第63話 何気ない日常?
2月8日火曜日
「かーいちょー!!」
「はーい」
3学期も順調に進み、私は生徒会長としての日々を満喫していた。
仕事は景虎先輩の手伝いをしてたし問題は特になかった。むしろ恵と玲央の方が慣れないことばかりで大変そうだ。
「もー!!先生の間で勝手に連携してよー!」
「なんで毎回俺らを挟むんですか!!」
「仕方ないだろ……そういうものだ」
昴は仕事にはすぐに慣れ、部活で居ないことの多い玲央のサポートをしてくれている。
「氷華がいないと辞めてるよ!!」
「そもそもいないと入ってないだろ」
「……それもそっか!」
「そういえば…その氷華さんは?」
「ん?今日は用事があると帰ったぞ」
「私聞いてない!」
「再テストを受けて遅れたからだろ」
「ぐぬぬ……」
「ふむ……」
「真剣だねぇ」
「そりゃそうですよ……」
今日は景虎先輩と駅前のデパートに来ています。目的はもちろん……
「ちゃんと美味しいもの作らないと…」
「どれでも喜んでくれると思うけど」
「そういう問題じゃないんです」
「……俺の身にもなってよ」
「それは……すいません」
もうすぐバレンタイン。
龍牙には「用意しなくても市販でいいぞー」とは言われたがそんなわけにはいかない。
だからこうして龍牙の味の好みを知ってそう兼男子役兼荷物持ちとして放課後暇そうにしてた先輩を引っ張ってきたのだ。
「沢山味見させてあげますから」
「そりゃありがたいけど……まぁいっか」
そんなこんなで大量に買い込み、自宅に先輩を招いて試食大会が始まった。
「そもそも龍牙は甘いもの食べてなかったからなぁ……モグモグ……おいしいけどさぁ……」
「むむむ……だったらビターですかね……」
「無難にクッキーとかで良いと思うけど……モグモグ……泣いて喜ぶよアイツは」
「号泣させたいんです!無難じゃ嫌なんです!」
「………幸せ者だねぇ…モグモグ……」
その後も作っては食べ、作っては食べを繰り返し、最終的にはプレーンのクッキーに落ち着いたのだった。
2月10日木曜日
「なぁ氷華、一つ頼みがあるんだが…」
「なになにどした?」
放課後、今日は生徒会の仕事も特になかったので帰ろうとしていると昴から声をかけられた。
「今年の夏コミ………いけるか?」
「え……あー……」
その誘いにとりあえず龍牙の方をチラ見する。
「はいはいなんだナンパされてんのか?」
「してない!!」
「いやさ……夏休みさ……少し昴と東京に行こうかなって……」
「………浮気旅行?」
「だとしたら言うわけないだろ!!」
仕方がないので龍牙にも詳しい説明を昴が行った。なんでも昴は界隈ではそこそこ有名になってきたらしく、去年の売り子は今年は来ないのかと期待されているらしい。
「去年の氷華のコスプレはもはや伝説となっていてだな……集団幻覚まで疑われている始末だ」
「それが華と何の関係が?」
「……自分で言うのもなんだが今年の夏コミに出るとなれば恐らく長蛇の列になるだろう」
「そしてその大半の目当ては氷華というわけだ。だからその……いてくれると助かる…」
「なんか微妙な理由だな……本音は?」
「………本音など……」
「ほ、ん、ね、は?」
「………………ぐっ……」
「じゃあ貸さねぇ。ほら帰るぞー」
龍牙は私の手と荷物を取ると教室から出ていこうとする。
「俺が!!!」
その様子にようやく決心したのか昴が口を開いた。
「俺が……一緒に居て欲しいんだ………」
顔を真っ赤にして震えながら本心を吐露する昴は目茶苦茶恥ずかしそうだった。
「そうかいそうかい……だったら…」
それを見た龍牙は私から手を離し、怒りながら近づいていった。
「一発殴らせろ。それで貸してやる」
「………いいとも!さぁなぐ―――」
龍牙は最後まで昴に言いきらせず、全力で顔面をパンチした。
「ちょっ……大丈夫昴!?」
吹っ飛んでった昴に駆け寄ろうとすると龍牙から止められてしまった。
「人の女を気色悪いバカ共の前に晒そうってんだ。殴られるくらいの覚悟は出来てんだろ」
「…………すまん。ありがとう」
「……また盗撮されてみろ。殺すからな」
「分かっているさ……」
その後昴から連絡があり、翌日に昴の家で衣装の話をしようということになったのだった。
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