あははははっ!」
彼女はただただ面白がっているだけだろうが、これがかなり僕の心を傷つけた。
まじか、こいつまさか敵だったのか。
なんでも人のことを笑って嘲って罵る典型的な陽キャ一軍なのかっ!
しかも!これは僕のアイスだ。
結構大事にしてたんだぞ!
このことを忘れるな!
まずまずなぁ、何回か会ったことあるくらいで、馴れ馴れしくしすぎなんだよ!
こういうタイプは気が合わないから正直嫌いだ。大嫌いだ。
言っとくけど、
「それ、僕のだから。」
あ。言ってしまった。ついつい思ったことが、口に出て……。
「あ、そうだったね。ごめんごめん。」
あははっと笑う彼女とは裏腹にに、僕は苛立ちを隠せなかった。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
作者のひとりごと。
おはようございます!
すみません、まだ恋愛展開がないので颯がすごくめんどくさい奴に見えると思います...
颯のことは嫌いになっても作品は嫌いにならないでください笑
それでは明日の投稿をお楽しみに。
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