第6話 これからの予定と目標
「剣の振りはこうかな? 右左、左右、上下、下上、点!! ……あれ、意外といけてる?」
戻ってきた侯爵城の自室で、全身鏡を前に剣を振る。
右からの払い、左からの払い、上から振り降ろし、切り上げ、そして突き。
基本的な動きを試してみると、ずっと修練していたかのように自然と体が動いた。
剣なんて中学剣道ぐらいしかやったことないのに不思議である。
「まさか私は剣術の天才だった……?」
恐らくはアビスリンが長年訓練した動きを、体が覚えているのだろう。
記憶によれば5歳ぐらいから、騎士を目指して修練していたようだからな。
そのおかげで全身鏡に映る姿は、自分でも驚くほど様になっている。昔にツベで見た剣術家の演舞のよう。これはくっ殺される姫騎士ですわ!!
「うわ、私カッコよ!! こうかしら? フッ! ホッ! ハッ!!」
調子に乗った俺は思うがままに剣を動かす。
Aボタン連打で高速突き、上Aで半円切り上げ、そして横Bで大回転斬り!!
イメージするのはトライフォースの勇者様だ。
「ふむ、これだけ剣を振っても疲労はそれほどない。これならスキル無しでも十分に戦えそうね」
最後は剣を鞘に納めて残心。
急にこんな事を始めたのには理由がある。
旅に出る事に決めて、ふと気になったのだ。
――俺に普通の戦闘がこなせるか? と。
なんせココがゲーム通りなら街外にはモンスターがウジャウジャいる。
ちゃんと戦えるかどうかは死活問題だからな。
そこで俺は試しに剣を振ってみた訳である。
結果は――行けるやんっ!!
「この分なら雑魚は剣だけで斬り殺せそうね。日本語が世界共通語っぽいし、別の国でも読み書きはOK」
これは【ぼくわた】の開発・販売元が日本の会社なせいだろう。
メタ的な事を言えばステータス画面が日本語なので、そこから共通語として世界に広まった可能性もある。どちらにしろ大変便利で結構。
「さて、そうするとグズグズしては居られないわね」
俺は剣を壁に立てかけ、ベッドの縁に座り今後について考える。
黒い鳥野郎に続き、変態世界樹からも祝福を押し付けられたからには、この国からとっとと逃げ出すことを決めた。これはもう確定事項。問題はその行き先だ。
「とすると何処に行こうかしら? 聖女神が死ぬと神聖魔法が使えなくなって崩壊する教国? 海からゴジラが出現して崩壊する皇国? ……いや、ここはやっぱり帝国ね。帝都は崩壊しても迷宮都市は無事だったはず。あと最終目的のアチアチ山にも近いし」
あえて口に出したが、答えは最初から決まっていた。
それは今いるヘソチラーリ王国の西北にある「ミニカスート帝国」だ。
世界崩壊後にも残っている数少ない場所の一つであり、「
「隣国だからそこまで長旅にはならない。それにダンジョンがゲームと同じ仕様ならLvも上げやすいはず。ドロップで金とアイテムも稼げて一石四鳥だわ。乗るしか無い、このビッグウェーブに!!」
確かに俺はいっきにLv57になった。この世界だと超一流と言って良いだろう。
しかし黒鳳凰がLv96だとすれば全く足りない。
ソロならLv90、PTでも最低Lv85は欲しい所だ。Lv制のゲームでLvは全てに優先されるんだよね。
「後はソロ活動なんて無理だから仲間も集めないと。どうせなら可愛い女の子がいいわね。男と組んだら押し倒されそう」
それから仲間も必要だ。なんせ俺はキャンプの経験なんて全くないからな。
旅もダンジョンも、ソロ活動は無謀を通り越して自殺するようなもの。
というか高確率で寝込みを襲われて凌辱エロゲされてしまうだろう。銀髪おっぱい美少女が1人でウロウロなんてエサでしかない。男が狼なのはよく知っているので、男性の仲間も却下だ。
「ならば最優先で手に入れるべきは斥候職?」
とすると旅をするにも戦うにも、最優先で仲間にすべきは斥候職だろう。
ステの伸びから見て【黒炎の魔剣士】は物理よりの両刀アタッカーだ。
ポケモンだと二刀流型。なので先手を取る事は重要である。なんでもそうだが、敵を先に見つけての先制ブッパは強い。
「あとは様子を見ながら、回避盾と魔法アタッカー辺りを増やして行けば良いか」
PTとしては俺(両刀)+斥候+回避盾+魔法役、が無難だろう。
なおヒーラーとタンクはいらない。女神が死ぬと回復(神聖)魔法は使えなくなるからな。この世界の神官は罠でしかない。
せっかくLvを上げたのに足手まとい化しちゃって、プレイヤーみんながキレてたのは嫌な思い出だ。ついでに回復前提のタンクも無しで。
「でもぶっちゃけ普通の人は裏切りそうで怖いのよね。どれだけ良い人でも身内を人質にされたりしたら揺れるだろうし。うーむ」
だが今の俺が普通のPTを組めるとは思えない。
いや組むだけなら可能だろうけど。でも最後まで裏切らないかっていうとね?
何より普通にPTを組むとアイテムの分配が面倒だ。
せっかくレアアイテムを入手しても、売って分けるはめになってしまうだろう。
でもそれは嫌だ。どうせなら独占したい。隠しアイテムの場所だって知ってるからな。
「とすると普通の仲間はむしろ邪魔でしかないか。これは転生小説の先輩方に習い、奴隷を買って育てるべきね」
しかし幸いなこと(?)に、この世界には奴隷制度という便利なものがある。
それも魔法で縛る絶対に裏切れない奴である。主人が死んだら奴隷も死ぬほどのガチさらしい。世界が崩壊する前に民度が崩壊してるな。
「ゲームではちょろっと語られるだけだったけど、こんな状況だと有り難いわね」
まぁ公爵家長女としての権力を使えば、少々厳しい条件でも探せるだろう。
それと仲間のクラスに応じて必須スキルは変わるから、取得可能になったスキル郡は軽く目を通す程度で一旦保留。まずは明日にでも奴隷商をお宅訪問だ。
「斥候職でユニークスキル持ちで、それでいて可愛い女の子を探さなくっちゃ!!」
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