春ノ夜ノ夢ノゴトシ
奢れるものヒサシからず。
https://kakuyomu.jp/works/16818093074685018716
この作品は自主企画「さいかわ卯月賞」に参加するために書きました。さて、本題に入る前にこの作品に隠した小細工に気がついたかどうか確認しましょう。
ここで問題です。ヒサシはチカコのどんな部分を見て「夢も希望もないカモになる女」だと判断したでしょうか?作品内にヒントはたくさんあるので、探してみてください。作者としての答えは以下の通りです。
「一番くじを買い占めるという行為」
→欲しいものを手に入れるために大金をはたくことができるということは、売掛システムに嵌めるなら最適です。
「ひとりで路上に座り込んでいた」
→具合が悪い以外で路上に座り込んでいたら、何らかの事情があると考えられるでしょう。本当に具合が悪かったら介抱してそこから勧誘に繋げることができます。
「季節に合わない服装をしている」
→開花宣言をしている季節にパーカーと短パンは寒い。どこかから追い出されたと考えるのが筋に合うでしょう。
「声優の専門学校に通っていた」
→声優でなくてもアイドルや漫画家など、人気商売を目指す女の子は堅実というより隙が多いところがあります。作者の偏見です。
「推しぬいをカバンにつけている」
→つまりデカいアニメキャラのぬいぐるみをつけたカバンを持っていたわけです。ヒサシ理論で考えると「オタクは趣味への投資を厭わない」のでエースの素質が十分です。
それとこれは余談ですが、「送別会の雰囲気が嫌」という時点で彼女が組織に属することを苦手としていることを暗示しています。つまり孤立しやすいのです。
以上を踏まえて、この話で一番大事なところを見ていきましょう。
この作品で一番意識したのは「語られていないところで何が起こっているか」です。特にこの文体にしたことで「今その瞬間」しか描写ができません。過去とか未来とかこの文体にはないんです。特に「都合の悪いこと」に関しては本当にこの子は話しません。
だから「具体的に親と何があったのかということ」「まともな就職が出来なかったこと」「借金をしていること」「デリヘルで辛かったこと」は現れてきません。全て「親から逃げられてよかった」「声優のスキルはデリヘルで役に立った」「ヒサシに愛されてるからそれでいい」「お客さんの笑顔が見れて幸せ」と変換されています。
そういうわけで、この作品は字面だけ追っていくと何ともポジティブな話になります。しかし、この話のタイトルは「春ノ夜ノ夢ノゴトシ」です。「春の夜の夢の如し」ということで、このポジティブさは永遠には続きません。その夢から覚めた時が本番です。具体的にどうなるのかはわかりませんが、絶対よろしくないことになるでしょう。
春という別れの季節に属していた組織から追い出された(と当人は思っている )主人公が新たな出会いにより「春」を売ることになるけれども、それは全て春の夜の夢の如しであり今後この蜜月は消える定めであるというのがこの作品に込められた「春」です。面倒くさい作品だな。
ちなみに作者はこういう女の子から金を巻き上げるのは、老人に変な健康食品売りつけるのとあまり変わらないと思うので「当人が幸せならいいじゃない」とは思いません。その辺を語ると本筋からは離れるので、この辺で次に行きましょう。
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