第8話 お嬢様だけに許された方法

 ビビットから自身を売り飛ばした村の名前を聞いた。

 俺は早速、ババンデット村の場所を世界地図で調べる。

 スキルを発動すると脳内に世界全体の地図が表示され、村名を思い浮かべると地図に赤いピンが刺さった。


 距離はここから大体100kmほど離れているようだ。

 思ったよりずっと遠いな。近くには別の街があるのだが、ビビットがレアキャラすぎて売れずに流れてきたのだろうか?


「なら村にお礼参りは決定として。あとアイテムボックスも使えるのよね? 私の家(公爵家)に来れば3食美味しいご飯にオヤツまで出るわよ。仕事は私の付き人だけ。後はちょっと訓練(ダンジョン籠もりとか)もしてもらうけど」

「美味しいご飯にオヤツまで!? ぜひご主人様になって欲しいっす!!!」


 更に飴を示すと、ビビットはランランと目を輝かせ始めた。

 特にご飯への食いつきがすごい。食いしん坊のチョロインか。

 これなら旅に連れて行ってもよさそう。なお家はすぐ出る予定なので、三食オヤツは保証されない模様。


「じゃあ私に付いてきてくれる?」

「もちろんっす! なんでもバリバリ働くっす!!」

「本当ね? 言質とったから(ガチ)。夜はエッチな事もするわよ?」

「えっ?」


 ビビットはグッと身を乗り出して俺を見つめてきた。

 おっ、良い返事だな。ならマジでバリバリ働いて貰うとするか。これは購入決定だ。


「決まりね。この娘を頂くわ。それで料金はお幾らかしら?」


 購入を決めた俺は購入交渉に入る。

 ビビットには一旦後ろに下がってもらい、改めてトルコネと話を始める。


「お話した通りこの娘は大変貴重でございます。顔良し、体良し、職良し、そして固有スキル持ち。ですので率直に申しまして――白金貨50枚でいかがでしょう?」

「5000万ギルピーって、流石に結構するわね。まっ、しょうがないか」


 この世界で貴族が使う通貨は主に4種類。銅貨、銀貨、金貨、白金貨だ。

 交換は10枚毎で、1000銅貨=100銀貨=10金貨=1白金貨である。

 価値は1銅貨=1000ギルピー=1000円程度なので、ビビットは超高級外車なみの価値になる。条件を盛りまくっただけあって超高い。ちびりそう。


 一応、アビスリンが貯めていたお小遣いは全額持ってきたが、それでも白金貨20枚(2千万ギルピー)しかないので全然足りない。


 ではビビットは買えないのか? このまま泣きながら帰るしかないのか?


 ……いや買える、買えるのだ!!


 その方法とは公爵家のお嬢様だけに許された方法――


「――ツケでも大丈夫かしら?」

「勿論でございます。後で締めて公爵家に請求させて頂きます」

「そう、悪いわね」


 それは「実家へのツケ」である。

 俺の宣言にトルコネはにっこり笑って頷いた。


 ああ、素晴らしきかな公爵家。

 父親からは嫌われてるが、それはそれ、これはこれ!!

 一度殺されかけた(壺投擲)の慰謝料代わりに貰っておこう。

 ふっ、俺は突然湧いた権力でも、遠慮なく使い倒すタイプのプレイヤーなんだ!!

 

「という訳だから、これからよろしくね?」

「っしゃー!! 超高位貴族の直属お付きぃー!! 復讐、ご飯食べ放題、おやつ、お昼寝、お小遣いぃー!!!  ビビットちゃん大逆転勝利ィーーー!!!!」


 買われることが決まるとビビットも喜びだした。

 その場で飛び上がる度にポヨンポヨンと胸が揺れる。

 何時の間にかオヤツ以外にもお昼寝とお小遣いも増えているが、それぐらいは構わないだろう。


 だってこれから死ぬほど無茶して貰う事になるからね!!

 ドキドキ☆チキンランは2年の予定(黒鳳凰に負けたら死亡)である。

 開放する気は一切無いので、まじで一蓮托生になってもらう。あとエロいこともいっぱいする。ぐへへへへ、暴れんなよっ! 暴れんなよっ……!!!


