評判のよいもの

幸せにしかなれない王子

 ある日突然思いついたタイトルから着想して一気に仕上げた奴。雑に書いたので手直しするかと読み返すこともあるけど、そんなに直せなくて毎回困る奴。


【幸せにしかなれない王子】

https://kakuyomu.jp/works/16817330657436696870


 ワイルド原作だと、あの金ピカ銅像の王子のモチーフの人は「生前人々の苦しみを見たことがなくて泣いている」ということでした。じゃあその生前って?みたいな感じですかね。


 辛いことや苦しいこと、全くそれらの目に合わないということは逆に言えば他人の痛みを理解することが出来ないってことだと思うのです。「辛い思いをした人が優しくなれる」と言うくらい、苦しみは優しさももたらしてくれる。


 一応おとぎ話風、ということで完全な三人称ではなく誰かに語りかけるような形の文体になってます。途中でこちらに向かって話しかけられることで読者はぎょっとするし、感情移入を中止できる効果があるかなと思って「当たり前です」を入れました。これから語る話はあなたの世界の話ではない、というエクスキューズです。センター試験(今はそう言わないよね)の小説の表現を聞く問題みたいなやつです。そういうわけで、終盤の魔女の語りは全て読者に対する種明かしです。


 そんで、作中のルビーの剣は一応呪いの象徴として書きました。おそらく魔女が何らかの魔法で奪い返したものだと思われます。ついでにツバメは罰として望み通り「絶対に幸せになれない」呪いが加算されることになります。彼女の未来はとてつもなく暗いです。


 不幸というのもひとつの呪いで、幸せってある程度自分から掴みに行かないと幸せになれないんですよね。だから「幸せになんかなるもんか」となった時点で、彼女は永遠に不幸です。彼女は不幸な自分に酔っているというか、そう考えでもしないとやっていけない精神状態なのです。現実にもたくさんいますね。「私は悲劇のヒロインなの!」と言う奴。あの状態が近いです。


 ところで、この作品は「こういう作品だから」で押し通せると思うのですが「何故王妃は息子にこのような呪いをかけたのか」「こんな支配者で国はどうなっとるんだ」という謎があります。ある意味これは親からの支配であり、息子は親のお膳立てに気づかずに暮らしていきます。


 そして彼は国政に一切携わることなく、本質的な政治家としてはただ判を押すだけの無能に成り下がるはずです。しかし、魔女の呪いにより彼をプロデュースする家臣が登場してこの後の代で王家は完全に彼に乗っ取られることになるんじゃないでしょうか。これがおそらく王妃の「幸せにしかなれない呪い」の代償になるのでしょうね。


 ちなみに、「ツバメ」には若い男娼の意味があるので文字通り最初は少年にしようかと思いました。しかし、あまりにも生々しすぎるために止めました。あと少年にすると、ちょっと説得力なくなるんですよね。難しいね。この話思ったよりも難しいんです。難しいから次に行くね。


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