第61話 ふたりだけのクリスマスイブ
「そうだ氷華!!はいこれ!!」
「あ、プレゼント……開けていい?」
「もちろん!!」
忘年会が一段落した後、恵から小包を渡された。
「姉ちゃんズルい!!じゃんけんって約束だったじゃん!!」
「ふっふーんだ!早いもん勝ちなのよ!」
「なんだろなぁ………へ?」
包装の中から出てきたのは腕時計だった。
しかもなんだかお高そうだ。
「これ……いいの?」
「いいのいいの!!この為にバイト頑張ってたんだから!!!」
「恵ちゃん……それ最初に渡されると後が困るんだけど…」
「しーらない!」
「じゃあ次は俺が!」
玲央が威勢よく手を上げるとそのままの勢いでプレゼントを持ってきた。
「チョーカー………」
「……嫌でした?」
「嫌じゃないんだけど……なんか他意を感じるよね」
「ありませんよそんなの!!」
「……これは早めに渡すのが特だね」
続いて景虎。
「はいどうぞ」
「スノードーム……かわいい……」
「喜んでくれてよかった」
「景くんなんかガチじゃない??」
「人の女狙ってんじゃねーよ」
「龍牙にだけは言われたくないけどね???」
「では次は俺だな……」
震えながらも昴は謎の箱を取り出し、私の前に置いた。
「ねぇこれまさか……」
「しっかりと袋も用意してある」
ガサゴソと梱包を開けると中から出てきたのは美少女探偵シキのBlu-rayBOXだった。
「昴さん……ちょっとこれは……」
「え、ダメなのか?」
「ダメというか……なんというか……」
「ふふwwいや大丈夫wうれしいよwww」
「はい気をつかわせたー」
「そんなバカな!?」
一通りプレゼントを渡し終わり、みんなの目線は龍牙に向けられた。
「……今ここで渡すわけねぇだろ」
「用意してないだけでしょ!」
「うるせぇしてるわ。俺らのクリスマスは明日なんだよ」
「私も皆には用意してなかったし……ごめん…」
「いやいや気にしないでいいよ。俺らが勝手にやったことだからね」
「そうそう!氷華さんにはいっぱい貰いましたから!」
「……そういうことだ。気にせず受けとれ」
「………ありがと」
『氷姫は言いたいことないの?』
『ないよ』
『…ほんとに?』
『俺のことなんて気にすんな』
『ふーん……』
その後しばらくして忘年会は解散となり、私達はそれぞれの家へと帰っていった。
……ただ一人を除いては
「お邪魔しまーす」
「おうお疲れー」
大量の荷物を家に置いてきた後、そのままの足で龍牙の家にやってきた。
「ほんとに疲れたんだけど……」
「3年になったらまずは免許だなー」
「送ってくれるの?」
「同棲でもいいんだぜ?」
「バカ言わないの」
「本気なんだけどなぁ……」
龍牙と軽口を叩きあいながらベッドにうつ伏せに倒れこむ。
「……マッサージしてー」
「へいへい」
「あ~~きもち~~」
「そりゃよかった………」
「……どこみてんの~」
「いや?凝ってそうだなぁって」
「………今日はしません」
「………これでも?」
「ひゃぅ!?………蹴るよ?」
「はいはい分かりましたよお客様…」
マッサージを終え、龍牙の胡座の中へとスポッと収まる。
「ありがと」
「どうも」
マッサージの感謝を述べつつ、龍牙の顔を見ながら問う。
「ねぇ龍牙?」
「ん、どした?」
「プレゼントは?」
「……今か?」
「なんとなく」
「マジか………いや……」
どうにも歯切れが悪い。
「……まさかホントに用意してないの!?」
「いやしてる!!してるんだけど……しゃあないか」
龍牙はそのままベッドの下から何かを取り出し、机の上に置いた。
「なにこれ……開けても?」
「……どうぞ」
細長い包みを開けると中からは高そうな箱が出てきた。
箱の蓋を丁寧に外し、中を見ると……
「うわ……絶対高いじゃん……」
「まぁ、それなりにな」
中には白色の長財布が入っていた。
「財布って……大人だねぇ……」
「素面だと絶対茶化されるから嫌だったんだよ……」
「はいじゃあ私も」
私も龍牙に用意していたプレゼントを渡す。
「どれどれ……ピアス?」
「そ。どう?良くない?」
「良いと思うけど……なんでピアス?」
「………なんだろ。独占欲かな?」
「かわいいとこあんじゃん」
「うっさい…………んっ…」
「…………今日はシないんじゃ?」
「バカだなぁ…………ぁむ………時計……」
「ん?…………あー…なるほど………ん…」
「もう今日じゃないよ」
「確かに。じゃあ思う存分楽しむか」
「うん…………ちゅ……んふふw…くすぐったいw……ゃん……」
「お客さん凝ってますよ…ほらこことか…」
「バカもぉ………いっぱいほぐしてくれないと許さないよ?」
「かしこまりました……ぷっw」
「こら笑うなww」
こうして、ふたりだけのクリスマスパーティーは始まり、残り少ない今年も終わっていくのでした。
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