第31話 眠れる虎vsアブない龍

「まだそんなことをしてるのかい北斗」


「テメェこそ相変わらず力任せじゃねぇか虎さんよぉ…生徒会長の名が泣いてるぜ?」


突然現れた景虎


というか……

(え?まってどうやって蹴り飛ばした?え?)


保健室の扉は引戸タイプで外れるように作られていたから分かる


(いや普通のドアだぞ?無理じゃない普通?え?格闘漫画の世界観の人?)


景虎の筋肉からあり得ないことではないのかもしれないがそれでも現実離れしていた


だが


(……てかここゲームの世界か!!)


ということに今さら気付き、少しホッとした




「てかよ、別に俺は無理矢理ヤってんじゃねぇんだわ」

「今もコイツから誘ってきやがったからヤろうとしてるだけで…」


「…それは本当なの?」


「それは……その…」


正直さっきまで調子に乗っていた

わざわざ劇の主役をやりたいからその流れを作った龍牙が面白くて煽ってしまった


「…反省してます」


「……ヒメちゃんがそういうなら信じてあげたいんだけどね」


そう言いながら龍牙に近づき、そして


「俺がそれ以上にコイツを信じてないんだ」


龍牙の胸ぐらを掴み放り投げた


(はぁ!?いくらなんでも限度があるだろ!?)


龍牙だって筋肉がない訳じゃない

それをいとも簡単に片手で投げ飛ばしたのだ


「いってぇ……なんで俺が毎回こんな目にあわなきゃなんねぇんだよ…!」


(今回ばかりはすまん!!)


「なんでもこうも…北斗が招いた結果だろ?」


「だからあの時も無理矢理じゃねぇって!」


「…じゃあなんであの子は泣いてたんだ?」


「それは………お前には関係無い話だ」


2人の間で俺の知らない話が展開されている


(なに?どゆこと?裏設定的な何か?)



「ごめんねヒメちゃん…けどあまり北斗には近づかない方がいい」


「いやでも本当に……」


「分かったかい?」


「は…はい………」


凄まじい威圧感

ゲームでも中等部時代の景虎を拝むことは出来たがイラストからでも鬼気迫る顔をしていた


それを間近で体験するとここまで怖いのかと

今までに感じたこと無い恐怖に足が震えていた



「おいバカ虎」


そんな俺を見かねたのか龍牙が挑発した


「テメェこそ女をビビらせてんじゃねぇかよ」


「…仕方ないことだよ」

「北斗に二度と近づかせないようにしないと」


「仕方ないだと…?」


吹き飛ばされた龍牙が立ち上がり、景虎に負けないほどの怒りを露にする


「俺はなぁ…テメェがなんでもかんでも勝手に決めつけて拳振るってるのがよぉ…」

「昔から大っっ嫌いだったんだよ!!!」


とんでもないスピードで景虎に接近し、そのまま顔面へと全力のパンチを見舞った


しかし…


「…なに平気なツラしてんだよ」


「慣れてるからね」


景虎はガードも避けることもせずに受け止めてしまった


「それに…」

「喧嘩はもう辞めたんだ」


「……そうかい」


それを聞いた龍牙はどこか諦めた表情をして去っていった


「ちょっと待って北斗くん!」


謝らなければ、そう思い追おうとするが…


「駄目だよ」


景虎に腕を掴まれてしまった


「離してください私は…」


「……もう関わらない方が君のためだ」


顔を見なくても分かる

絶対に怒っている、と


「どうしてそこまでして北斗くんを信じてないんですか」


力の差がありすぎて脱出は不可能だと判断した俺は気になっていたことを尋ねた


「ヒメちゃんには話しておかないとかな…」



すると景虎は自身の中等部時代の話をし始めた


喧嘩に明け暮れていたこと

昔は龍牙ともつるんでいたこと


そして…








「……という事があってね」


「そんな、ことが……」


信じられない


まさか龍牙がそんなことを…

しかもゲーム中ではそんな話は一度も出てこなかった…


「だからアイツに近づいちゃ駄目なんだよ」

「分かってくれたかい?」


「…はい」


流石に今の話を聞かされては反論できない

といっても景虎の話を信じれば、なのだが…


「よかった」


俺が理解してくれたのが嬉しかったのか漸く顔の力が抜けて柔らかい表情に戻った


「にしてもコレどうするかなぁ…老朽化ってことにしてもなぁ…」


「…とりあえず素直に謝りましょうか」


その後は2人で吹き飛んだドアの件について先生に頭を下げにいったのだった




Ver2.02に更新しました

主なアップデート内容


特殊イベント「龍虎激突す」が特定の条件下で発生するようになりました










「おい恵、テメェがチクったのか」


「…ホントにたまたまだよ」


屋上から去り、階段を下りると恵が隠れていた


「私があんたらを追いかけてたら景くんに声かけられて…それで理由を説明したらそのまま扉蹴り飛ばしちゃって…」


「マジで喧嘩っぱやいなアイツは」


恵の言うことに嘘はないだろう

こんな時に嘘をつける女じゃない


「景くんとは仲直りしないの?」


「あ?なんでしなくちゃいけねぇんだよ」


「だって昔は…」


「……昔は昔だ、今は関係ねぇ」


余計なことを言おうとする恵を無視して教室へと戻る


(めんどくせぇな…こんまま帰るか)


氷姫殿に会えねぇと思うと少し心残りだがもう今更だろう

恐らく虎はあの話をするだろうし、それを氷姫殿が聞いたらそんな奴とは二度と関わらないに決まってる




(あーあ……)


教室に戻って荷物をまとめ、そのまま帰る



(久しぶりに本気だったんだがなぁ……)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る