第6話 危ない事ばかりの練習期間
「まさか氷姫がホントにチアをやるなんて…」
「おい、練習見に行こうぜ!」
「バカお前先生から怒られるぞ」
「そんなもんいつでも体験できるだろうが…でも氷姫の練習風景なんて…」
(聞こえてんだよこの猿共が!!!)
正式にチアをやると伝えてから次の日
学園中はその話題で持ちきりだった
学園を歩く度にそんな話しか聞こえてこない
(やっぱやめときゃよかったか…?)
まだ練習が始まっていないのにこの盛り上がり
一体どうなることやら…
そして練習初日…
ガヤガヤ… コソコソ… パシャパシャ
キャッキャッ ジロジロ…
ギャラリーが多すぎる!!
てか誰か写真撮ってる奴いるだろ後で先生行きだテメエは
練習は基本的に昼休みや放課後に行われる
なので本来なら部活などで忙しくて見れねぇはずなんだが…
「おい…部活いいのかよお前…」
「あ?サボってる決まってんだろ…お前こそ塾どうしたんだよ」
「…たりめぇだろサボってるわ」
(バカしかいねぇのか!!!)
男共の視線を集めてめちゃくちゃやりにくいがなにも男達だけではない
「姫野さん…一緒に出来て光栄です!」
「あぁやはりお美しい…頑張ってチアをやろうと決めた甲斐がありました…」
「…モテモテだね氷姫様!」
いざ本当にやるとなったらそれはそれで強火のファンが一緒にやると言い出してきた
当然ながら俺を誘った恵もいるわけだが…
「それじゃあ…姫野さん、お手本お願いしてもいいかな?」
3年生のチア長から頼まれる
普通ならこの人が仕切らなければならないのだが、この意味の分からない状況に完全に萎縮してしまっている
(仕方ない…)
そして俺は先ほど動画で見せて貰った去年のチアの振り付けを踊る
ステータスカンストは伊達じゃなく、何回か見て動いてみただけで完璧に、というか動画以上のクオリティを出すことに成功した
「…こんなところでしょうか」
シーーーーーン…
(あれ?ギャラリー共も黙っちまって…)
(…って泣いてねぇか!?)
「…言葉に出来ない、もう無理、美しすぎます、」
「おれ、きょう、サボってよかった…」
「俺もだ…」
「姫野さん…あなたにチア長を預けたいの、受け取ってくれる?」
(待て待て待て待て!!それは駄目だろ!!3年生の!!思い出!!折角勝ちとったんだろ!?)
「そのような大事な物、受け取るわけには」
「いいの!私には、姫野さんを越えられない…でも!姫野さんなら!去年よりも素晴らしいチアにしてくれるって…そう確信したから!」
「うん!私たちも賛成!」
「私からもお願い!姫野さん!!」
チア長のみならず他の3年生からもお願いされてしまった
「…やっぱりモテモテだねぇ?」
「恵、貴女からも何か言って…」
「あ、やります!って言ってますよ!」
(おいコラァ!!!!)
この意味不明な状況を俺一人では覆すことは出来ず、そのままチア長にまでさせられてしまうのだった
その日の帰り道…
「ごめんって!怒らないでよ氷華~!」
練習が終わり、そそくさと恵をおいて帰ろうとしていたら謝りながら追い付いてきた
「…そりゃ怒るでしょ」
やりたくなかったのに、嘘までつかれて…
「だって、ホントにスゴかったんだもん!誘った私ですら感動しちゃうほどさ!」
そう言われながら撮ってもらっていた動画を見る
元気に溢れながらもどこか妖艶で
チアというよりもはや舞踊
(…久しぶりに俺を見たけどめっちゃ美人だなマジで)
そこに写る女子はまるで自分ではないかのような…実際違うようなものなのだが、どうにも不思議な気持ちになっていった
「ほら分かった?こんなの見せられたらもう無理だよ」
確かに
もし俺が逆の立場でも譲ってしまうだろう
「…しょうがない」
「やった!じゃあ許してくれ…」
「アイスね」
「またぁ!?」
こうして再びアイスを奢ってもらい、2人で帰っていたのだが
「…………私だけのモノなのになぁ」
コンビニをでる際に放たれたこの小さな呟きを
俺は全力でスルーすることにした
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