第14話 廃教会戦闘リザルト
壁と天井が消し飛び、パチパチと燃える廃教会に立ち尽くす。
戦闘は無事に終わった。振り下ろした切っ先から爆発した黒炎は大盾を消滅させ、地獄の業火となって騎士とメイドと俺を焼き尽くした。
「うわぁ、なにこれ。もうメガンテじゃん……」
「何ヤッてんすか!? 教会が崩れるかと思ったっす!!!」
呆然とした俺にビビットが突っ込む。
世界樹の時の黒炎が極太ビームなら、こっちは小型の原子爆弾だ。
それもゼロ距離専用。持久戦だるいから一撃で決めたろww そんなノリで撃って良い技じゃなかった模様。うーん、反省!!
「炎属性無効がなかったら、たぶん私まで消し炭だったわね。こわっ!!」
「バラバラで敵の体がほぼ残ってない……どんな威力っすか」
「マジで私も死んだと思った。それぐらいの衝撃だったわ……」
何時の間にか戻っていたビビットと共に床を見つめる。
そこには焼け焦げた聖騎士の一部が転がっていた。
と言っても残ってるのは手足の先と剣ぐらいだ。メイドに至っては完全に消滅したのか、影すら残っていない。
「……流石ガバガバメイド。死ぬときまでガバガバだったわね。これじゃ復讐のお紅茶できないじゃない」
「あのメイドも? 最後まで残念な人だったっす」
メイドまで殺すつもりは無かったのに、どうも威力が高すぎたらしい。
巻き込まれて余波で死ぬとか、最後までガバガバなメイドだったな。はぁー、つっかえ。
「でもまぁ無事に勝てたんだから良しとしましょうか」
「足元に地下室が無くてよかったっすね。礼拝堂の大半が消し飛んでるし、下手したらご主人さまも生き埋めだったかも……」
「だって斬撃って名前なのよ? 普通は爆発するなんて思わないでしょ!?」
確かに名前が似てるからって、鳳龍の剣術(RO漫画)みたいな口上っちゃったけどさぁ。
でも本当に爆発するとは思わないやん? 黒炎放出が横1マス直線なら、こっちは射程1範囲周辺5マスのマップ兵器って感じだ。こう、斬った相手を中心に爆発するみたいな? もちろん自分も巻き込まれる。
************* スキル詳細 *************
〈
黒鳳凰の加護を持つ者専用クラス【黒炎の魔剣士】の最終スキル。
生命力と魔力を全消費して黒炎を圧縮、極熱の爆炎で敵を焼き尽くす。
消費:生命力・魔力全て 属性:炎 特性:物防魔防無視
威力:生命力10消費毎に物攻5%+魔力10消費毎に魔攻5%
*********************************
ちなみにステータスのスキル詳細だと、こんな感じである。
生命力と魔力を全消費して究極の一撃をブッパなす(生命力は1残る)、
今回は生命力魔力合計7000ぐらいだったから、倍率は約3500%になる。
……改めて倍率狂ってるな。なんたって勇者の最終スキルでも倍率600%程度だ。ぶっちゃけありえない。
奪ったシミターは〈炉心溶爆〉で攻撃力800になっていたから、バフ魔法込みの推定威力は約10万。しかも防御無視だ。大抵の相手は一撃で死ぬのではなかろうか?
「Lv41聖騎士の生命力はスキル補正込で5000程度。耐えるのは絶対に無理ね。メイドまで死ぬわけだわ。……でもすごくスッキリした!!」
まぁそれでも勝ちは勝ちだ。連戦だったが敵は全滅でこっちは生存。
PT登録してたおかげでビビットもLV7になってるし、間違いなく完全勝利。
「それで服は見つかった?」
「ばっちりっす! でもパンツだけ無くなってて」
「そういえば脱がされた時に食べるとか言ってた変態がいたわね」
まさか本当に食べたのか? えっ、この街って変態多すぎない?
