第41話
暗躍をしている以上平和、という言葉を口にするのはおかしいが、
特に資格を向けられることもなく、私とリアは順調に貴族たちに婚約を広めていった。
噂は二人で参加したパーティー後に一気に広がったが、誰もがその目で見て私たち二人の婚約を確認したがった。
様々なところに顔見せをしに赴いていることが結婚準備に全力を注いでいるように見えているのだろう。
ラヴェンチェスタ伯爵のちょっかいはほとんどない。
1通、手紙が届いたくらいで……。
「なるほど。要約すると「最初は愛娘を突然連れ去らわれた気持ちで複雑だったが今では心から祝福している。一度親族になるものとして顔合わせをする席を設けたい。」って事か……。」
ラヴェンチェスタ伯爵から手紙が届くとほぼ同時刻。
久しぶりにレベッセンが私の屋敷を訪ねてきた。
ラヴェンチェスタ伯爵からの手紙を知ったレベッセンは自分にも見せろとうるさく、
仕方がないので二人で見たところだった。
「相当たいそうな教育をしたとでも言いたげに大事な娘と書いているあたり、結納金を期待していると書いているぞ?リーリス。」
「はぁ……結局あの狸は金がすべてなのか?」
もともとは富豪のバッカス侯爵、その後は我がヴァ―ヴェル家の財力を期待している。
金が好きなのか権力が好きなのか……
(どちらかといえば金だろうな……。)
貴族会などでおとなしくしているのを見る限り、立場や権力よりももっと確かなもの。
有事の際一番自信を守ってくれるであろうもの。
金が奴は好きなのだ。
仮に飢饉が起きても金さえあれば領民を救い、名誉を守ることができる。
戦争が起きようものなら出資をすることで貢献し名を上げることもできる。
賢いがゆえに彼は前に出ない。
いざというときに存在感を放つために集めているのだろう、財力を。
(でなければバッカス侯爵がまだ存命だった際に私に手を出すなんて愚かな真似はしなかっただろうしな。)
まずまずの財力があり、権力もあるとなれば私を選ぶだろう。
悪党同士やりやすかったのでなければ……そういうことだろう。
「リーリス、結納金は取り返してやるからこれでもというくらい送ってやるといい。できれば婚約パーティー前にだ。」
婚約パーティー。
私とリアが主催することを決めた大きいパーティーとはまさに婚約パーティーだった。
開く予定はなかったのだが、状況が状況な故、開く運びとなった。
そしてそれを餌にしようというのがリーリスの考えだった。
最高の婚約パーティーを開くために様々なパーティーで見聞を広め、そして交流を深めている。
それが今世間に見せている私とリアの姿。
だから誰もおっていないだろう。
別動隊がファントムについて調査しているということを。
……とはいえ――――――
「ファントムについてはどうだ?以前情報はないままか?」
「残念だけどね。しっぽはなかなか見せてくれないね……。」
わかってはいたがなかなか思うようにいかない状況にレベッセンは盛大にため息をつく。
「婚約祝いに断罪の証拠、渡してあげたいんだけどね……。」
表立ってレベッセンは動けないとはいえ、もちろん秘密裏に情報は黒薔薇騎士団から得ている。
情報共有はレベッセンの役目なわけだが、共有できる内容がなくて残念そうに見える。
が……
「なら一体今日はどういう用件でここに来たんだ。ようがないのに来たとでも?暇なのか……?」
「本当に君は俺に対して尊敬の念が足りなさすぎやしないかい?まぁいいけど……。」
ため息をつきながら懐に手を伸ばすレベッセン。
そしてレベッセンは一枚の封筒を取り出した。
「こ……これは…………!!」
取り出された封筒。
それを見て私はひどく驚いた。
そしてその驚きが少し落ち着き、レベッセンを追い返してしばらく、私はその封筒を受け取るべき人へと届けた。
「えっ!?俺に王女様からティーパーティーの招待状!?」
そう、受け取るべき人とはほかでもない。
令嬢として社交活動をしているリアだったのだった。
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