第28話
「えっ!?お、俺が国王陛下と王妃様に謁見!?」
レベッセンは謁見の日時が明日だったということもあり、準備の為にも私を早々に家に帰してくれた。
そして帰るなり早い帰宅に驚き、まだ完治してなかったんじゃないだろうなとリアが怒った表情で出迎えてくれた。
何故かひどく焦りを感じた私だが、理由を話すとリアはこのようにひどく驚いた。
「しかも明日って、ドレスとかどうすればいい!?俺、おめかしとか全然得意じゃないんだけど!?」
リアはひどく動揺しているのか、青ざめた表情で私に体を寄せ、私の服につかみかかりながら私を見上げてくる。
こんな時に難だが、ここまで青ざめる事のないリアが青ざめている姿は少し可愛いと思ってしまう。
が、意地の悪いことを考えるのはここまでだ。
(そういえばタイミングのいいことに先日リアと買いに行ったドレスの受け取りが今日だったような……。)
そんなことを思っているとタイミングよく私とリアしかいないエントランスホールの扉が開く。
そしてエントランスホールに入ってきたのはいくつかの箱を積み上げて抱えているセバスチャンだった。
「おや、旦那様。お早いお帰りで……お出迎えができず申し訳ありません。」
穏やかな口調で軽々と箱を抱えながら私に近づき、私たちに一礼をするセバスチャン。
まさかこんなにいいタイミングで現れてくれるとは。
「いや、構わない。それよりその箱は例のモノで間違いないか?」
「えぇ、もちろんです。直接お渡ししますか?」
セバスチャンが笑みを浮かべながら優しく問いかけてくれる。
その声に私は静かに頷き、まずいくつか積みあがっている箱のうち一番上の箱を受け取り、開けてリアに見せた。
「え……靴……?」
箱を開けて見せるとリアから驚いたような声が漏れる。
そう、これは先日私がリアに頼み、任せてもらったドレス一式だった。
「貴方はヒールでうまく歩かれるけれど、靴はヒールのないものにしておいたんだ。
青薔薇なのはその……青薔薇騎士団の私の制服に合わせたもので……申し訳ない。」
勝手に礼服をそろえたい。
そう思い青薔薇を入れてしまったことが今になって少し恥ずかしい。
しかも、今になって思えばリアは男だ。
こういったプレゼントは正直言ってどうなのだろうと思えてきた。
表情を伺うのが少し……怖い……。
そう思っていた時だった。
「とっても綺麗で素敵!!ありがとう、リン!!」
セバスチャンがいるからかいつもより少し高い声で嬉しそうな声色で俺に微笑みかけてくれるリア。
その表情はなんとなく演技からくるものではないと解る。
(……気に入って、くれたのだろうか。)
ヘタに窮屈な靴ではなく、動きやすそうな靴を頼んだ。
それはもしかすると窮屈な靴がリアの足の成長を止めてしまっているのではと思ったからだ。
そしてヒールは単純にそれを履いて歩けばいやでも”女性”という存在を意識させられるような気がして外した。
(以前、どこかの家紋の令嬢が言っていたからな。ヒールは女の武器だと。)
ならばリアには不要だ。
そう思い外したのだ。
「そして次はドレスだ。さぁ、よければ広げて体に当ててみてくれ。」
そういうとリアは純粋に嬉しそうに私が明けた二つ目の箱に入っていたドレスを取り出し、広げる。
するとそこには首元までしっかりと布があり胸元が見えないようになっていつつも、しっかりと華やかさが出つつ、男性と思わせるような体の部位が隠れるよう、ゆったりとしたデザインのドレスがあった。
注文通りのデザインに胸をなでおろしていると、リアはひどく感心したような声を漏らした。
「ねぇ……もしかしてこのドレス、リンがデザインしたの?」
普通はデザイナーがドレスのデザインはする。
が、どこかおかしかったのだろうか。
感心しているようには見えるが、素人仕事がバレてしまっているようだ。
私は私がデザインしたことがバレていることにひどく焦りを覚えてしまう。
「そ、その通りだが……き、気に入らなかったか……?」
リアの身体をよく知るからこそ、リアの体形に合うドレスをデザインしたつもりだ。
どれだけドレスを着ることを望まなくても、彼が”令嬢”として表舞台に立つ以上、ドレスは必要不可欠なものだ。
けれど、それを身に纏う時に少しでも気楽に着れたらと私なりに考えてみた。
女性の身に纏うものに憧れがあった分、デザインを考えることは苦ではなかった。
が、素人デザインはやはりすぐにばれてよくないだろうか。
等と思っていた時だった。
「今まで買ってもらったどのドレスよりも好み!!!」
リアは満面の笑みで私に微笑みかけた。
そのあまりの嬉しそうな笑顔に私までも笑みがこぼれてきてしまう。
「ありがとう、リン!!!大好きっ……!!」
デザインが気に入ってくれたのか、それとも私がリアの事を思ってデザインした気持ちに気づいたのか、どちらからくる喜びかはわからない。
けれど嬉しそうに微笑み、ドレスを胸に抱くリアを見て私はひどく幸せな気持ちになるのだった。
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