第9話 ぐわぁー、これは麻痺毒っ!!
「さて、それでは改めて自己紹介しておきましょう。私の名前はアビスリン・フラム・アチチバーンよ。公爵家の長女だけど、アビスお姉ちゃんでも、ご主人様でも好きに呼んで。長い付き合いになると思うから出来るだけ優しくするわ」
購入したビビットに改めて自己紹介する。
遂に念願の斥候役ゲットだ。しかも超レアキャラ! っしゃー、幸先いいぞぉ~!!
「はい、ご主人さま。こちらこそ宜しくお願いするっす!! ……ところで公爵家のご飯てどんなっすか?」
対してビビットはご飯に興味津々だ。
おいおい、最初の心配がご飯て。やっぱコイツ食いしん坊キャラだわ。
あと呼び方が「アビスお姉ちゃん」じゃなかったのが少し残念。でもそれはそれとして、ロリ巨乳美少女のご主人様呼びは興奮するな。
「それで、ちょっと触ってみても良い?」
「はい。できれば優しくして下さいっす」
俺は早速、ビビットの頭に手を伸ばす。
軽くお辞儀の形で差し出された垂れ耳に触ってみると、サワサワと心地よい手触りだった。実はずっと気になってたんだよね。ビビットも気持ちよさそうに撫でられている。
「高級な絨毯のような質感が癖になりそうね。ついでに胸とお尻もチェックしておきましょう」
「ほえっ?」
調子に乗った俺は続けてタワワな胸に手を伸ばす。
正面、下から掬い上げるように揉むと、こちらは耳と違ってズッシリと重量があった。
「ほほう、やはりこれは良い物ね~」
「あっ、そこはっ、んんんっ……!!」
そのまま親指で乳首を弾きながら揉みしだく。
スベスベでフワフワだ。暫く揉んでいるとビビットが甘い声を上げる。
そこで更に抱きつくような形で、今度はお尻に手を伸ばした。
こちらも張りがあって揉むと気持ち良い。適度に鍛えられた桃尻だ。安産型だな。
「ふぅ~、満足したわ」
「えー、それではビビットを着替えさせますので、しばらくお待ち下さい」
「わかったわ。ベネトレイヤーは先に戻って、馬車の準備をしておいてくれる?」
「かしこまりました。玄関の方に移動させておきます」
満喫したらベトレイヤーには帰り仕度に行ってもらい、俺は部屋でビビットの着替えが終わるのを待った。
流石に裸で連れ回すわけにはいかないからな。幾ら何でも初日からソレは変態すぎるだろう。
「ご主人さま、お待たせしましたっす」
「あら、動きやすそうな格好ね」
俺はソファーで足組んだ親分スタイルでビビットを出迎える。
戻ってきたビビットは紺色のジャケットに短パンの軽装スタイルだった。
他に荷物らしき物は何も持っていない。まぁ着替えは後で用意すればいいか。
「じゃあこれをアイテムボックスに入れてみてくれる? 重量は平気だと思うけど」
せっかくアイテムボックス持ちなので、試しにサイフを渡してみる。
中身は白金貨が20枚のみ。白金貨1枚10gなので20枚で200g。最大1kgまでの現状でも余裕だろう。
「これぐらいなら余裕っす」
「ふむ、パっと消えちゃう感じか」
ビビットが触れてスキルを発動させると、サイフはヒュンと消えてしまった。
黒い穴が開いたりはしなければ、空間に押し込んだりも必要ないようだ。
物限定の瞬間移動みたいなもんだな。かなり便利そう。
「なら次はこの時計と手鏡、ワッペンも収納してみて。あとナイフはどう?」
「えっと、ワッペンでギリギリ。ナイフは無理っすね」
続けて愛用の時計と手鏡、公爵家の家紋が入ったワッペンも収納してもらう。
流石にナイフまでは無理なようだが、それ以外はサっと消えてしまった。
「それって魔力とか消費しないの? 再使用時間は?」
「そういうのは特にないっすね。何度でも使用可能なんで」
「そうなんだ。Lvが上がったら王の財宝もどきが出来そうね」
再使用時間が無いって地味にやばくね?
