第2章 公都からの大脱走

第7話 犬耳人族のロリ巨乳奴隷

 ――ガタゴト、ガタゴト。


 中世ヨーロッパ風の街中を馬車が進む。

 やってきたのは街で一番大きな高級奴隷商店である。

 玄関前で馬車を降りて見上げると、田舎のデパート並みにでかい屋敷だった。5階建てな上に屋上まである。すごい儲かってそう。


「ようこそ、いらっしゃいませ。私が当奴隷商店――ガーデンブルブル――のオーナーをしております、トルコネ・ブルブルと申します」


 中に入ると店のトップが直々に出迎えてくれた。

 青い縦縞のポンチョを着た、ふっくらとした体躯の人間男性。マスタードラゴンに導かれなさそうな奴隷商である。


 俺はベトレイヤーと案内された部屋に入り、柔らかなソファーに腰掛けた。

 部屋は10畳ほどの広さで日当たりもよく、壁には高そうな絵が飾られている。

 聞けば最上級客用の部屋なのだという。今の俺―アビスリン―が公爵家の長女なおかげでVIP対応らしい。


「それで本日はどのような奴隷をお望みでしょうか?」

「欲しいのは斥候系クラスの女性よ。それと『収納箱アイテムボックス』のユニークスキル持ちはいるかしら? あと同い年ぐらいで、巨乳で、可愛くて、性行為OKで、処女。そんな子がいれば最高なんだけど」

「はっはっは、それは中々きびしい条件ですなぁ」


 俺が条件を告げると、向かい側に座ったトルコネが上品に笑った。

 せっかくなので奴隷の条件にはクラスに加え、ユニークスキルも指定してみた。


 この収納箱アイテムボックスは物を空間に仕舞えるファンタジー定番のスキルだ。

 最初はLv×1kgしか収納できずしょぼいが、徐々に成長してLv40を超えると単位が「トン」に変わる大器晩成のスキルである。


 収納系スキルは他に存在しないはずなので、野外活動するならコレが一番だろう。

 ゲーム主人公は不思議な力で倉庫と直接やり取り出来たが、俺にそんな便利なものはないからな。間違いなく物資の運搬で役に立つ。税関スルーして密輸も可。


「ちなみに種族は人間っぽければ何でも良いわ。獣耳でも羽付きでも」

「……ふむ、荷物持ちと護衛を兼ねた愛玩用、と言った所ですかな?」

「ええ、大体そんなところね。それで都合の良い奴隷はいそう?」

「それはもちろん。ちょうど一人だけ条件に合う者がございます。連れてまいりますので少々お待ち下さい」


 案内された部屋で条件を答えると、トルコネは扉から出ていった。

 部屋には俺とベトレイヤーだけが残る。


 割りと無茶を言ったと思うが、有り難いことに該当する人物がいたようだ。

 素晴らしいご都合主義である。絶対にいないと思ってダメ元だったのに。むしろこんだけ条件つけて居るほうがビックリだよ!! これは俺にもご都合主人公パワーが宿ってきたか?


