第43話
王女様主催のティーパーティー。
それが決まってからというもの二人はドレスを注文したり、アクセサリーを買いに行ったりと出かけていた。
もちろん護衛に影をつけていたが、今現在はリアはどうも安全なようだ。
襲われることも見張りがいる感じもないということが報告に上がってきている。
(動き回って相当疲れているのだろうな。最近は私が帰宅する前に寝ている……。)
最近、青薔薇騎士団は少々忙しい。
それもあり帰りが遅くなっているのもあって、帰宅するとリアはもう寝ていた。
とはいえ――――――
(すこし……寂しいな。)
ここ最近、それぞれに励むことが多く、貴族の催しへの参加を積極的にし始めてからというもの、私たちは一度も肌を重ねていない。
肌を重ねていないどころか……――――――
(キスすら、していないのだから驚きだ……。)
出会ってからしばらくたったが、頻繁に肌を重ね合わせていた。
なのに今ではこうしてすれ違う。
互いに忙しいし、今だけの辛抱だ。
そういえばそれだけの事なのかもしれない。
知れないが……――――――
(どうしてだろうな。リアが私からどんどん遠ざかって行ってしまう気がするんだ。)
最近のリアは目に見えて生き生きしている。
パーティーの準備は女主人の仕事。
正式に結婚する前だが、婚約パーティーの準備についてはセンスのない私の代わりにリアとメアリーが頑張ってくれている。
役目を得た。
そんな感じでリアは日々生き生きした姿で頑張ってくれている。
が…………
今まで私という止まり木に止まりながら羽を休めていた小鳥が、
止まり木が必要ないようになってきたような感覚だ。
もちろん彼はそれを望んでいる。
ならばそれを応援したい。
だけどどこか、寂しい気持ちになるのは自分が小さな人間に思えて嫌になる。
だから私は眠るリアに意思表明でもするかのように小さくささやいた。
「……この先もずっと今みたいに笑っていられることを心から願っている。お休み、リア。」
すでに眠っているリア。
そんなリアの頭をなで、額に口づけを落とすと私は静かに立ち上がりリアの部屋を立ち去った。
確かに少しどこか寂しい。
だけどそれ以上にリアが幸せそうな姿を見るのがうれしいのは本心だ。
そしてこの笑顔を守り続けるためにはやはりファントムとあの狸についての情報を得る必要がある。
(さて、どうしたものか…………とりあえず―――――――)
「誰かの家を訪ねるときは正面から門を通って入れと習わなかったのか?」
リアの部屋を出た瞬間、感じた視線。
どうやらずいぶんと気配を消すのが上手い相手が訪ねてきたようだ。
リアの部屋から出るまで気配には全く気付くことができなかった。
(殺意はないようだが……さて……―――――――)
敵か味方か、はたまたそれ以外か。
私は気配のする方へと静かに視線を向けた。
するとそこには―――――――――
「ふふっ。さすがはリーリス・ヴァ―ヴェル。私の気配に気づいた人間なんて私がまだひよっこだった時以来。」
落ち着いた女性の声。
自身の深くかぶられたフードに女性と思わしき存在が手を伸ばすと、月を覆い隠していた雲がゆっくりと姿を現しだしたのか、彼女は月明かりに照らされ始めた。
そして――――――――
「初めまして。私は”レッド”。…………ファントムのトップよ。」
絶世の美女が月を味方につけたのかと思うほどに美しいその姿を月明かりに照らさせていたのだった。
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