第20話 後悔
楽しかったなぁ。
僕は桜と別れたあと、今日の出来事を振り返っていた。
初めは2人で買い物だなんて、と否定的だったが、案外良かった。
だって退院後急に来て、手を繋いで走り出したんだぞ。
周りからみたら青春真っ盛りのカップルに見えるだろう。
信じられないくらい、早かった。
楽しいことをする時に時間が短く感じることをこれほど実感した日は無い。
ちなみに、今週は遼と朱織さんと3人で遊ぶ予定だ。
今度は朱織さんがいる。もっと楽しみだ。
最近ほんとに充実してるなぁ。
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今日も少し高いテンションで学校へと向かう。
そして教室に入り、おはようと言う。
もちろん遼に。
「……」
え?
無視された。
なんだろう。この胸が苦しい感じ。
よそよそしい。
ドッキリかなんかか?
それとも気に食わないことしたかな。僕。
いや、聞こえてないだけかもしれない。
もう1回言ってみよう。
「遼、おはよう!!」
思い切り言った。
でも、やっぱり同じだった。
なんで。
今日は一旦話しかけないでおこう。
それから、ぼくと遼と朱織さんが今までみたいに仲良く話すことは無かった。
やっぱりドッキリなんかじゃなくて、避けてる。
そんなの鈍感な僕にだって分かった。
朱織さんは今まで通りの態度で接している、つもりだろう。
でも分かる、何か隠してる。
どうしてだろう。
そうして2日経った。
「おはよう。」
めげずに話しかけるけど、いっこうに返してくれない。
僕以外に対しても遼はこんな態度だった。
あんなにクラスからの信頼があったのに、一瞬で遼の周りからは人が居なくなった。
まるで、始業式のときみたいに。
それでも変わらず僕は挨拶し続けたんだ。
あんなに友達思いで優し買ったやつが僕を無視するなんて信じられなかった。
いや信じたくなかった。
でももう。我慢の限界だ。
「なんで何も答えてくれないんだよ!?なぁ、聞いてんだろ?遼!」
僕の声が響き渡る。
そしてクラスの視線が集まる。
でもそんなのどうだっていい。
気になるのは遼だ。
「……」
俯いたままだ。
「答えてくれよ……」
「…り…じゃない。」
何か呟いた。
でも聞き取れない。
「お前が求めた遼はもう居ないんだ!
俺にもう関わらないでくれ。」
さっきの100倍くらいの声が聞こえた。
は?意味が分からない。
お前が求めた遼?どういうこと?
頭が混乱している。
でもひとつだけ分かった。
あいつはもう僕のことを友達だなんて思ってない。
知人、いや他人以下だ。
ところで朱織さんは何をしてるんだ?
いつも一緒に話していた2人がそんな状況なのに何も言ってくれないのか。
いつもの好意が怒りに変わる感じがした。
あぁもう。駄目なんだ。
何かが僕らの関係を壊した。
その瞬間、二度とあの3人の幸せは戻らないと悟った。
だから僕は無言でその場を去った。
その後、藍田が僕に話しかけてきた。
「大丈夫か?」
さっきのことだろう。
「大丈夫……じゃ、ないかも。」
それから教室では話しづらいからと言って、男子トイレに移動した。
「まず、怪我は大丈夫だったのか?」
「うん。ちょっとズキズキするくらいだから、大丈夫。」
「問題は、やっぱり遼とのことか……」
「うん。」
「喧嘩じゃないのか?」
「それが。本当に何の心当たりも無いんだ。」
「颯が入院してるあいだ、アイツは毎日病院に行ってたもんな。」
「そうなんだ。だから、分からない。退院前に
直近で会ったときは何も変わり無かったんだよ。」
「じゃあ、原因は颯じゃないのかもな。」
「え?」
「遼自身の問題ってこと。颯が嫌いになってあんなこと言ったんじゃなくて、彼自身、何か苦しんでることがあるんじゃないかな。」
「じゃあ、相談してくれればいいのに。」
「遼にも色々あるんだろ。とりあえず今はそっとしておいてやれ。」
「う、ん。」
「颯の友達は朱織さんや、遼だけじゃない。独りだと思い込まずに今まで通りいろよ?少なからず俺はお前のこと、友達だって思ってる。」
「ありがとう。」
そう言って僕らはクラスに戻った。
結局今日も一人で移動教室に行き、一人で帰る。
寂しいけど、ココ最近毎日そうだから、もう慣れてきてしまった。
そうして今日も一日を終えようとしていた、ときだった。
担任が元気の無い様子でクラスに入ってきたのだ。
なんだか嫌な感じがした。
「今日の終わりの会はありません。その代わりに皆に伝えなくてはいけないことがあります。」
ザワザワとする。
そして遼が1人、ガタッと音を立てて前に出る。
「松野、じゃあ言えるか?」
「……」
「転校します。今日で皆さんとは最後です。ありがとうございました。」
彼は突然そんなことを言い出した。
そしてそのまま教室を後にした。
クラスメイトたちは皆呆然としていて。
理解できない様子だった。
もちろん僕もそうで。
転校?
聞いてない。そんなの。
なんで。なんで何も言ってくれないの?
ちょっと待ってよ。
「僕は何も聞いてない!」
廊下へ飛び出して、叫んだ。
彼は立ち止まり、少し振り向きながら
「お前に話すことは何も無い!もう、放っといてくれ!」
と言った。
「放っとけるわけないだろ?!僕は、君の親ゆ……」
親友じゃないか!と言いたかった。
でもそれは僕だけが抱いていた感情で、実際は彼にとって僕は親友でもなんでもないのかもしれない。
「もうそれ以上言わないでくれ!こっちが辛くなるだろう?」
泣きそうな声で彼が言う。
そしてポケットから手紙を出した。
そこには「颯へ」と書かれている。
「読んで。じゃあな。」
「えっ、どういう……」
「生きろよ。」
そういって彼は走り去った。
もう、追いかけても無駄だと感じてしまった。
僕はただ、誰もいない廊下を見つめるしかないのだった。
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作者のひとりごと。
お待たせしました!
実は次の物語の下書きをしていて投稿が遅くなってしまいました💦
ちなみにあと2話で終わりです。
ハッピーエンドか、バッドエンドか。
最後まで見て確認してくださいね。
ゴールデンウィーク最終日に最終話投稿予定です!お楽しみに!
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