第3話 変異型

結局、昨日は不穏な空気感になったからか、彼女は理由をつけて、家へ帰ってしまった。

また名前を聞き忘れた。

あれだけイライラしていても、夢にまで出てくるほど気になっていたのだ。

なんであんな態度取ってしまったんだろう。

彼女が帰ったあと、少し彼女へ感情的になりすぎたかな、と反省した。


それはともかく、今日は中二生活2日目。

僕は窓から葉桜を眺め、考える。

そわそろ誰かと仲良くなっておかなければ、クラスの輪から外れ、苦しくなってくる頃だろうか。

世の中の陽キャどもは行動が早いのだ。

とてつもなく。

たぶん、クラスの過半数がグループLINEをつくって、既に仲良くなりつつあるのだろう。

僕は、スマホは持っているが、あいにくLINEは入れてないし、グループラインにさそってくれるような友人も、認めたくはないが、いない。

その分、僕は『友達を作っておく』という点で不利なのだ。

しかし、一匹狼には、なりたくない。

今年こそは1人くらい友人が欲しい……

ということでとりあえず、隣のやつにでも、話しかけてみるか。

僕の自己紹介を読書しながら聞いてたやつ。

空気読めない系男子、松野遼(まつのりょう)。

オーラは僕と同じものを感じるのだか、妙に話しかけづらい。イケメンだからかな。

ま、初めは敬語でいくか。

「お、おはよう、ございます。矢倉颯です。一年間よろしくお願いします。」

一瞬、僕と奴の間に沈黙が続いた。

奴はぽかーんとした顔でこちらを見る。

なんかしでかしたか……?と不安になる。

一瞬の沈黙のあと、彼は

「やっほ~颯!!こちらこそよろ~話しかけてくれてありがと!」

とニコニコしながら僕に言う。


は…?いや待て。

昨日の雰囲気は!?

中二生活2日目にて、キャラを大きく、転換させるタイプのヤツなのか?!

変異型か!?

頭の中の衝撃と混乱とで頭の整理がつかなくて、僕の頭は今にもパンクしそうだ。

そして、出した結果が必死の愛想笑いからの

「これからよろしくね…」の一言。

ここで一旦会話は途切れた。


それからのこと、今日の僕は松野遼がどんな人間なのか分からなくて、一日中、彼のことをみていた。

短髪ver. 貞子?ってくらいの前髪。

後ろ髪はサラッサラで、マッシュ中のマッシュ。

昨日とは別人の明るさ。

一体何があったんだ?

昨日とは一変、怖いもの知らずっていうか、思ったことはいうタイプの人間にみえる。

他人との距離が近くて、世渡り上手な感じ。

なぜだ。なぜなのだ。

昨日はあんなに同類の香りがしていたのにっ!


その性格はもろにあらわれている。

昨日まで、一言も自分から口を開こうという素振りを見せなかった彼だが、キャラチェンした今日だけでもう、20人ほどの生徒と仲良くなった。


僕にはない能力だな、うらやましい。

何が彼を変えたんだ?

そう思いながら、僕は授業中伏せて眠る、彼の寝顔をみつめていた。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

「颯さ、俺のこと好きなの?」

終わりの会のあと、彼は僕に聞いてきた。

「へっ!?別に好きとかじゃないけど。何で?」

「だってずっと見てたじゃん、今日」

ば、ばれてたんだ。

「そんなつもりは無かったんだけど...」

「なんか気になることでもあるのか?聞いていいぞ?」

いや。聞きたいことは山ほどあるんだけど話すの怖いしな...

戸惑っていると最終下校のチャイムが鳴った。ナイス!助かったぁ...

「ごめんチャイムなったし先k」

帰るねって言おうとしたのだが...

「一緒に帰らねーか?!」

と被せて言われた。

「え、えぇっと。」

誘われてしまった。どうしよう。こんな陰キャと陽キャが話しながら帰ってたら周りが笑うんじゃないか?そしたら僕は陰キャのくせに調子乗ってるやつってレッテルはられるんじゃないか?それで一年中笑われ者になって...

「時間ないし一緒に帰ろ?!いいよね!?」

無理やりだけど、もういいや。一緒にかえろ。

「ま、まぁいいけど。」

...てなことで一緒に帰っている訳だけど。

遼、こやつ質問攻めしてくるんだが。

好きな物、兄弟の有無、推し、趣味、好きな異性のタイプ、好きなケーキの種類、好きな人などなど。

特に趣味が読書しかない僕には答えづらい質問ばかり。ノリが一軍女子なんだよな。

まぁ僕が質問する暇など微塵もなく...。

でも陽キャ(?)男子と仲良くなれるなら、いいか...?

「じゃあ、そろそろ...俺道こっちだからさ。」

あーあ。結局何も聞けなかった。

「分かった。じゃあね。」

聞きたいことがあり過ぎたからモヤモヤするけど。しょうがない。

遼は手を振り進んだ。

少しの後悔が心にこびりついていたが、まぁ無視しよう。

そう思って僕は彼と反対方向に振り返った。

その時、後ろから声がした。

「待って颯!」

ん?と振り返る。

「忘れてた。颯、俺に聞きたいことあるんだよね?何?」

あー。うん。あるんだけど...。

「ごめん。沢山あり過ぎるから明日学校で聞くや。」

「分かった!じゃまた明日学校で!」

「またな」

今度こそ2人は違う方向に進んだ。

また明日、か。

僕には無縁だと思っていた言葉が頭でループされる。僕の顔は少し微笑んでいた。

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

作者のひとりごと。

今日も読んで頂きありがとうございます。

作者は絶賛体調を崩しております笑

心の優しい方、♡や‪☆やコメント、フォローください!生き返ります。

では明日の投稿もお楽しみに。

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