第5話 あまりに危険な体育祭準備期間
6月の中頃
そろそろ体育祭の準備期間が始まる
といっても去年は1年生ということもあり、ただ参加してればよかった
しかし…
「ねぇ氷華!!チアリーダー…したくない?」
休み時間に同じクラスの恵から声をかけられた
「逆に私がやると思う?」
「ううん!全然思わない!」
この学園の体育祭は紅組と白組の2つで争う
そしてその中のミニゲーム要素としてあるのがチアリーディングである
やる意味は一番好感度の高いキャラの好感度が少し上がるだけ
つまり今の俺には関係ない
「なら他をあたってよ」
「それがねぇ…もう回ってきた後なんだよ」
「……え?」
話を聞くところによると他の友人にも声をかけたのだが、「氷姫と一緒だと敵わない」といった理由で避けているらしい
「…誰よそんな噂流したバカは」
「やっぱりそうだよねぇ…だから一応聞きにきたんだ」
なるほど
今朝から学園中の男共の視線が痛いと思っていたらそういうことか
女子からも「応援してます!」と声をかけられ何事かと思っていた
「大体の予想はつくけどね…」
「実は私も…」
という訳で件の犯人を問い詰めに屋上へ向かう
「北斗くん、絶対貴方ですよね」
「…なんのことだか」
いつものように屋上でサボっている龍牙を見つけ、真相を問いただす
「俺はちょーーーっと氷姫のチア姿が見てぇなぁって呟いてただけなんだけど?」
(やっぱりお前か!!)
「今すぐ訂正してきなさい」
「だからぁ、俺は何にもしてねぇよ。勝手に勘違いしてるだけ、分かる?」
龍牙の言うことにも一理ある
この流れは意図して作られたものではあるだろうが龍牙はノせただけ
「…だったら私が自ら訂正して回ります」
そうして屋上から去ろうとすると…
「…皆期待してるよなぁ」
その言葉に足を止める
「氷姫がチアするってんでうちの組はやる気が有り余ってる」
「何が言いたいんですか」
「いや?でもほら、ヤらないってなったらどうなるかなーって」
(この男……)
「口癖のように『学園の為~』とか言ってるのに恥ずかしいことは出来ねぇんだなぁ」
明確な煽り
恥ずかしいからじゃねぇよ
やる意味がねぇからやらねえって言ってんだ
「もしかしたらヤる気なくなっちまうかもなぁ」
「貴方ねぇ…」
言われっぱなしも性にあわない
反論してやろうと振り向くと
「俺はアンタの恥ずかしいとこ見てぇけどな」
いつの間にか距離を詰められており、そのまま壁ドンされた
(顔ちっっか!!顔面良!!!)
なんといっても乙女ゲームのキャラ
凄まじい顔面の良さ
(…ってか距離近い!!怖い!ヤられる!!)
「…離れてください」
「嫌。ヤってくれるって言うまで離れない」
そうこうしていると予鈴のチャイムがなる
「ほら、早くしねぇと氷姫様ともあろう御方が授業に遅れちまうぜ?」
(クソが…!!)
授業に集中してないことはあってもサボったことは一度もない
それで「氷姫」という二つ名の効果が切れるかもしれないことを恐れているからだ
(…別にチアぐらいやったところで関係ねぇか)
(このままサボってこれまでの苦労が水の泡になるよりは…!)
「分かりました、やります、やりますから」
「…マジ?」
「だから早くどきなさい!」
そう告げると龍牙はあっさり身を引いた
そしてなんとか授業には間に合い、その次の休み時間に恵にチアをやることを告げた
恵にはめっちゃ驚かれたが、それと同時に満面の笑みで喜んでくれた
その笑顔がどこかで見たことがあって怖かったのは秘密だ
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