第6話 ドッジボール&閑話 藍田の日常
僕と遼の間の委員会作戦により、僕は好意を持っている朱織さんとの距離が縮まり、さらに遼という友人までできた。
「お、おはよう‼︎あの本読み切ったよ!」
「ほんと!?この前はネタバレごめんねー、どうだった?……
やっぱりまだ緊張するけど、こんな感じで朱織さんとは毎日少しずつ話して距離を縮めれている気がする。
遼とも「お前らいい感じじゃん!」なんて言われながら仲良くやっていた。
中2は結構いいスタートを切れている。
恋に友情、まさに今の僕は、青春の醍醐味を体感できている。
ーと思っていた。
もしかしたら、僕はせっかくできた友達を失ってしまうかもしれない。
ーことの始まりは、今日、4限の体育。
僕ら2年3組で初めての体育の授業だった。
初回体育は、各クラス男女分かれて行われた。内容はドッジボール。
他クラスから、初回体育の授業内容を聞いていた僕と遼は、3限後の休み時間に、体育館へ行きながらこんな会話をしていた。
「颯ともし同じチームになれたら、一緒にどんどん当ててやろーぜ!」
「いや、ドッジは逃げる方がチームのためでしょ。当たったら元も子もないじゃん。」
「ま、そーだけど、逃げてばっかじゃ面白くねぇじゃん?当たったら、また外野から当てて戻ろーぜ?」
「えぇ、でも、、」
当たるのが怖い僕は、ひたすら拒否し続けた。
「分かったよ。じゃあ、僕が颯にボール渡す時だけ投げてみろよ!それなら多分狙われないだろ?」
「え。なんかそれは恥ずかしい。か弱い女子みたいじゃん。僕投げられ無いわけじゃないし。」
「じゃ、僕と颯がチーム離れたら、僕は颯しか狙わないからな!!」
得意げな顔で彼は宣戦布告してきた。
「いや、それとこれとは違うじゃん!」
そんなことを話していると、見事に僕と遼は別チームになってしまった。
開始の合図が鳴る。
ジャンプボールは遼チームの村田と僕のチームの藍田。
微かに村田の手が先に当たり、そのボールは遼の手へと渡った。
考えればここから悲劇は始まっていた。
さすがクラスのムードメーカー。
ジャンプボールから遼がボールを掴んだ瞬間、おおっという歓声が相手チームから湧いてきた。
感心する間もなく、遼からボールが飛んできた。狙いはもちろん僕。
うわっ。
何故か顔面狙いの遼のボールが、右目の横、視界を通りすぎるのを確認した。
まじでスレスレ。
だが、野生の本能?で避けれた。
しかし、安心できたのも、束の間だった。
僕が避けたことで、後ろにいたクラスメイトが当たってしまった。
これは、僕のせい、、、。
なんて思いが横切る。
いや、僕だけのせいではないけど、取ってみればよかった。
やっぱり逃げてばかりじゃ勝てないかぁ、、、
次からはなるべくボールを掴もう、そう決意したものの、遼が僕狙いで投げてきたボールは勢いがよく、なかなか怖くて取れない。
戦況は遼チームが攻め。僕のチームが守り。いや、完全に逃げ。
遼チームが人数的にかなり勝っている。
僕のチームは、僕を含めてあと7人。
そろそろ誰かを当てたいところなのだが。
そして、ついに遼のボールがとれるタイミングがきた。
彼の手が滑ってボールがいつもより高く上がる。
チャンスだと目を輝かす僕。
そしてボールを掴んだ瞬間、すかさず思い切り遼に向けて投げた。
いや本能的に投げていた。
気づいた頃にはすごい勢いのボールが当たっていた、遼に。
ボールは確かに当たったが、僕のチームから歓声が上がることは無かった。
逆に僕にクラス全員から痛い視線が向けられた。
何でかって?
僕の投げたボールが遼の顔に命中したからだ。場所が悪すぎた。
彼は唇の左側をおさえ、いってぇと呟き少し痛そうな顔をしている。
あっという間に僕の周りは誰もいなくなっていて、代わりに遼の周りに大丈夫か、とクラスメイト達が駆け寄り、彼の顔を見た。
「えっ、お前血出てるじゃん!」
誰かが言った。
僕はもう呆然としていた。
何が起こっていたかは分かっているのに、どう動いたらいいのかわからないのだ。
どうしよう。
遼に怪我をさせてしまった。
やばい、どうしよう。
と頭がとにかく混乱している。
血の気が引く。
結局僕はごめんの一言も言えなかった。
その後遼はこれくらい大丈夫大丈夫と笑っていたが、先生の指示で保健室へ行き、そのまま早退したそうだ。
早退したのも怪我のせいかもしれない、、、。いや絶対そうだ。
申し訳なさと心配と恐怖で胸が締め付けられそうだ。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
閑話 藍田の日常②
俺は心配だ。今すごく心配している。
そう。
あの3人の人間関係をだ。
今日の4時間目、体育でドッジボールをした。
珍しく颯が本気でドッジしてて感心してたのだが...
本気すぎて松野の顔面に直撃してしまった。
皆が松野の周りに集まり心配する中、俺は颯のことが心配だった。
呆然と立ち尽くし申し訳なさで埋め尽くされていく颯は見ていてとても心配だった。
しかも最近できた親友に怪我をさせた。
絶対傷つくはずだ。
落ち込むだろう。
勿論、話しかけて励ましてやりたいけどなんて話せば良いか思いつかない。
いや、励まさなきゃ。
いつもは松野と昼ごはんを食べていたが今日は流石に1人だった。松野は早退したからな...。
「ごめん、一緒に飯食べてもいーか?」
「ま、まあ、いいけど。」
「ありがと」
「...」
「...」
いや話さなきゃなのにいざ対面すると緊張する。
「そ、その。藍田が僕に話しかけに来てくれるなんて珍しいな。」
「ま、まぁな。」
「気遣って励ましに来てくれたのか?」
「まぁそんなとこだ。とりあえず!お前は悪くない。そんなに落ち込むなよ。」
「でも僕はあいつに怪我させたんだぞ?悪いに決まってる。もう話せないかもしれない。」
「おいおい。そんな簡単に友情はなくなんねーぞ?松野はそんな許してくれないやつじゃないだろ?優しい奴だ。」
「...そうだけど、でも。」
「な?明日正直に謝ればいい。お前がやることはそれだけだ。あとそんな気負う必要は無い。周りは案外何とも思ってないぞ?」
「そうかな...」
「うんお前なら大丈夫だ。じゃあな」
言い終えた俺は席を立って戻ろうとした。
「あ、ありがとう。」
「ま、なんかあったら俺に話してこい。」
カッコつけすぎたな。今日は。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
作者のひとりごと。
今日も読んで頂きありがとうございます!
作者が言うのも変なんですが、藍田めっちゃいい奴じゃないですか?!この物語で一番好きな奴です。またちょくちょく出すので読んでくださいね。
あと、作者第1志望校受かりました〜!
4月から晴れて高校生です。
これからも頑張りますので応援よろしくお願いします!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます