第4話 一目惚れ

「おはよう!」

「おはよ。」

陽キャ男子、松野遼と友人になり、かれこれ1週間。

なんでも質問していいと言われたものの『なんで始業式初日と次の日であんな性格変わったんだ?』なんて踏み込んだ質問は聞けるわけなくて。

趣味とか好きな色とか当たり障りのないことを聞いていた。

正直誰かと仲良くなるなんて慣れてないから、今このチャンスを逃さないように僕は必死だった。


中2生活もあっという間に過ぎて、もう1週間が経ったある日、僕は昼食の前に、手を洗いに行った。遼と2人で。


水道の目の前の窓が微かに開いているからか、風を感じて清々しい。隣には友人までいる。

最高に青春じゃないか。

蛇口をひねって、少し手に染みる冷たい水でサッと手を洗う。

春風を感じ、リフレッシュ中の僕の目がふと止まった。

右に。


白くて透けそうなその手。

サラサラのショートヘア。

そのきめ細やかな髪が、かがんだ時にサラリと靡く様子。

そのすべてに僕は一瞬にして魅了された。


このとき、僕は人生初の“一目惚れ”というものを体験したのだ。


相手の名前は向埜朱識(むこうのあかり)。

友達(いや、恋人)になりたい。

強くそう思った。


何か話せる話題はないか…?

話しかけれるかも分からないのに、そんな疑問で頭が支配されていく。

自分の顔が赤らんでいるのも感じる。

一目惚れ。

それは遠い国の出来事だと思っていたのに……


僕は遼をも置き去りにして逃げるように男子トイレに駆け込んだ。


こういうとき、世の中の陽キャ男子は直ぐに話せるものなのだろうか。遼ならどうするのだろうか。

いや、陽キャも陰キャも同じ人間のはず……

なら僕にも何か行動できるはずだ……

思い出せ、思い出せ……

そうだ!

今日の3限の学活の班での軽い自己紹介のときに、彼女は読書が好きだと言っていた。僕も昔から読書が大好きだ。

同類じゃないか!

どんな本を読むのだろうか。

恋愛? 推理?sf?

どれでもいいけど、とにかくはやく話しかけてみたい。

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昼ごはんの時、遼は聞いてきた。

「さっきなんでお前男子トイレに駆け込んだんだ?」

「えぇっとま、まあ色々あるじゃん?」

「そういや向埜のこと見てたよな?...!

分かったぞ!一目惚れだ!ひ!と!め!ぼ!れ!」


「いや違うし。」

つい反射でそっけない態度をとってしまった。

間違ってないんだけど、そんな大声で言われると恥ずかしい。

「いや、絶対そうだろ?」

そんな僕はわかりやすいのか...?

頭の中が動揺と照れの嵐で戸惑う僕に構わず、彼は、どうだー図星だろー、と言いたげな顔をしている。

今までろくに友人がいなかったからか、男子にも恋バナというものが存在することに、少々驚いていた。

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それから昼休みに僕は早速、彼女に話しかけてみた。

これにはかなりの勇気と決意が必要だったのだが、誰も興味な無いだろうから割愛する。

ちなみに読書の話ができた。

どうやら、彼女は「葉桜の季節にもう一度。」という本がおすすめらしい。

作者は潮田香という作家。

人間描写がリアルで、感情移入できて、読み進めるのが楽しいと言っていた。


実はこの題名をどこかで聞いた覚えがあった。

多分家のどこかに……だから「もしかしたら、その本、家にあるかもしれない!」

と伝えると、彼女は弾けたような満面の笑みで「本当に!?もしあったらぜひ読んでみて!感想も聞かせてほしい‼︎」

と言ってくれた。


もう、天使にしかみえない。

可愛すぎて惚れる要素しかない。

え、ほかの男子にはこの魅力が、分からないのか?頭おかし((


いや、まだ話したばっかなのに、恋に溺れるなんて僕らしくない。


ただ、僕はこの時何故か向埜さんに、取り返しのつかないくらいの一目惚れしてしまった。

恥ずかしいので運命の赤い糸が僕を呼び寄せたとでも言っておこう。

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「昼休み、話しかけてたな。」

遼が聞いてきた。

う、うざい。なんで知ってるんだよ。

「だ、誰に?」

一応確認しておく。

「自分でもわかってるだろ?向埜朱織さん、だろ?」

「...」

「別に気になってなんか無いし、好きでも嫌いでもないし。」

「正直じゃないやつは嫌われるぞ。」

「…っ!」

「そういや朱織さんってさ...」

「なんなんだよ?気になるじゃん。」

「分かった。正直に認めたら教えてやる。協力もしよう。」

「...そうだよ!一目惚れだよ!何か悪いか!?」

「白状したな?よし、協力してやろう。」

「具体的には何を...?」

「颯、お前委員会入るつもりあるか?」

「まぁ、一応?図書委員とかなっときたいな、とは思ってるけど。内申に書けるし、本好きだし。」

「よし。俺が聞いてきてやるよ!いや、俺天才だわほんと。」

「何だよ?なに聞くの?」

「朱織さんに何委員入るかに決まってんだろ!?!!」

「い、いいの?」

「任せとけって。」

そう言って僕の背中をバンバン叩いた後、ドヤ顔で、早速朱織さんに聞きに行った。

嬉しくてたまらなかった。

友達ってこんないいものなのか?

それなら最高じゃないか。

こんな感じで、僕たちは、次第に打ち解けていったのだった。

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

作者のひとりごと。

おはようございます。月白です!

今日から恋愛要素入ってます。だんだん面白くなります。ぜひ最後まで読んでください!絶対後悔させません。


物語とは全く関係ないのですが明日高校の合格発表です。結果によったら投稿しないかもしれないです。その時は察してください。

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