EP13.「現実と空想の境界」
資料館の地下通路を歩くこと10分、位置情報的には神緋田湖の湖底に当たる場所に来た。通路上にある看板には、"水中観測室"との表記のあるガラス張りの空間に出た。
ガラスの向こう側には、かつての炭鉱時代の建物の残骸がそのまま残っており、水面からの光がわずかに照らしているような状態だった。
「えー、それでは湖底部の状態を実際に見ながら説明していきたいと思います。なお、生態環境保護の関係でこれ以上明るく出来ないので、多少くらい分はARゴーグルでの補正を行いますので、お持ちの方は装着しておいてください」
そう言うと地質学者の人はARゴーグル上にポインタを仮定表現した上で解説を始める。
「今私たちがいるのは、上部層、湖底表面が見える場所です。目の前にみえる建物の残骸が、かつての炭鉱の現場事務所の廃屋です。その右側にある建物が休憩宿舎ですね。現在は魚たちのすみかになっているようですので、調査が終了した現在でも解体することもなくそのまま残されております」
そう言うと、壁の小さな扉を開けて何かを操作している。
「では、さらに奥に降りていきましょう。かつての炭鉱時代の坑道の地層断面を見ていきましょう」
入ってきた通路の隣の壁が動き、下へと続く階段が現れる。
───1───
12月3日 13時00分 月川市霜峠国立公園内
神緋田湖畔 ピクニックエリア
一通りの資料館での校外学習が終わり、昼食と帰りの貸切電車が来るまでの間、しばらくの休憩時間となった。
<[!]月川ライトレール線、遅延>
スマホに帰りの電車が送れていることが表示される。どうやら車両点検で一時間弱送れているらしい。貸切電車の到着も遅れていることから、到着までの間、予定外の自由時間となった。
RPFにログインした上で専用装備を装着して周辺の未回収のアイテムを回収しつつ、適当にわいているモンスターを撃破していく。
『サンダーバレット』
何時ものように間合いをとった上でスポーンしている最後のモンスター、鳥形の"ガーデンバード"をを狙い撃ちするが、着弾する瞬間に飛び立ってしまい、弾丸は命中することもなく、地面に着弾してしまう。
その瞬間、落雷が着弾した場所に発生した。
「全員伏せろ!」
引率の先生が声を上げ、周囲にいた人も含め一斉に地面に伏せる。
だが、空を見渡しても冬の晴れ空で雲一つも無い。
そもそもこの落雷は本当に自然に発生したものであろうか・・・。
スマホを操作して雷レーダーを開く。しかし落雷は検出されていないことになっている。まさか、さっきのサンダーバレットの追加効果である着雷麻痺の可能性が、ないか。
でも第三街区公園のマントの一件もそうだし、実際問題としてゲームの中での出来事が現実でも発生するとは思えない。
───2───
14時30分 遅9104レ 月川ライトレール
団体貸切電車内
登山しての植物観察を行っているグループと合流した上で貸切電車で学校まで戻る。
座席に限りがあるため、大半の生徒は立って乗車していた。僕自身も座るほどには疲れていないので目的地まで開くことのない扉に寄りかかりつつネット掲示板を開く。
211,友達と共にユキミマウウテンに来ているんだが、モンスターの攻撃で左腕にかすり傷を追ったんだが、今までこんなこと無かったんだが。
216.<<211 それはお前が変な動きしただけだゾ
220.<<211 俺も神成ビルで右足霜焼けした。相手はスノーデビルだったけど。
230.<<211 <<220 嘘松ゲーム無いの攻撃で怪我するわけないだろ
掲示板でも似たような報告が上がっている。やっぱり僕の勘違いでは無かったのか・・・。ギルドフォーラムを見てみるが、みんなログインしていないみたいで特に反応は上がっていなかった。
まさか本当にゲーム内での出来事が実際にも反映されるのか・・・。
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