第8話 本当に危険な体育祭前日

いよいよ体育祭を明日に迎えた最後の練習


俺が想定していたよりも断然クオリティの高いものに仕上がっており、我ら紅組の勝ちは決まったようなもの…だったのだが






「そっちばっかりずるい!こっちにも氷姫ちょうだい!」

「ずるいってなによ!私たちの姫様なんだから!」


一週間前に白組のチア長とうちの元チア長が言い争っているのを見かけた

白組の主張としては、明らかにレベルに差がありすぎる。これではモチベが上がらない、というものだった


(一理ある意見だな…)


こっそりと聞き耳をたてながらそう感じた

うちのチアは一週間前ですらもう素人というレベルでは済まなくなってきていた


そしてなにより俺がいる

自分で言うのもなんだが学園一の人気者がいるとなれば自ずと目線はそちらに集まる


(こうなった以上仕方ないか…)


ヒートアップする喧嘩を聞いていられなくなった俺は2人の仲裁に入り、3人で話し合った


そして至った結論は…





「うん、凄く良くなったと思います」


「ありがとう…本当にありがとう…」

「氷姫のおかげだよ…無茶言ったのにこんなに親身になってくれて…」


白組のコーチにもなること

つまり両方に指導をする、といったものだ


紅組とは一週間の差があり、正直難しいかと思っていたが、白組の執念は凄まじくものすごい勢いで上達していった





というわけで我らの勝利から一歩遠ざかったが、白組に負けないようにとこちらも熱を帯びてきていた


しかし、それによって生じる事故もあるわけで


「いっっっ…!!!?」


練習中に1人の生徒が突如こけてしまった

その子は俺がチアをやると言った時に一緒についてきた強火のファンの子だった


周りに比べても進捗は遅い子だった

だがそれでも一生懸命努力をして、なんとか合わせてきてくれていた

だから俺もなるべく応えられるようにと接してきたつもりだった


「…すみませ、ん。ごめん、なさい…」


彼女自身も遅れていることに対する自覚はあったのだろう

倒れた瞬間思わず涙が溢れてしまったようだった


「やっぱり、わたしなんかが、氷姫、と、おどろうなんて…」


周りの友達がなんとか慰めようとするも泣き止まない


(このままじゃ良くないな)


恐らく次にでてくる言葉は「やめます」だろう

「私がいては迷惑になるから」と


(ここまで来といて、んなこと言わせるかよ)


泣いている彼女の元に駆け寄り、膝をつき目線を合わせる


「…どうして泣くの?」


「だって、だって、こおりひめの、手をわずらわせてばかりで、」


(あんまりしたくはないんだが…)


「…貴女は努力をしているのでしょう?」


「でも、でも…おいつけなくて、このままじゃあしたも、わたしが…」


「私が嫌いな人はどんな人だと思う?」


「…え?」


「努力をしない人よ」

「そしてもっと嫌いなのは」


「自分の努力を否定する人」


「!?…すいません!!すいません…ごめんなさい…わたし、やめ…」


「でも!貴女は努力しているのでしょう!」


そう力強く問い掛けながら両の頬を掴む


「ヒョェ!???」


強火ファンには少々刺激が強いだろうが我慢してもらう


「だったら!最後までやりきりなさい!」


「でも、でも…」


「…貴女は私の言うことが聞けないの?」


「!!!!」

「いえ!!!…氷姫の!お言葉とあらば…」


(よしよし…段々元気になってきたな)


「だったら涙なんて流さないで立ちなさい」


そのまま手を離して立ち上がり、元の位置へと戻り、あることを告げる


「そうそう、私の好きな人の話もしてあげる」

「本気で努力する人よ」


「!!?!??」

「え、え、?それ、って?え?えぇ!?」


「勘違いしないことね、本気でと言ったのよ」


(ホントはこんな騙すような事は言いたくないんだけどな)


明らかに惚れさせにいっている発言

こんなことを推しから言われた日には俺だったら死ぬかもしれない


それでも、俺はもしも、この子から告白されても断るしかないのだ


(悪い女だな俺…)


「さぁ!練習を再開します!時間もありません!本気でいきますよ!」



「「「「「はい!!!!」」」」」


演説のおかげもあってか全体の士気も上がった




たった1人を除いては……だが



「私の…私の……ワタシのなのに………」


恵から放たれていた殺気を俺以外の誰も気にすることはなかった


(後で好感度調整しないと刺されるかもな)


唯一の心休まる相手だと思っていたのだが、そうも言ってられないらしい



漸く爆弾が1つ増えていたことに気付き、

練習を見ながら頭を抱えるのだった…







Ver1.05に更新しました

主なアップデート内容


「西条恵 ヤンデレルート」の追加

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る