「それでこの後はどうしたらいいのかしら?」

「ではこの契約書にサインをお願い致します。それとビビットの背中にある奴隷紋に血を垂らして頂けますか?」


 ふむ、奴隷契約は紋章形式か。首輪とかじゃないのはいいな。

 これなら他人からは奴隷かどうか分からない。買い物なんかで奴隷だからと舐められることも無いだろう。


「血は一滴でいいの?」

「ええ、それで十分でございます」


 俺は言われた通りに書類へサインし、親指を切って奴隷紋に血を垂らす。

 奴隷紋は後ろから見て中央やや左寄り、心臓の真上だと思われる位置にあった。

 こぶし大サイズのハートに、鎖が巻き付いたようなデザインの入れ墨だ。これでビビットは晴れて俺の奴隷になった訳だな。


「ありがとうございます。これで契約完了でざいます。隷属条件……禁止事項などは奴隷紋に触れて条件を告げれば変更できますので」

「やって良い事と駄目な事を決められる訳ね? なら禁止事項は『私の力を誰かに教える事』ね」

「了解っす!!」


 俺は試しに禁則事項を2つ設けてみる。

 最初なのでこれぐらいでいいだろう。

 他はすぐに思いつかないし、後は必要に応じておいおいだな。

 あと気になったのは破った場合にどうなるかだが……。


「ところで禁止事項って破ったらどうなるの? 例えば『パンツ禁止』にしたら?」

「その場合、パンツを履くとが走ります」

「パンツ履くだけで?」

「場合によっては死ぬことも有りえるでしょう」

「パンツ履くだけで?」

「パンツ履くだけで、でございます」


 まじかよ。パンツ履くだけで死んでしまうのか。なんて酷いシステムなんだ。

 まぁ俺はやる気はないけど。でも何時でも露出プレイを強制できるのは心惹かれる物がある。「大通りはたくし上げで歩かなければならない」とか。……いや、危険だからやる気はないけど。でも部屋の中ならプレイに使えそう。


「それと一応聞いておきたいのだけど、奴隷のステータスを見ることは可能?」

「それでしたらPTを組めば可能でございます。ただご存知とは思いますが、PTは4人までしか組む事が出来ません。経験値も分割されてしまいますので、そこはお気をつけ下さい」

「経験値を吸わせたくなければ、普段は解除しとけってことね。分かったわ」


 PTって4人しか組めないのか。そして経験値も分割されると。

 まんまゲームと同じ仕様だな。でもどうしたら勧誘できるんだ? まさか、お手て繋いで「友情!」とかやればいいのか?


 試し抱きついてPTに入れーと念じてみると……あっ、出来た。


************ ステータス *************


【基本情報】

 本名:ビビット・タネマレミ

 種族:犬耳族 性別:女 年齢:16

 称号:アビスリンの奴隷


【能力一覧】

 職業:レンジャーLv1

 生命力:70/70 魔力:50/50

 物攻力:7 物防力:5 俊敏性:7

 精密性:9 魔攻力:3 魔防力:5


【技能一覧 残りSP:0】

 レンジャー技:[気配察知]

     固定:〈収納箱アイテムボックス


【PT一覧】

 リーダー:アビスリン・フラム・アチチバーン

 PT員1:ビビット・タネマレミ


********************************


 ステータスを開くと、ちゃんとビビットのステまで表示されていた。

 クラスは説明通りレンジャーで、ちゃんとアイテムボックスも持ってる。

 それから初期の10SPも[気配察知]に使われている。

 Lvは1しかないが、変なスキルを取得してないのは逆に都合がいい。これはビルドのしがいがありそうだ。


「あ、あの。ご主人さまのステータスがその……。これって、どういう事っすか?」

「もしかして私のステータスが見えてる? そっか、そっちからも見れるのね。でも私のことは内緒よ? 誰にも喋らないこと」

「は、はいっす!!」


 ビビットからも俺のを見れているようで、目を見開いて驚いている。

 改めて考えると他人のステータスまで見れるってやべーな。

 これ普通の人とPT組めないじゃん。いや元から組むつもりはなかったけど。

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