EP3.5「ミズホモール3-C ノームコアスライム(その2)」

side:ミナセ


互いに流れ弾に当たらないように距離を取り、自分自身の分身の戦うような形となった。まるでか鏡の用に全く同じ行動を取るので、自分が攻撃を仕掛ければ向こうも同じ形を出してくるし、こちらが攻撃を避けようとすると、向こうも同じように避けてしまうので、一向にダメージを与える事ができない。

ユイノであれば恐らくは銃撃戦に持ち込んで、向こう側の弾切れの隙を狙って攻撃を仕掛けるのであろうが、剣術同士だと刃毀れか間合いの内側に入らないと隙を狙う事すらできない。攻撃を仕掛けては避けてを繰り返しす事、15分ほど、相手の動きを観察していると、ある事に気づく。鏡だからといえば当たり前だが、こちらの行動から数フレーム程度であるが行動が遅れている。剣術等接近戦であればそれは誤差に過ぎないが、銃撃戦など、コンマ秒での判断が被弾判定に影響するであろう(銃弾が小さいから当たり判定ギリギリで交わすとか言っていた)が、当たり判定レベルでドット単位を意識するのは無理がある。が、フレーム単位での攻撃を行う事ならボクにでもできる。


『水龍剣 冬風深水オホーツクマリン

冬の深海の奥底のように、冷たくすぐにでも凍てつきそうな水を纏い、ノームコアスライムに襲い掛かる。向こうも同じようにスキル発動を使用した瞬間、剣に纏わせた水が一気に凍り付き、スキル発動に失敗する。次なる一手の為にスキル詠唱を行っているその、僅かな隙をつき、剣を薙ぎ払いスライム自身を右肩から左足の付け根あたりまでいい気に切り落とす。

「・・・・。刃応えがないな」

まるで、虚空を切っているかのような感覚。何にも当たらず、ただ剣を素振りしているだけの感じがする。スライムをスキル発動状態で斬ったことがないので、何とも言えないのであるが、恐らくは空振り。その瞬間、保険として用意しておいた"みがわり保険"が発動する。遅れて麻痺のペナルティ表示が入る。

「外した?違うボクのスキルに麻痺追加の攻撃は無い・・・」

通知ウィンドから目を離すと、そこにはユイノがいた。違う、ユイノは近距離戦なら麻痺じゃなくて絶対に恐怖の追加効果がついた、シャドウブロウを使用から、この攻撃は、確かマスターのスキル・・・・。


「つまりは、見た目によらずにボク達のスキルが使えると言う事か。面白い」

赤い予告線を紙一重で交わした所にサンダーバレットが飛んでくる。しかし、ノームスライムの手元にはそれを発射したであろう、銃具サンダーバレットの存在が見えない。恐らく専用攻撃アイテムを所持する必要がないのであろう。となると、今まで使っていた、"相手の持っている武器から攻撃を予想"することも出来ないと言うわけか。確かに難易度不明である事にも納得がいく。

それであれば、今までに使ったことがない初めての戦法を使うしかないか。


『流水演舞』

クロポンのスキル"リーフカッター"受け流しつつ、死角に入り設置罠"アリジゴク"と"ヒョウケツシバリ"を仕掛けると、同時に流れ弾が背中を掠る。わずかにダメージ判定が入るが、回復することもなく、次なる一手を打つ。

『水龍剣 滝上がり演舞』

しゃがんだ状態からスキルを発動して背後を取ろうとしたノームコアスライムを弾き飛ばし、その隙に次のスキルの詠唱を始める。

『水龍剣 氷塊──」


その瞬間、ボイスチャットからグッタの悲鳴らしきものが聞こえる。

<おい、こっちのを倒したかと思ったら復活したぞ、どうなってる?>

設置した、アリジゴクで足止めしている間に、ノームコアスライムが何やらスキルの詠唱をしているのが見える。

もしかして、あいつ味方陣営他のノームコアスライムの回復までできるのか?


であれば、全員で同時に倒す必要があるのか。

<クロポン、一度作戦を見直したい>

ボイスチャットでギルドマスターを呼び出す。しかし帰ってきた答えは絶望的なものであった。

<すまない、油断していた>

そのわずかな声は、かつて個人PVP戦トーナメントで優勝を果たしたこともある、実力者としては、余りにも現実からかけ離れた答えだった。



※用語補足


フレーム単位:ゲーム内時間の事。通信速度にもよるが、基本的にサーバー側とプレイヤー側には予め処理遅れ時間(通常状態での端末で一番通信速度が遅い端末に合わせられる)が加味されて通信されるので通常プレイ時には、プレイヤー間での処理時間に変わりはない。攻撃判定の位置計算には、各種センサーなどで算出された当たり判定位置に対して攻撃判定が被弾したのかをフレーム時間単位で計算を行う。

ちなみに1秒間に通常空間上では30フレーム、専用施設内では60フレームでで処理される。


当たり判定:被弾判定の事、RPFでは仮想攻撃判定に腰回りから首元までの間と、両手の専用グローブの計三か所に存在する。一部のスキルなどで移動速度上昇、空中移動などがあるが、これは当たり判定の計算位置がずれることを意味しているので、必ずしともプレイヤーの身体にあたったからと攻撃判定があるわけではない。

なお、表示のみのモンスターは当たり判定=表示位置なので必ず本体に当てれば攻撃判定がでる。(攻撃無効範囲が存在するモンスターもいる)



ドット単位:描画単位の事。RPFの前身 RealFantasyStoryでは 3Dアクションゲームでありながらも、内部処理上は3Dモデル上で非常に細かな描画ドットが用いられる場合があり(大抵は3Dモデルでは表現できない些細な部分)、その描画に用いられるほどの、非常に小さなスペースの事をさす。ちなみに、9ドット以内で攻撃回避ができた場合は、"弾避けの達人"のトロフィーが手に入った。(副賞の弾避けの加護目当てに挑戦したプレイヤーは多数いたが実際に入手できたのは非常に少ない廃人プレイヤーのみ)

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