第23話 アビスリン専用防具

 ――王都二日目


「ご主人さま!! ご主人さま!!」

「わんわん!! わんわん!!」

「んん~ん、もう5分だけ……」


 俺はをくすぐる、生暖かい感触で目を覚ました。


「くぅ~~~ん!!」


 寝ぼけた目を左に向けると、俺の頬をナベベがペロペロと舐めていた。

 

「もう朝っすよ~~」


 更に右にも目を向けると、こちらでもビビットが頬をペロペロと舐めている。


「……なにこの可愛い目覚ましは? って、分かった起きる、起きるから!!」


 垂れ耳ワンコ二人による、可愛いダブルペロペロ目覚ましだ。

 俺は一瞬で頭が覚醒、たまらず身を起こした。

 ところが今度はビビットが胸に、ナベベが腹に頭を押し付けてくる。服を着ていないのでかなりくすぐったい。


「何なのそのコンビネーション!?」

「ご主人さま、おはようっす!!」

「わんわん!!」

「おはようビビット、ナベベ」


 俺は一度背伸びをしてから、二人の頭を優しく撫でた。

 どちらも絹のような手触りで心地よい。


 そうしていると徐々に昨夜の記憶が戻ってきた。

 そうだった。昨日はビビットと二人で、女性の体について調査したのだった。

 ベロチューから69体位でお互いペロペロして、最後は指でフィニッシュ。

 それも何度も何度も。女の子の体って、こんなに凄かったんだな……。お陰でビビットの体はキスマークでいっぱいだ。


「あっ、首筋にキスマークみっけ。また興奮してきた」

「うう、恥ずかしいっす……」

「チョーカーでも買う? ハートマーク型の奴がいいわね」

「それは恥ずかしすぎるっすよ」


 昨日の夜を思い出したのか、ビビットは頬を染めモジモジし始めた。

 めっちゃエロい。なのでベロチューして胸を揉んでおく。このまま女体の神秘を追求したいところだが、残念ながら今日は予定が詰まっている。


 起床したら朝食を取って身支度を整え、それからビビットと街へ出発する。

 ナベベはカイエンとお留守番。二匹なら仲良く待っていることだろう。


「今日はけっこう歩くわよ。色々回るけど目立つから馬車は無しね」

「大丈夫っす。馬車なんて売られた時しか乗ったことないっすよ」

「それはそれで凄いわね」


 でもこうしてネタにするってことは吹っ切れたんだろう。

 まぁカイエンがいる限り俺たちが馬車に乗る事はないけどね。ラノベでは乗り心地最悪なので定説だし。


 さて今日の目的は隠しアイテムの回収と、旅に便利そうな道具の購入である。

 宿から出て大通りを1時間ほど歩くと、南区の「市民用図書館」が見えてくる。

 3階建ての石造り屋敷で、周りは壁に囲まれている。一般市民用に開放されている図書館。ここが王都の隠しアイテム入手場所だ。


「なのでまずは賄賂を渡して敷地の中に入ります」

「あの、それだと警備員がいる意味がないんじゃ……」

「(警備員の上司が)気づかなければセーフよ」


 入り口の前には警備員が一人いたので、銀貨5枚を握らせ上目遣いでおねだり。

 「すみません、中に入りたんです……」と告げると警備員のおっさんは「美人だから通って良し!!」と笑顔で入り口を通してくれた。


 よし、気絶させる手間が省けたぞ。

 通常は身分証がないと通れないがセーフ。美人+金のコンボは最高だな。


 そうして侵入できたら建物自体には入らず、外からコッソリと裏庭へ。

 端には物置用のボロ小屋があるので、見つからないように入って扉を締める。

 中は4畳半ほどの面積しか無く、放置されて長いのかかなり埃っぽかった。


「ここまで来れば第一段階クリア。でも余り長居したくない環境ね」

「こんなところに何があるっすか?」

「フフフ、それは見てのお楽しみよ。確かこの辺に……あった!!」


 俺は遠慮なく奥の床を引っ剥がした。

 すると地下への扉が出てきたので、開けて梯子を伝って地下に降りる。

 だがこれだけで手に入るほど、隠しアイテムは甘くない。


 降りた先には一段低い場所に「白黒模様の8マス床」があり、その上に「兵士や騎士を模した等身大の駒」が立っていた。降りてきた側に並んでいるのは白い駒、反対には黒い駒だ。


「これってもしかして何かの遊戯板っすか?」

「その通り、よく気づいたわね。貴族が偶にやる遊びよ。サイズは大きいけど」

「大丈夫っすか? なんだか難しそうっす」

「フフ、まぁ見てなさい。私の冴え渡る頭脳に掛かれば、こんなのは楽勝よ!!」


 ぶっちゃけこれは人間サイズの駒を使ったチェスだ。

 ハリーでポッターな賢者石のオマージュで、黒色の王の駒を倒せばクリアー。アイテムを入手する為のギミックである。


 俺が全体を見下ろせる円形台に立つと、駒の目に光が灯った。ゲーム開始だ。


「という訳で行くわよ? ――〈火炎槌フレイムバスター〉!!」

「ちょっ、何やってるっすか!?」


 俺は眼下に拡がるチェス板の中から、黒い王駒を狙って魔法を発動。

 黒炎で出来た破城槌が飛び、黒い王の駒が粉々になった。同時に反対側にあった扉が開く。


 ――ゲームセット!!


