第11話 いざ体育祭本番へ

沢山のハプニングがあった体育祭準備期間


そして迎えた体育祭本番

様々な競技でしのぎを削る紅組と白組

昼前までの点差は10点差で僅かに紅組優勢


昼休憩を挟んだあとに最初に行われるのは

チアと応援団による応援合戦

直前までのいざこざもあり、本番ともなればどれだけ険悪なムードになるのかと


思っていたのだが…



「氷華!!目線こっちちょうだい!!」

「ずるい!こっちにも!!」

「10年…いや100年……いいや!人類史上唯一の逸材!!」

「お美しいだけではなく…なんと可憐で……今日まで努力した甲斐がありました…」


パシャパシャパシャパシャ!!!


「あの……」


「ねぇ氷華!!今度はポーズ取って!こう…見下す感じで!!!」

「こっちには可愛い感じでお願い!!!」


パシャパシャパシャパシャ!!!



「あの!!」


遂に我慢できずデカい声をだす

すると漸くカメラマン共はシャッターを押す手を止めた


「…いやだって氷華めちゃくちゃ可愛いんだもん」

「うん…あまりの美しさに気付かなかったけどとんでもなく可愛いんだね氷姫って…」

「は?今気付いたの?折角姫野さんからコーチつけてもらってたのに目ん玉腐ってんじゃない?」

「最初から同じ組だっただけで調子乗ってんじゃないわよ!」


「お願いですので喧嘩もやめてください…」


「「ごめんなさい…」」






事の発端はほんの30分前…


来る本番に備え、チア衣装に着替えることになった


紅組は赤を基調とした服

対する白組は当然ながら白を基調としている


俺は紅組なので紅組と同じ服を着る

…というか昨日まではそうだった



「……恵?これ、なに?」


「え?なにって氷華の衣装だけど」


当たり前だけど?みたいな顔で手渡されたのは明らかに昨日までとは違う衣装


「あの…昨日までのは?」


「え?ないよ?」


(ない!?そこまでやんのか!?)


「お願いだからそれ着てよー…高かったんだよ?個人で発注するの」


そしてまさかの個人発注!!!

てかなんで俺のスリーサイズ知ってるんだよ!


とはいっても本番で体操服というわけにもいかない


仕方なく着替えてみたのだが…


「かっわいい……」

スッ…


着替え終わったのと同時にどこからかスマホを取り出し写真を取り始めた


「ちょっと…やめてよ恥ずかしい」


「いや、これは後世に語り継ぐべきかわいさだよ、うん!」パシャパシャ!



恵から渡された新衣装は紅組と白組のどちらとも異なり水色を基調としていた

そこに赤と白がアクセントとして備わっており、なんともかわいらしいものだった



そうして本番前だと言うのに2人で盛り上がっていると


「どう姫野さん着替えおわっ…」


更衣室に紅組の元チア長が現れた


「え…なにそれかわいい…え?」

スッ…


こちらもどこからともなくスマホを取り出して写真撮影会に参加してしまった


そして再び扉が開き…


「あの、氷姫様…最後に振り付けを見て欲しいん、です…けど………」

スッ…


昨日俺が発破をかけた女子生徒

俺の姿を見るやすぐに涙を溢し、スマホを取り出して撮影を開始


「ねぇ氷姫がここにいるって聞いたんだけど…ってなにしてんのこれ!?」


そして最後に現れたのは白組のチア長

この人だけ俺を見てもスマホを取り出さなかった


「なにって……このかわいさを見てなんとも思わないの?」


「思うけど!!もう本番なのよ!?」


なんとも冷静なツッコミ

漸くこの撮影会から解放されるのかと、そう思っていたのだが


「あんたには関係ないでしょ?余所者は自分の組の面倒でも見てなさいよ」


2人は2年生の頃は同じクラスで仲良しだったらしいのだがこの前の一件以来ギスギスしている


「んぐぐぎ…」


しかし、チア長はそうまで言われても引き下がる気配はなく…


「お願い氷姫!!!私たちともチアを踊ってください!!!」


そのままとんでもない勢いで頭を下げられた


「はぁ?なに都合良いこといってんのよ!」


「そんなことは分かってるの!!ただ…」

「みんな、羨ましがってて…それで、せめて負けるんだったら思い出が欲しいって…」


…どうやら俺の行いがトドメを差したらしい


中途半端に共に練習した分、余計に未練を与えてしまったようだ


流石に白組用にパフォーマンスを合わせるには時間がなかった。だから白組には俺の100%の動画を渡しておいたのだが…それも良くなかったのだろう


高すぎる壁を見せつけられたことで諦める者も出る。それくらい予測できたはずだ


「これ以上姫野さんに無茶させようっての?そんなの受けるわけ…」


「いいですよ」


「「え?」」


俺の提案に目を丸くする先輩2人


そして腕を組んで後方理解者面をしている恵と強火ファン


「私で良ければ、是非」


「ありがと……本当にありがと…」


「まぁ…姫野さんが言うなら……」



(乗りかかった船だしな、俺のせいで悔いを残させる訳にはいかない)





これで無事一件落着、さぁ本番へ


だったはずなのだが


「ごめん、あともう1ついい?」


「かまいませんよ?」


「私も一枚いいかな?」

スッ…



(結局テメエもかよ!!!)






というわけで今に至るのだ


「充分撮りましたよね?早く行きましょう、準備もありますし、遅れてしまっては目も当てられません」


「「「「はーーーい」」」」


長かった撮影会はこうして終わりを迎え、他のメンバーが待っている場所に向かったのだが…


「……チェキ一枚いくらですか?」

スッ…


(そうなると思ったよ!!!)


ただカメラマンが増えただけだった

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