くまったくん

 くまったくまった。


 https://kakuyomu.jp/works/16817330667433111599


 偽熊々杯の「熊で困っている」という文言を見た瞬間もうくまったくんのことしか思い浮かばなくて、くまったくんを自分の中で供養しました。


 ミミちゃんとくまったくんは実際に作者が小さい頃に見た絵本に描いてありました。それはきちんと生活するミミちゃんと比較してだらしないくまったくんの絵が描いてある、というものでした。その中に小説にも盛り込みましたが「お弁当」のシーンが異様に記憶に残っています。


 幼稚園でお弁当を食べるシーン。ミミちゃんはにんじんもしっかり食べます。くまったくんは「にんじんピーマン嫌い!べー!」と全部残しているのですが、弁当箱にはこれでもかとピーマンとにんじんがご飯以外の場所に敷き詰められているわけです。絵本の分かりやすさを重視したのでしょうが、そんなん大人だってテンション上がらんわ!


 昔の本なので一応くまったくんには専業主婦のお母さんがいるのですが、くまったくんはお母さんの言うことを全く聞きません。寝るシーンに至っては風呂にも入らず飴を舐めながら寝落ちする場面で、「これダメな例というよりちゃんと世話されてなくね?」と幼心に心配になりました。でも朝のシーンではちゃんとパジャマ着て寝てるの。くまったくんはどういう生活を送っているの?と気になったものです。


 そういうわけで令和の時代にくまったくんを登場させてみました。くまったくんは少しだけ発達が遅れてる子です。でもグレーゾーンで適切な支援があればそれなりに生活できる程度です。しかし適切な支援はないのでくまったことになっています。


 お母さんは不倫に忙しく、くまったくんに構ってくれません。お父さんは世間体ばかり気にしてくまったくんを殴る以外接してくれません。くまったくんはくまっています。くまったまま大きくなりました。タワマンに住んで年一で海外旅行に行けるミミちゃんには一生理解し難い話です。


 ミミちゃんはミミちゃんで苦労しています。バレエで実力が頭打ちになって、悩みながら音楽の道を模索することになります。学業も実はそれほど良いわけでもなく、ミミちゃんの地獄が存在しています。しかし彼女はくまったくんの地獄までは降りてきません。くまったくんはミミちゃんを引きずり下ろすことくらいしか出来ません。


 後半はおそらく皆が望んでいる「熊が全てを破壊する」を無理矢理詰め込んでみました。くまった彼は己のアイデンティティである熊を否定することでしか救われません。もしやり直しができるなら、この環境から抜けるしかないのです。くまったくんがくまらない世界。


 くまったくんはみんなの隣にいます。

 本当はくまってるのに膝を抱えて、必死でくまってない振りをして笑っています。


 じゃあどうすればいいのか?


 まあ乱暴な熊は殺処分ですかね。

 熊だから。人間とは相容れないから。

 熊と人間は共存できないから。


 この前「ズートピア」を地上波でやっていましたが、熊もウサギもキツネも羊もそれぞれ地獄があるのです。「じぶんがいちばんかわいそう」と思ったら負けです。JOKERになるか、羊になるかのどっちかです。


 そういうわけでくまったくんはみんなの心に住んでいます。みなさんくまってますか?


 締めにくまったので次に行きます。

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