「フフン。まっ、こんなものね(ドヤ顔)」

「えええぇぇ……」


 俺は勝利を確信し堂々と胸を張る。冴え渡る頭脳による奇跡の1手勝ちだ。

 ビビットはまじかこいつ……、みたいな顔をしているが、これがこのゲームの正解である。重要なのは黒い王駒を壊すことで、その方法はなんでもいいんだよね。


 ただしチェス板の上に乗ると失格になるし、駒は殴打属性の攻撃しか効かないので注意が必要だ。なお俺の使った魔法はその両方を満たしている。


「まっ、ゴチャゴチャ考えるより壊したほうが早いって事ね。暴力isパワー!! よし、次に進むわよー」

「ご主人さまぱねぇっす(脳筋的な意味で)」


 俺たちは開いた壁の扉を通って、次の部屋へ進む。

 すると今度は縦長の鏡が8枚、横並びで壁に張り付いていた。引き続きハリポタ石を取り出す時のオマージュである。


 これは奥に進める正解の鏡は1枚だけで、残りの7枚はダミーだ。

 間違えてダミーに触れると、市民図書館の入口に転移させられてしまう。再入館するにはまた金を払う必要があるので、中々面倒な仕組みである。


「なので邪魔な鏡は壊しちゃいましょうね~。〈火炎槌フレイムバスター〉〈火炎槌フレイムバスター〉〈火炎槌フレイムバスター〉……(以下略)」

「ちょっ、割っていいんすか!?」


 なのでココも鏡に向かって魔法を7連発。

 実はこの鏡郡は7枚を壊すと、最後の1枚が強制的に正解になる、という抜け道があるのだ。やはり暴力、暴力は全てを解決する!!


「パリンパリン割れる音が気持ちいぃ~!!」

「本当にこんなんでいいんすか? 何だかすごくモニョルっす……」

「良いの良いの。いちいち入り口から戻ってくるの面倒でしょ?」


 ぶっちゃけ正攻法でやっても時間が掛かるだけだからな。

 ここは遠慮なく割っちゃうのが正解だ。というか特にペナルティもないので、割らない理由がない。


 そうして残った最後の1枚に触れると、どこかの部屋に転移させられた。

 緑色の灯りが灯る6畳ほどの部屋の中央に、3つの宝箱が鎮座している。

 それも全て赤カラーに金で縁取りがされた、一目で特別だと分かる宝箱である。


「いよっし!! ちゃんとあった!! これで勝つる!!!!」

「こんなところに宝箱が……?」


 ……よかった、隠しアイテムが残っていた。

 俺は思わずぐっと手を握りしめて喜んだ。


 知ってなければまず来れないが、ここは千の錬金術師サウザンドアルケマスター――シドランドゥの秘密研究室跡である。

 彼は50年前に錬金術を飛躍的に進めた偉人であり、ココと同じような秘密の研究室を各地に残している――という設定の隠し部屋だったはずである。たぶん。


「まあ要はこの宝箱は過去のすごい人の遺物ってこと。だから遠慮なく持って行って良いいのよ」


 なので俺が持って行っても問題ない。

 俺たちは早速、二人で宝箱を開けていく。


 1つ目には金ピカの腕輪が入っていた。

 細やかな月の装飾が施されていて極細。腕輪と言うよりもバングルだ。


「それって何か特別な効果があったりするっすか?」

「いい質問ね。この金ピカ腕輪は『幸運の腕輪』というアイテムでね? 付けていると経験値が2倍になるの」

「経験値が2倍に!? すごすぎるっす!!」


 出てきた腕輪を腕に装備しながら説明する。

 詳細を知ったビビットが、その余りにも神すぎる効果に飛び上がった。


 そうだろう、そうだろう。これはLv上げが必須な俺にとって、絶対に手に入れる必要があった神アイテムだ。たとえ相手が勇者であろうと譲ったりはしない。

 まぁ勇者はこの腕輪付けて狩りするより、クエスト回したほうが経験値効率高いから、そもそも必要ないんだけどね。


「それから2つ目は弓ね。名前は『金属喰らい』。酸の矢を打つことができるわ」


 それから次は魔法の弓。全体が緑色で、鉄が溶けたような装飾が付いている。

 これは弦を引くと自動で魔法の矢が装填され、しかもその矢には酸属性の力が宿る便利な弓だ。名前通り金属特攻の武器である。


「はい、これはビビットが使ってね。かなり火力が上がるはずよ」

「こんな綺麗で高そうな弓をわたしに? ありがとうっす!!」


 物理攻撃力も序盤にしては100と破格だ。

 これでビビットの火力不足も大分解決するだろう。

 渡すとビビットは弓を大切そうに抱きしめた。


「そして! そして! ついにお待ちかねの3つ目ッ!!」


 それから最後に3つ目の宝箱。

 これこそが俺にとってもっとも重要だった。この中身に比べれば、前の2つすら前座でしか無い。


「じゃじゃじゃ、じゃーん!!!!」


 俺は最後の宝箱の中身を取り出し、まるで優勝トロフィーのように掲げる。

 それは胸部から股間までを覆う、純白のレオタード。

 胸元の上下は大胆に開かれ、股間部分はハイレグ。全体に天使の羽を模したような装飾が施されている。


 もうおわかりだろう。これこそ俺が真に求めていたもの――


「ついに手に入れたわ!! アビスリン専用防具、使!!」


 ――である。

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真の仲間じゃないお嬢様にTS憑依したが、超越種達に祝福されたので世界を燃やす旅に出ることにした 甘辛メロン酢 @yyy123

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