第2節「現実と空想は隣り合わせ」

EP11.「歪みの始まり」

 12月3日 月川市霜峠国立公園内

      神緋田湖資料館


校外学習の一環で、かつて月川の地に存在した炭鉱と、その終わりを告げることとなった三日月流星群に関する資料が展示されていた。


が、今回の目的は歴史の授業として、ではなく流星群が落下したもの──隕石の残骸から発見された異文明の遺失物ロストアイテムとして保管されている正二十面体の物体を数学的に研究する為に来ていた。



「まるでリンフォン、そのものだな」

実物をみてそう呟く。白一色で味気のない物体ではあるが、何かを訴えかけてくるような感覚がする。



「これ、手にとってもいいですか?」

学術員の人に念のために確認をとる。引率の先生と少しの会話ののち、学術員は奥の部屋へと入っていき、何やら透明の袋らしきモノを持って出てきた。


「一応消毒はしていますし、汚染物質のモニタリングも行っていはいますが、何があるかはわからないので念の為に手袋を着用したうえであれば触っても大丈夫です」

そう学術員の人は言うと、透明のビニール手袋を両手分手渡してくれた。


「僕自身、この正二十面体の物体、僕たちでは資料品番号、666って呼んでいますけど、触ると表面が動くというだけで、明らかに人工的に彫られたであろう直線的な線が表面全域にありますが、これが何を意味しているのかも、そもそも単なる偶然か、それとも誰かが意図して作成したのかもわかりません。ですが内部が異なる素材で作成された断層構造であることから、地球外の惑星の欠片や、地球に落下してくる際に何かしらの理由で融合したのかもしれませんが、現在の我々の持つ化学力をもってしてもこの物質の正体は分かりません」


そう学術員の人は説明すると保管されている透明なガラスケースを開けて中に走っていた物品を手の上にのせてくれた。



「見た目に反して重いでしょ?表面は錆び取りの加工はしているけど、それ以外は手付かず。あっちこっちの大学やら学会でも調査をしたけど、落下の際に偶然発生した隕石の欠片であるとしての結論付けられています。平石さんでしたっけ、持ってみていかがでしょうか?現代化学では証明できない、未知の物質に触れた感想は」



確かにずっしりとくる重さではあるが、表面を様々な角度から見渡す。そして手袋越しに触ってみる。各面に僅かに異なる感触、まるでルービックキューブを触っているようだ。表面をなでるようにずらす。面が少しずれ、中から何かがカチャと動く音がする。


「成程、これの正体がリンフォンであれば・・・」

観察用に持ってきた用紙の裏に現在の面の状態をメモしたうえで解読のための計算式を書き出す。

一面が10個のパーツ、それが20面で現在の状態を考慮すると、必要なのは2016手か。


右手で触れている面から一気にそろえ始める。



「平石さん・・・一体何をしているですか?」

一連の様子を見ていた他の生徒から戸惑いの声が上がる。

が、何も答える事もなく、黙々と合わせて行く。




五分弱で後の一つの面という所でカチリと面が計算通りに動かなくなる。

「?おかしい、全ては揃えていないはず。 違う、後の一つは21種類っ目、押し込んでみるか」



一つだけ違う最後の面を指で軽く押し込む。

ガチャっとの音と共に手に持っていた物体が一気に軽くなる。と言うか浮き始める。



他の面がガチャガチャと音を立てて沈んで表面がどんどん小さくなる。





「違う、まずい、全員伏せろ!」

学術員の人が異変に気付きすぐ様に叫ぶ。

その声を聴き、部屋にいた全員が机の下に隠れると同時に部屋全体が真っ白く明るくなる。



遅れて何かが爆発して壊れる音がる。



ナニか壊れてはいけない、言葉に表せないとても大事なモノが。

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