第60話 楽しくてアブない忘年会

「また私なの……?」


「当然!!なんてったって劇の主役だし!生徒会長様だし!氷華だし!!!」


「ほら分かったら早くしろー」


「はいはい……」



マイクを持たされ、挨拶を任される。



「えー……本日はお集まりいただきありがとうござ」


「かんぱーーーい!」


「ちょっと!!!」


なんとかそれっぽいことを言おうとしたら恵によって遮られ、そのままなし崩し的にいつもの皆での忘年会がカラオケで始まるのだった。





「今年は色々あったねー」


「そだなー」


「誰から歌います?」


「西条弟から歌うといい。俺は歌わん」


「そんなつれないこと言わないでよ昴くん…氷華ちゃんもなんか言ってやって」


「んー…そうだアレ!シキのオープニング!ふたりで歌おうよ昴!」


「絶対に嫌だ!!!」



12月23日金曜日


選挙も終わり、無事に3人とも生徒会の役職に就任し、昴も会計として生徒会に加入。

色々あって先延ばしになっていた文化祭の打ち上げと同時に生徒会就任祝い、そしてクリスマス会を開くことになった。




「氷華~デュエットしよ~」


「いいよーなに歌うのー?」


「これ!!」


「………失恋ソングだね」


「違う!失恋した女の子を慰める曲だよ!!」


「おい…」


「あ、生徒会じゃない人は料理注文してもらっていいですか?」


「しばくぞテメエ!!」


「やったら知らないよ?」


「ぐぬぬ……」


「あの龍牙がww女の子にwww」


「笑いすぎだぞ虎ァ!!」


「あの!俺の歌聞いてます!?」


「心配するなちゃんと聞いている」



会の流れとしてはとりあえずはカラオケを楽しんでから色んな話をする予定。

なのでしばらくは飲んで食べて歌ってのどんちゃん騒ぎをしたのだった。



「ほんっっっとに色々あったね……まぁ主に氷華だけど」


「そうかな?」


「覚えてますよ俺!体育祭のチア!!マッッッジでカッコよくて!!」


「まさか連続で踊り出すなんて思ってもみなかったよ」


「いや…あはは……」


「そういやこの動画って結局なんだったんだ?」


『ずっっと勉強してるし!絵だってすごく上手だし!……かっこいいし!確かにちょっと変だけど優しいし!』



「ちょっ!?」

「おい!?」


「え、なにそれ……え?告白?東坂に?」


「いやこれは……その……」

「話せば長くなるのだが………」






「てことは一番乗りは東坂だったんだ」


「昴くんって意外と大胆なんだね」


「違う……違わないが………」


「ついでに……ほれ」


龍牙がそういって見せびらかしたのは私のコスプレ姿。


「え……かわい………ってまさかこれ!!」


「……そうだ。あの時の取り引きの目的だ」


「取り引き?」


「言っただろ?とある筋から情報を得て衣装を用意していたと」


「恵………勝手に私の個人情報を……」


「なななななんのことかなーーーー?」


「急に姉ちゃんの懐が厚くなってちゃんとした手錠とか買ってたのもその頃だったよね……氷華さん。コイツが犯人です」


「違いますぅ!!!バイトですぅ!!!」


「てかまてなんだ手錠ってオイ」


「余罪がたっぷりありそうだね恵ちゃん?」


「恵、素直に白状しよっか」


「いやぁ……あの頃は若くてぇ……」


その後、恵は私と龍牙と景虎にお説教をくらい、しょぼくれてしまった。


「ごめんなさい……」


「そんな落ち込まなくても……ほらぎゅーしてあげるから」


「ほんと???はいぎゅー!!」


かと思いきやいきなり元気になり、抱きついてきた。


「からのちゅーーー!」


「しません!!」


「けち……」


「あの日だけだよ……まったく……」


「え?姉ちゃんとしたんですか?」


「……流石に冗談だよな?」


「あっれぇ??お二人はシたことないのかなぁ???」


「普通シたことないよ!?」

「当たり前だろ!?なぁ南海先輩!!」



「………そりゃねぇ?」


「はい嘘でーす!景くんしてまーす!」


「待ってごめん怒りすぎたの謝るから!」


「氷華さん……………」


「………なにその目、やだよシないよ?」


「お前という奴は………とんでもない悪女じゃないか」


「何も言い返せない…………」


「はいというわけでちゅーー!」


恵は諦めずにチャレンジしてくる。それをなんとか力ずくで抑え込んでいる。


「や…ほんとにダメだから……」


「なんでよー」



「だって龍牙におし……怒られるから……」






「……おいなんだ黙ってこっち見んなよ」




私が思わず溢してしまった言葉を全員聞き逃さなかったらしく、龍牙の方をじっと見つめていた。



「いや分かってたことなんだけどさ……こう………なんか脳へのダメージが……」


「これキッツいね………吐きそう……」


「ボクの……ボクの………」


「………すまん外の空気を吸ってくる」



楽しかった雰囲気は一撃で粉砕され、その後30分は重い空気を引きずるのだった。

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