EP15.「魔道回生」

クリアしないといけないフロアギミックは後一つ。マトリョーシカの様なモンスター攻略を残すのみ。持ってきたお茶を軽く口に含み今度こその休息をとる。

「現在時刻が19時過ぎ・・・この後の用事を考えると、残り攻略可能時間は30分ってところか」

軽く体を休めた後、装備の再点検を始める。スキルスロット、近接戦向け変更よし、残り弾薬数、異常なし。HP、MP回復、よし、体力的な問題、確認できず。端末充電状況、問題なし。



「攻略再開」



僕は最後の部屋の扉を開ける。しかし、そこに居たのはかつてのマトリョーシカとは異なり、やじろべえの様に左右に腕を伸ばしてユラユラとしているモンスターであった。敵の観測をしようと少し気を緩めた瞬間、予告線も無くいきなりビームが襲ってくる。


不意打ち・・・違う、今のは目標哨戒用レーザーポインターか。と言うことはエグいのが来るな。


と思ったのもつかの間短い予告線の後、星の形をした弾幕が襲いかかってくる。紙一重で交わすと同時に反撃を始める。

『サンダースパーク』


しかし、威力減衰のせいかあまり効いていない様子である。次の攻撃が始まる前に前へと進み間合いを詰めていく。



{□▽#31!B○□・&69□▽▽!}

敵モンスターが何かを言っているようであるが全くもって言葉として理解できない。いや動物型モンスターの鳴き声と似たようなモノであろう。しかし、それと同時に魔方陣が部屋全体に広がる。



「前回はこんなに盛大にやってくれたら楽しかったのにな!」

ミナセならきっと笑いながらスキップで避けそうな部屋全体攻撃を右へ左へ受け身を流しながら交わす。別にアマノジャウクカウンターを使ってもいいけど、この状態では乱反射して再びこっちの方に攻撃が帰ってきても困るし。



攻撃がやむとすぐに反撃のために何発が打ち込むがやはり効いている様子は無い。仕方が無い。サンダーバレットが効果が無いのであれば、武器を変えるしか無い。

「ん?違うな、ダメージが通っていないのは、減衰だけではなく、土属性なのか、こいつ」



光属性の近接用武器、レーザースティックへと持ち変えながら、攻撃を交わす。次の攻撃が飛んでくる前に、一つ悪あがきをしてみる。インベントリーから一つのアイテムを取り出す。

「さてと、花のように舞い上がれ『カミマイツル』」


手のひらから折り鶴の様な小さな光を何個か羽ばたかせて部屋のあっちこっちに配置する。次の弾幕を弾き飛ばし間合いを詰める。

『エイトスラッシュ』


数少ない剣用のスキルを発動して斬りかかるが、軽く当たった程度ですぐにはじき返される。すぐさまに次の攻撃を始める。が、敵側の攻撃も変わってくる。足下が一本足のように尖っているからある程度予想はしていたが、腕を振り回すかのようにぐるぐると高速回転を始める。少し距離をとってタイミングを伺おうとした瞬間、弾幕が高速回転しながら飛んでくる。



「おっかねぇな、ネズミ花火じゃねんだからもう少し華やかに出来無いかねぇ」

品性の欠片もない弾幕をスライディングしながら安置となりそうな部屋の片隅まで後退する。


「やはり近接戦はリスクが高すぎる、ここはスナイパーらしく影から仕留めるに限る」

定位置についたカミマイツルを操作して、レーザーによる鳥籠とりかごを作成、敵の位置を固定しつつダメージを継続的に与える。



「これ、もしかしてダメージを継続して回復・・・違うな」

だとしても初期設定値から大分超過しているはず・・・。レイドボスじゃ無い限りステータス上限が無いと、攻略不可能になるからゲームとして成立しなくなる。


いくら高難易度のボス敵だとしても上限無しは有り得ない。であれば、それに近い何かしらのスキルがあるはず・・・。


「鑑定スキルが無い以上はwikiに頼るしか無いけど、多分ここまで粘る奴なんてそうそういないよな」


どうする?装備を調えるために一度撤退するか?いやそれは情けないな、今ある手札で仕えそうなモノ。そういえば、スキルカードリッジって5分耐久すれば取得できるんだっけか。タブレットを操作してスキルカードリッジを確認する。そこには一つの新しいスキルが格納されていた。



[スキル:魔道回生

説 明:フィールド内に展開されたMPの15%を回収

    回収したMPは自身の回復に使用できる

効 果:使用開始後一分間発動、終了後は使用済カードを生成]



なるほど、そう言うからくりなのか、であればダメージ回復が出来ないほどの長大ダメージを一気に与えるのみ。その一つ前のスキルカードをタップして使用選択する。

『スターレインシュート』


上空から星の形をした弾幕が降ってきたかと思ったのもつかの間、敵モンスターに触れた瞬間一気に爆発し始め、視界が白一色になる。



巻き込まれる──と思ったのは音が遅れて聞こえたときであった。

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