「まぁパンツは後で買いに行きましょう。それより早く着替えて外に出ないと。もたもたしてると建物が崩れるわよ」
「どこも燃えまくってるっすもんねー。早く逃げないと放火犯にされそう」
周囲からはミシミシ、ガタンガタンッ!! と嫌な音が聞こえてくる。
恐らくあと少しで廃教会は崩れ始めてしまうだろう。
俺たちは急いで服を着て廃教会を脱出、人の目がなさそうな場所まで走った。
放火犯だとバレたら困るからな。ついでに騎士剣と、聖騎士が騎乗してきたと思わしき魔獣もパクっていく。戦利品の確保はマナーだよね。
「ふぅー、麻痺毒をもられた時は焦ったけど、ギリギリなんとかなったわね」
「これでようやく、ご主人さまの家に行けるっすね。貴族のご飯っ!!」
俺は壁に背中を預けて気を抜く。
ビビットはついに公爵家でご飯が食べれるとニコニコ笑顔だ。
なんというか、ヤリきったって感じだな。
しかしその未来が訪れることはない。なぜなら――
「いや家には戻らないわよ?」
「えっ? どうしてっすか?」
「ちょっと考えたんだけど、このまま死んだことにして街を出ようかなって」
俺は家に帰る気がないからな!!
なんせメイドの話が本当なら、今回の件は王位継承権絡みのゴタゴタだ。公爵家に帰っても次の刺客が送れられてくるだけだろう。
ゲーム開始前だからどうなるかも予想できないし、それならこのまま死んだことにした方が良くね?
「だって次は誰が裏切るか分からないわよ? また毒盛り紅茶が飲みたい?」
「……毒はもう嫌っす。でも夢の三食オヤツ付きお昼寝生活が」
「大丈夫よ、私は強いからお金なんてすぐ稼げる。美味しいものだって沢山食べれるわ」
変装技術なんてないから何れバレるだろうが、まぁその時はその時だ。
なら今回は家出する良い機会を得たと考えよう。家に残ってる装備類を持ち出せないのは痛いが。……それでもまた殺されかけるよりはマシかな。
「とりあえず肉屋で最高級のお肉を買ってあげるから。それで我慢して?」
「うーん、そういう事なら良いかも……。でもどこに向かうっすか?」
「まずはビビットの村に行って、それから王都ね。回収しときたい(隠し)アイテムがあるのと、後――第七王子を燃やすわ」
「えええええええ!!?」
俺の宣言にビビットが悲鳴のような声を上げる。
いや気持ちはわかるけどね。でもこのままだとまた何かやってきそうでしょ?
なら燃やしたほうが早い。先に殴ってきたのは第七王子なんだから、きっちりお返ししないと。
「まぁすんなり殺れるとは思ってないけどね」
王子なら護衛が着いてるだろうし、王族相手は一苦労だ。
それでも出来るだけ情報は集めておくべきだよな。
特にうちのガバメイドと聖騎士が裏切った理由が気になる。
普通は第七王子なんて王様になれるはずが無いんだが……。でも聖騎士の方はなれると確信している様子だった。てことは何か特殊な固有スキルでも持ってるのか?
「無理そうなら情報収集だけして逃げればいい。まっ、なんとかなるでしょ」
「普通はなんともならないと思うっすよ?」
「そこは出たとこ勝負よ。それにお金ならビビットに預けていた私のお小遣いが丸ごと残ってるし、武器もちょうど強そうなのがあるわ」
こうなると剣が残っていたのはラッキーだったな。
俺は拾ってきた聖騎士の剣をマジマジと見る。
肉厚で幅が広めの両刃片手剣だ。見た目はFF14のライトブリンガー。
**********************
武器名:聖騎士の剣(仮)
攻撃力:100 特殊効果:物防力+50、魔防力+50
**********************
さっそく装備して、ステータスから性能を逆算。
魔法が2つも込められていて、お値段が高そうな剣だった。
しかも思ったよりもだいぶ軽い。片手でも振れそうだ。性能から考えると、ゲームだと2500万ギルピーぐらいしそう。
中々使い勝手が良さそうだし、これは俺のメインウェポンにしよう。
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