EP14.「Re:ニュー神成ビル」(前編)

以前、不審火が発生した第三街区公園。

現在でも園内の全域がRPFのプレイエリアに指定されており、運動がてらプレイしている人間が一日中いる場所。


今回の異変で、実在する物体への被害は確認されてはいないものの、スキルの追加効果である麻痺や霜焼け等といった症例がスキル発動と連動して確認されていた。

また、専用ARゴーグルを装着していない人物でも戦闘風景やスキルモーション等が目撃されるなどの異常が報告されていた。

サービス提供元である月川ゲームクリエーションでは、そんなことは有り得ないとの見解で、あくまでも、全て目撃している人の勘違いであるとの見解であった。


しかしながら、僕のスキル効果である落雷麻痺も実際に雲一つ無い快晴にも関わらず落雷が発生すると言う異常が発生していた。

掲示板においても、様々な憶測や目撃例、さらには掲示板の民が実際にスキルモーションによって現実の木片を切り刻んだという報告例もあった。



と、掲示板や動画サイトに上げられている事象例から推測してみると、何も変化も無くただRPFをプレイしているプレイヤーと、RPF内での現象を現実にも反映することが出来るプレイヤーの二種類が居ることが分かった。トーナメント戦には参加しないエンジョイ勢でも現実に反映させるプレイヤーがいる一方、毎回トーナメント戦で上位入賞しているプレイヤーでも異変が発生していない人物もいる等、事象に対しての共通点が把握できなかった。


ミナセを誘って色々調べようと思ったところ、生憎今日はバイトらしく一人で色々試してみることにした。



下校後、例の不審火以降久々となるニュー神成ビルダンジョンへとやってきた。レンタル備品でモデルガンを装備して二週目の攻略を行う。といってもフルで攻略する時間は無いので、ミナセの力をフルで借りた七階の再攻略を行うことにした。





───1───

12月3日 17:00 月川市

ニュー神成ビルダンジョン

エレベーターを降りて、装備を整えた後、扉を開けて中へと侵入する。最初の広間を抜けてすぐに姿勢を低くすると同時に安全装置を解除してスキルを発動する。


所見殺しに近い天井落し(正確には天井の一部が落ちてきて垂直に近い状態になる)を交わしつつ、奥にいるモンスターに対して攻撃を仕掛ける。

『カントスパーク』


敵の月壁の攻撃を避けつつ急所判定のある胸元の魔力コアを破壊し、部位破壊ダメージを与え、少しだけの怯みの時間を作りだし、これを利用して間合いを詰める。

『スピードスター』

後方に魔法弾を発射する反動で敵に密着、その間に弾倉を一段回してして、引き金をもう一度引き敵を撃破する。


「でも今までは加速系スキルを使用すると敵の方から距離を詰めてきたけど、今回は風を切る感覚があったな。まさか実際に加速しているのか?だとしたら色々とやりやすい」


加速した勢いのまま通路を突き進み突き当たりで右に曲がり、もう一度弾倉を回す。

『サンダースパーク』

大部屋に入ると当時に散弾スキルを発動して、部屋の中にいる敵モンスター全体に麻痺効果を付与した攻撃を仕掛ける。



「風の思うがままに、我が迅雷ありき『サンダーストーム』」

スキルで竜巻を起こしてその中に散弾を撃ち込み風で舞い上がった魔法弾を部屋中にばらまく。


[システム:プレイヤーレベルが上がりました]

[Lv:87→Lv:88 SP+23]


どうやらレベルアップしたらしい。だがステータスポイントの割り振りは攻略後に後回しにして次の部屋へと進む。



「ここまでは一人でもどうにでもなる。問題はここからだな」


[システム:特殊条件規定 飛び攻撃減衰軽減計算無効]

ダンジョン最深部に近づくと希に出てくるダンジョン特殊条件。ここの場合は非接触攻撃飛び攻撃の減衰軽減(本来は重力・自転・空力抵抗等の攻撃減衰をプレイヤー自身・攻撃用装備のステータスとスキル本来の威力を直接攻撃した場合と比べて極端な威力軽減を防ぐ為の補助)を無効化、つまりは、物理演算に基づいたダメージ計算として処理されるために、スキル特攻をメインにしている、僕の戦法─基本は間合いをとって必ず場の優位な場所から攻撃を仕掛ける─が最も影響を食らってしまう。ミナセと一緒の時は、後方支援に徹して攻略していたけど、今回は一人で攻略しなければならない。

中遠距離重視の弾丸スキルを近距離向けの弾丸スキルへ変更。


「後は三ブロックか」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る