煌めく夜空と天使の肖像

 闇オークションフェスタ参加作品です。縛られて売られる少年は良いぞ。


【煌めく夜空と天使の肖像】

https://kakuyomu.jp/works/16818093089754103967


 はじめに、フェスタ主催のももも様お疲れ様でした。素敵なお題のフェスタ楽しかったです。


【闇オークションフェスタ 感想記事】

https://note.com/lemurcat/n/nf44f69f22f22


 まず「闇オークションを書こう」というところで起点として、どうしようもない人間なので「少年を縛ってステージにあげて売り払うんじゃ!」という貧困な発想しかありませんでした。いかんいかん、それでは物語にも何にもならんと思ったのでいろいろ色を付けよう、と「少年を縛って売る」から派生させていくことにしました。


 ただの少年では面白くないので何か付加価値、しかも高額で取引したくなるものと言えば「永遠の命」かなあという安直な発想の元、「血を飲めば永遠の命が手に入る」という商品が生まれました。ちなみに仮題は最後まで「天使の血(仮)」でした。中二病すぎる。


 さてオークションですので、参加者を考えないといけません。永遠の命を秘めた美しい少年を大勢が取り合う……ここで「おお竹取物語」となりまして、参加者を五人の貴公子に寄せることになりました。その流れで、話の構成も全部竹取物語に寄せることになりました。私が小説を書く時に一番苦手としているのがキャラクターの名前を考えることなので、ここでひとつ楽をしてしまいました。


 ちなみに元ネタは以下の通りです。


・讃岐製薬、宮津 さぬきのみやつこ(竹取物語の翁の名前)

ファン かぐや姫

竹下文武たけしたふみたけ 帝(文武天皇がモチーフといわれる)

・セイントボウル財団のメイキー・ストーン 仏の御鉢の石作皇子いしづくりのみこ

・「ラットトラップ」のフレイム・エイブ 火鼠の皮衣の右大臣阿倍御主人うだいじんあべのみうし

・台湾の実業家の林玉慧リン・ユイフェイ 蓬萊の玉の枝の車持皇子くらもちのみこ

・女優の首藤美由紀しゅとうみゆき 龍の首の珠の大納言大伴御行だいなごんおおとものみゆき

・収集家のウェイス・ゴロンドリナ 燕の子安貝の中納言石上麻呂ちゅうなごんいそのかみのまろ


 この中でわかりにくいのは「台湾=蓬莱」というのと「ゴロンドリナ=スペイン語でツバメ」「ウェイス=英語で無駄を表す(燕の子安貝のエピソードは「かひなし(甲斐なし)」という言葉の語源となったというところから)」というところでしょうか。


 はて、オーレリアンとヴァルクはどこから来たのか……? というところでこの作品の混迷が始まります。ねえこの話長い? 長いよ!


 ぶっちゃけると、当初は「宮津=竹下文武その人」である予定でした。眠ってしまった煌をどうすることもできず、自分よりも有用に大切にしてくれる人に譲りたいが、自分を捨てるほどの価値を煌に与える人に譲ろうというのが闇オークションの意義でした。それでオーレリアンと再会できて帰っていきました、めでたしめでたし。となるはずでした。第一話を書き終えたときまで。


 ここで大事件が起こりました。「闇オークションの描写を引き立てるのに、表のちゃんとしたオークションも書こう」と出しただけの「ヴァルク・エンデバー」がめっちゃキャラ出してきました。当初ヴァルクは冒頭に登場するだけで後にざかざか紹介だけされる美術品群のひとつ、というつもりでした。


 ︎︎だから名前もChatGPT君に「なんか芸術家っぽい名前ない?」ってバーッと出してもらった名前の中から適当に選んだ感じでした。第一話を書いてる時点で、ヴァルクはそこで終わるはずだったのです。ちなみにオーレリアンもそこからそれっぽいのを持ってきました。「蝶を愛する人」みたいな意味らしいです。エロい。


 ヴァルクの絵と位置づけのイメージは完全にクリスチャン・ラッセンで、愛好家はいるけれど美術界からはちょっと……という感じにするつもりでした。何やらキャラを主張するヴァルクを前に「こいつを主役にしたい」という欲がむくむくと膨らみ、いつの間にかこういうことになっていました。


 ここから軽くヴァルクヒストリーです。軽くないです。


 駆け出し貧乏画家の宮津ことヴァルク・エンデバーはある日、珠のような少年、煌を拾います。帰り方がわからない彼とたいそう懇ろな関係になったヴァルクは、彼モチーフの絵画を制作します。そしたらそれがバカ売れ。巨額の富を築きます。


 その際、日本人仲間だった文武がヴァルクの富の理由を知り、そして煌に横恋慕します。煌に自分のものになれと迫る文武を煌は拒否。やがて10年ほど年月が経ち、ヴァルクが一切老いないことに気が付きます。煌の見た目も変わらないため、文武は彼が魔性の者であることを確信。煌をどうにかして誘拐して日本に連れ帰ります。その時例の絵画も一緒に文武のもとへ行きます。