これなら戦闘中でもガンガン使えるな。閃光玉の無限ポイポイで、空の王者(笑)を地面に縫い付けれそう。アイテムボックスは思った以上に有能そうだ。
「うーん、これは使い方次第でいくらでも化けるわね。……有能!!」
「えっと、いま収納したのは出したほうがいいっすか?」
「それはそのまま預かってて。どうせこれから行動は一緒だもの。もし何かあったらワッペンを見せて、私の名前を出しなさい」
「了解っす!!」
どうせ一緒に行動するつもりなので、サイフなどは丸ごと預けておく。
やはり小物を持ち歩かなくて住むのは便利だな。これで後は必要な物資さえ揃えば、何時でも家出できそう。
気を良くした俺はビビットを一度抱きしめ、それから玄関に向かった。
流石に高級店は扱いもしっかりしてるようで、ビビットの全身はいい匂いがした。
ビビットを餌付けする為にも、食料は多めに持っていかなくちゃ(使命感)
「お嬢様、それとビビットもこちらを。喉が渇いたかと思い紅茶を入れておきました。出発すると揺れて飲めませんので今のうちにどうぞ」
「あら気が利くわね」
購入が終わって馬車に戻ると、先に出たベトレイヤーが紅茶を入れて待っていた。
なんて仕事のできるメイドなんだ。ちょうど喉が渇いていたので遠慮なく頂く。一瞬、こんなところでどうやって? と思ったが、ファンタジーでよくある魔導具あたりを使ったのだろう。
「ありがたく頂くわ。ビビットも遠慮なく飲みなさい」
「うわー、すごく高そうな紅茶! これほんとに飲んでいいっすか?」
「ええ、家では何時でも飲み放題よ」
ひゅー! 最高っすー!! と騒ぐビビットを尻目に紅茶を味わう。
とてもいい香りだ。喉越し爽やか、苦味がなくて飲みやすい。50パック500円のリプ◯ンとは格が違うのが分かる。
隣ではビビットもフーフーして温度を下げながら美味しそうに飲んでいた。
小動物っぽくて可愛い。見てるだけで精神がグイグイ癒やされていく。あぁ~、アニマルセラピーなんじゃ~~。
「では飲み終わったようですので、そろそろ出発いたしましょう――あの世に」
「はっ?」「えっ?」
しかし飲み終わると突然、身体が動かなくなった。
体がドサリと横に倒れ、頭が馬車の扉にガツン! とぶつかる。
ステの物防力が高いおかげか痛みはなかったが普通にビビる。
見ればビビットも反対側のドアに向かって倒れていた。
――麻痺抵抗に失敗しました。
――身体が麻痺しました
そしてトドメだとばかりに脳内に響く、状態異常のアナウンス。えっ、何これ???
「な、なんっすかこれ!? か、身体が動かないっす!!!」
「手足の痺れ、硬直した体、和マンチの定番……。ぐわー、これは麻痺毒っ!!」
突然の事態に思わずニンジャ口調になってしまう。
「流石でございます。こうも早くお気づきになるとは」
そんな俺達をベトレイヤーは冷めた目で見下していた。
ふー、ようやくこの豚を処分できるぜ、みたいな目だ。そこに今までの温かみは一切見当たらない。ま、まさか! この瞳は……忍者!?
「ベトレイヤー、まさかアナタがやったの?」
「はいお嬢様。お嬢様は公爵家に相応しくないと判断が下されました。故に死んでいただきます」
「みぎゃぁー! 殺されるっすーーーーー!!」
「や、やはり貴方は忍者だった!?」
「いえ、忍者とやらは知りませんが。ちなみにこの馬車は魔法で音が漏れなくなっておりますので、幾ら騒いでも救援はきません」
専属メイドの急な裏切りに頭が上手く動かない。
ウッソだろ、お前がやったの? えっ、専属メイドなのになんで?
ま、まさか中身が違う人(俺)になってるってバレたのか!!?
いや今はそんな事を考えてる場合じゃない。
このままだとマズイ。急いで麻痺耐性スキルを取得しないと……。
あっ、でも指が動かないから無理……。
ステータス画面が操作できないじゃん……。
剣がないから黒炎放出も使えないし……。
……あれ、これゲームオーバーじゃね? ……………………詰んだ!!!!
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