第18話
「なるほどね……。「ファントム」とつながりがある、か。」
私は今得ている情報をレベッセンに共有した。
そしてその話を聞くや否や、レベッセンは自身の顎を掴みながら唸りだした。
「可笑しいな。ラヴェンチェスタ伯爵ならファントムを送り、つながりがあることを示唆させるだろうか……。」
ラヴェンチェスタ伯爵をよく知るレベッセンはこうもあっさりとつながりを調べられることが可笑しいと訝しむ。
けれどそれに関しては少し違うという事を私は説明する。
「あくまで”確信”しているだけの”推測”に過ぎない。調べているがつながりの”証拠”はかけらも入手できていない状態だからな。」
どれだけ予想建てたところで結局のところ証拠がなければ裁くことなど不可能。
だからファントムを差し向けたところでそのつながりとなる証拠を残さなければどれだけ確信を持っていたとしても罪を問うことはできない。
逆に言えばラヴェンチェスタ伯爵は……―――――
「それだけ余裕がある、という事か。」
レベッセンはため息を吐きながら私が言いたかった言葉を吐き捨てる。
そう、まさにそういう事だ。
ラヴェンチェスタ伯爵はこちらにカードをちらつかせる余裕すらあるという事。
それはつまり既に我々が後手に回っていることを表していると私は考えていた。
「まぁ、伯爵についてはこちらの方でもいろいろ情報を探ってあげるよ。なんたって俺たちは兄弟みたいなもの。弟が困っていたら助けるのは兄として当然だからね。」
レベッセンは重たい空気の中明るい声で言い放ち、静かに腰かけていた椅子から立ち上がると私を見下ろしほほ笑みかけた。
「……レベッセン……。」
私は微笑みかけるレベッセンをじっと見つめる。
そして――――――
「私はお前を一度も兄だと思ったことはないが?」
私は真顔で言葉を投げかけた。
「なっ!!ひどいよ、リン!!!」
私が少し突き放したからかその突き放された距離を縮めようと愛称で呼びかけてくる。
その姿がひどく情けない。
けれど私はそんな姿が嫌いじゃなかった。
「ふっ……半分は冗談だ。確かに兄とは思ってはいないが……家族のように大事には思っているさ。」
私はそう言いながら椅子から立ち上がるとレベッセンに近づき、レベッセンの方を軽く叩いた。
そう、私にはもう家族と呼べる存在がいない。
けれどそんな私を家族のように慕ってくれる存在はここにいる。
国王陛下に王妃殿下、王太子であるレベッセン、そして王女で妹のように可愛がっている存在、マリエスだ。
この4人が居なければ私は本当に氷のように冷たい人間になっていただろう。
(まぁ、一応そこにブライアンも足しておいてやるか。)
人間関係というのはいつどこで影響を受けているかはわからない。
もしかするとあいつもカリア殿が頼りにしてくれている”私”をつくる一つの要因になっているかもしれない。
と、癪だが考えてみる。
なんにせよ――――――
「レベッセン。私は何も偽善や騎士道を理由に今回の事を始めたわけではない。私は心からカリア殿を幸せに、自由にしてやりたいんだ…………。」
私は脳裏にカリア殿の姿を思い浮かべながら語る。
人前で誰かへの思いを語るなど恥ずかしいと思っていたが意外とそんなことはなかった。
ただ、誰にも脅かされることなくカリア殿が幸せであれば私はそれ以上何も望まない。
あの人の幸せをただただ、願っているのだ。
(……と、違ったな。リアと呼ばなければ。)
いい加減慣れなければいけない。
そんなことを思い私がふっとリアの起こる顔を思い出して笑うと、レベッセンに小さく笑いの息をこぼしながら語り掛けられた。
「……お前にそんなことを思わせる存在が現れる日が来るとはね。いやぁ、人生長生きするものだ!ははは!!」
「まだ24になったばかりの男が何を言う……。」
豪快に私の背中をたたきながら笑い、語るレベッセンに私は呆れた声音と表情で一言、言葉をこぼすのだった。
===お知らせ===
【公爵様たちの秘密ごと。】をご覧の皆様、作者の鸞(らん)でございます。
ここまで応援いただき誠にありがとうございます。
この度、こちらの小説が恋愛ジャンルの週間ランキングにランクインしたとのことで、記念イラストを描かせていただきました。
近況ノートにて全体公開をさせていただいておりますので
既にキャラクターイメージがあり、そのイメージが損なわれることを避けたい方でなければよろしければ是非、ご覧いただけますと幸いです。
一応普段はイラストレーターとして活動しているため、すこしは楽しんでいただけるのではと思っております。
それでは皆様、今後とも何卒応援をよろしくお願いいたします。
====鸞(らん)====
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