 その後、煌を失ったヴァルクは創作意欲も減退したのと老いることのなくなった体に絶望して入水するが、死ねない体になっていることにますます絶望。失意のうちにこの世を彷徨うことになります。ここまで煌とヴァルクが出会ってから15年ほど。


 煌のほうは、讃岐製薬の竹下社長に婿入りした文武は煌を使って新薬を制作することになります。いろいろ手酷いことをされます。かわいそうに。いろいろなことをされたため、異界人の煌は自閉モードに入って助けを待つことになりました。この自閉モードは同じ異界人でないと解除できない設定ですが、そんなこと知ったことではないので文武はガンガン酷いことをします。そして、煌が起きないので諦めます。


 さて年月が経ち、ヴァルクは文武が製薬会社の社長になっていることを聞きつけて訪問します。かつての馴染みの変わらない姿を見て文武はびっくり仰天なのですが、何故ヴァルクは不老不死で文武はそうでないのかがわかりません。ヴァルクは老いて死ぬ文武から煌を奪ったことを詫びられ「俺が死んだら俺のものは全てお前にやる」という確約をもらいつけ、例のオークションの開催に至ります。


 ちなみに不老不死の秘密は「愛し愛される」、専門用語でいうところのリバです。異界人そんなんで他種族の身体構造を変えるなよ……と思うのですが、平成風味のBLならこのくらいアリだよね、みたいな甘えがあります。甘えすぎた気もします。


 さて、ヴァルクも煌を起こしたかったのですが起こし方がわかりません。いろいろ酷いことをしますが起きません。このままずっと目覚めないなら、自分のいないところでもっと可愛がってくれる人に譲るべきでは、とヴァルクは思います。もう生きるにも執着するのにも疲れていました。


 今までの自分を全てを売り払って心機一転するつもりでオークションが行われました。そして金周りのいい、確実に煌を買ってそれなりに大切にしてくれそうな参加者を選んで闇オークションを開催するのでした。この辺わりと高度な死体埋めです。煌がいなくなれば、全てがリセットできる。そう思ったのです。ただ、オーレリアンが会場に来ることだけ彼は予想ができませんでしたとさ。


 そんなストーリーをざざっと考えましたが、三万文字で収めるの無理、と諦めました。それなら闇オークションだけ切り取ったほうが見栄えはいいかな、ということでこの形になっています。「なんかかんや昔はあったのだろう」くらいで、後はカクヨムネクスト賞をつけておけば連載も可ということにして……みたいな感じです。もう少し宮津から顛末が語られてもよかったかもしれませんが、宮津は参加者にわざわざ自分の話をしないだろうなあ、というところです。


 なお参加者たちもちゃんと書けばそれなりに面白くなりそうなので、ロングバージョンで書けるなら書きたいです。本当は実業家の林玉慧氏がもう少し活躍する予定だったのですが、ヴァルクが出張ってきたので活躍の場がなくなってしまいました。あと意外とウェイス氏もいい感じでした。こういうキャラもっと書きたい。イマイチ名前だけになってしまったデザイナーと女優もタッグを組めばもうひとつ、何か書けそうです。


 もももさんのご指摘どおり、「確かに参加者に狂気が足りなかった」「闇オークションという舞台を成立させるためのコマのようだ」というところが反省点です。やっぱりヴァルク裏主人公説をやめて参加者の狂気を掘り起こしてもよかったのかな、と思います。


 ︎︎それから、オーレリアンをもっと効果的に使えたらぐっとBL度は上がったかなと思いました。他の方の作品を読んで「メイキーとの関係をもっと描写できていたら更に地獄度は上がった!」と反省です。やっぱりキャラをコマにし過ぎた感じがします。


 あと竹取物語モチーフなのでやっぱり最後は何かを燃やすべきだと思ってあのエンドになっていますが、もっと工夫すればもっといいエンドが作れると思うのでそこも反省点です。一応全てがなかったことになったのは、かぐや姫が月へ帰るには現世のことを忘れる必要があるみたいな展開のオマージュです。わかりにくいですね。


 多分書くべきことは書いたと思うのですが、何分これを書いていたときのテンションがそれいけニューロン状態だったので抜け等があるかもしれません。


 そして、今回倫理観や人権、人をモノとして売ることについて少し深めることができたかもしれません。今まではやたらめったら自分や他人を売りつける奴らを書いてきたので、これからはもう少しキャラクターを慎重に売り買いしようと思いました。やはり縛らないで自分から商品になると宣言させるのがいいですかね……?


 大変長くなってしまいましたが、ここでおしまいにします。

 ありがとうございました!!


 それでは次の作品に行きますね(いつ行くのだろう?)。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

自分の人生を生きてない人の話(作品案内) 秋犬 @Anoni

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