「アポ無しで来たけど、すごく丁寧に対応してくれたわね」

「それはそうでしょう。お嬢様は公爵家の長女なのですから。この街で無碍にするような商売人はおりません。しかし奴隷を護衛にするとは本気ですか?」

「もちろん本気よ。何か問題でも?」


 俺の発言にベトレイヤーが目を細める。ジト目だ。

 ベトレイヤーからすればどうして自分じゃないの? って感じだろう。


 まぁ実際は護衛じゃなくてPT面子なんだけどね。

 仮に家出へメイドを連れて行ったら、こっそり連絡されそうだからな。

 家の人間が却下なのはしかたない。周囲は奴隷で固めないと。


「大変お待たせいたしました。準備が整いましたので、お目通りを願います」


 そうして待っていると、奴隷を連れたトルコネが戻ってきた。


「こちらババンデット村出身の犬耳族でございます。雌で年齢は16歳」

「おおっ! 可愛いくてエロいっ!!」


 ――入ってきたのは、頭に犬耳が付いた女の子だった。


 顔は可愛い童顔で、翠玉のような澄んだ瞳。

 ふわっとした髪は栗色で、毛先が肩に付く程度のセミショート。頭には前にペタンと伏せた犬耳がある。


 だが一番目立っているのは巨大なおっぱい。

 恐らく90cmオーバー、それも体が小柄なので余計に大きく見える。


 処女の性奴隷を指定したからか服は着ておらず、しかも手は後ろで組んだまま。

 隠すなって言い含められているのかな? おかげで胸も股間も丸見えである。


「……ビビットっす。お腹いっぱい食べれるなら何でもするっす」

「申し訳ございません。この娘は当館に来たばかりで、言葉遣いの矯正がまだでございまして」


 ビビットと名乗ったロリ巨乳は三下っぽい口調だった。

 光の速さでヒロインレースから脱落しそう。


 それでもビビットは恥ずかしがりながら自己紹介を始めた。

 全裸で体をモジモジさせる様はエロすぎである。

 この時点でもう買いたくなった。抱きまくらにして寝たら気持ちよさそう。


「言葉使いはそのままで構わないわ。似合ってるし、むしろかなり気に入った」

「さようでございますか。それはよろしゅうございました」

「おっ、ご主人さま(予定)は話が分かるっすね~」


 しかもこの娘はご飯さえ与えれば何でもしてくれるらしい。

 ダンジョンでドラゴンと殺し合いもOKかな? いや駄目でもやってもらうけど。この世界の奴隷は主人の命令に逆らえないからね。悲しいなぁ。


「それで貴方は何が出来るの? 特技とかあれば教えてくれる?」


 買う前にビビットから事情を聞いておく。

 特にクラスと能力は重要だ。買った後で違いましたなんて、笑い話にもならないからな。


「えっと、村ではレンジャーだったお父さんの補佐をしてたので、森の中でも迷わず歩けるし、動物を見つけるのが得意っす」

「貴方のクラスもレンジャーなの? 取得スキルは?」

「クラスはレンジャーLv1、取得してるスキルは[気配察知]っすね」


 なるほど、ちゃんと斥候職のようだ。

 【ぼくのぞ】におけるレンジャーはシーフと並ぶニ大斥候職の型割れで、シーフが俊敏性と隠れる事を得意とするのに対し、レンジャーは精密姓と見つける事に優れている。狩りから警戒まで、村だとかなり重宝される存在のはずである。


「ふむふむ。なら読み書き計算は?」

「それもお父さんに習ったので大体は。文字が分からないとステータスが読めないし、SPを使うのに計算は必須だって。村じゃ女が生意気だって言われてたっすけど」

「そこまで仕込まれてるレンジャーって、村だと割りと生命線なのでは?」


 どうやらビビットは中々優秀な子らしい。

 しかしだからこそ逆に、なぜ奴隷になったのかが気になる。

 俺は詳しい事情を聞くためトルコネに説明を求めた。


「この子はどうしてここにいるの?」

「それが彼女は村の不作を補うために売られた娘でございまして」

「村がモンスターに襲われて畑がダメになって、このままだとジリ貧だから出稼ぎに行くって言ったら、村の奴らに売られたっす。わたしはちゃんと仕送りするって言ったのに!!」

「この子の父親もモンスターとの戦いで亡くなってしまったようで、なら居なくなる前に金に換えてしまえ、という村人ばかりだったようでございますな」

「……それって貴方は村人から生贄にされたってこと?」

「その通りっす!! アイツらまじざっけんな!!!!」


 話していると売られた時の感情がぶり返してきたのか、ビビットは天井に向かって「うがぁーーー!」と吠える。そのまま詳しい事情を話し始めた。


 それによるとこの子の父親はレンジャーとして、ずっと村を守っていたらしい。

 ところが少し前に村をモンスターが襲い、その時の戦闘で父親が死亡。

 すると村人たちは急にビビットを捕まえ、奴隷商に売り飛ばしてしまったという。もちろんビビット家の財産は没収である。


 中々というか、かなりひどい村のようだ。

 父親を使い潰しといて、死んだら娘を売り飛ばすとか鬼畜すぎるだろう。そら思い出して吠えるわ。


「ちなみに復讐させてあげるって言ったらどうする? 私は公爵家の長女だから、権力で村長を一発殴るぐらい出来るわよ?」

「本当っすか!? 本当なら足でも何でも舐めるっす!!」

「そこまでして殴りたいのね……」

「当たり前っすよ。あいつらお父さんがいた時はヘコヘコしてたのに、いなくなったら急に手のひら返して……」

「なるほど。それで他にやりたいことはある?」

「えっと、一緒に暮らしてた犬がいたから、出来ればまた会いっすね」

「オーケー。その犬も見つけたら保護する方針で」

「いいんすか!?」


 試しに復讐したいかと聞いてみると、ビビットは即座に食いついてきた。

 どうやら村に愛着なんて残ってないようだ。まぁ売られた理由が酷いもんな。


 でもこれは結構な掘り出し物だと思う。

 天涯孤独っぽいから、上手くて手懐けられれば死ぬ気で働いてくれるはず。

 ペットも一匹ぐらいなら構わないだろう。犬から臭いで索敵してくれそうだしな。


 これは購入決定でいいのでは?

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